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今年のキーワードは3つ:ソフト、コラボ、材料

新年明けましておめでとうございます。今年のキーワードは何でしょうか。

先日、知り合いの半導体IPベンチャーの方から、今感じているキーワードとサプライズは何かと尋ねられ、3つのキーワードを上げた。簡単ソフトウエア、コラボレーション、そして材料・部材である。

最初の簡単ソフトウエアは、昨年10月30日のブログで紹介した、誰でもプログラムできるワードやエクセル感覚の組み込みソフトウエア作成ソフトウエアである。携帯電話機やカーエレクトロニクスなどの厖大なソフトウエアを作るために、業界でコラボレーションやオープン化などが叫ばれているが、人手で作成できるソフトの量はしれている。もちろん、ソフトウエアの階層化によるオープン化などは導入する方向ではある。しかし、これだけではさらに増えてくるソフトに対応できない。C言語を学ばなくても組み込みソフトを簡単に作れるようなソフトがもし入手できれば、私にもあなたにもソフトウエアを作ることができソフトウエアエンジニア不足は解消されるというわけだ。もちろん、このような簡単ソフトを作ることは決して簡単ではない。もっと抽象化したシステムソフトになる。GUIや使い勝手は当然、使う人を感動させるものに仕上げなくてはならない。道は険しいが、第二のビル・ゲイツになれる可能性はある。

コラボレーションに関しては、日本のメーカーが最近になってようやくコラボレーションの重要性、そのためのオープン化に気が付いてきた。もちろん米国、台湾のメーカーなどは10年も前から進めてきたことだが、日本企業がその重要性に気がついたことは、これからの日本企業は遅ればせながらようやく目を覚ましつつあるのではないかと思う。コラボレーションを推進するIBMグループの32nmのバルクCMOSプロセス開発に東芝が参加したことは昨年暮れに発表された。SOIではなくバルクCMOSであるところに、SOIウェーハを利用するCell プロセッサの取り扱いをどうするのかという微妙な問題を抱えての参加ではあるが。

コラボによる技術の流出が心配というのなら、その技術テーマは選ぶべきではない。たとえばインターフェースの標準化やプロトコルの決めごとなどはオープンにして、それぞれのインターフェースやプロトコルを持つハードなりソフトなりをブラックボックス化すればよい。中身のハードやソフトまでを公開する必要はない。オープン化とはそのようなものだ。共通インターフェースや共通プロトコルをオープンにしてみんなで決め、それを使った半導体チップの中身を隠せば良いのである。

共通のインターフェースや共通技術になりえないテーマならコラボレーションには合わない。IBMは、32nmプロセスでは半導体チップの差別化は図れないと考え、32nmプロセス開発はみんなで共通のものを作ろうとしている。では何で差別化するか。半導体チップに焼きつけるソフトウエアである。微細プロセスは共通で、ソフトで差別化する、これがこれからの半導体ビジネスの主流になると私はみている。

材料に注目するのは、ここに新しいビジネスチャンスがあるからだ。プロセス技術は45nm、32nmと投資資金がかかり微細化の勢いが鈍っている。製造装置への投資は鈍る。微細化だけが半導体ビジネスの手法ではないことがSOCメーカーはようやく気がついた。しかし半導体ビジネスは今後も年率平均7~8%で伸びていく。では何で儲けるか。流す半導体ウェーハの面積は年率10%の勢いで伸びていくため、半導体チップにインプリメントするソフトウエアはますます必要になる。この組み込みソフトウエアは最初に述べたとおりの簡単ソフトウエアで解決する。もう一つ伸びるのは、製造装置や製造に使う、ガスや化学物質、バルブやOリングなどの消耗品などである。これらはチップを微細化しなくても必ず消費する。こういった材料・部品に注目している。この材料のビジネスモデルはキヤノンのインクカートリッジ交換のビジネスモデルと全く同じである。

サプライズは、これらの動向をとらえていれるところに必ず現れてくる。どことどこが新たに提携するという話が出てもどこかにこのようなトレンドが含まれている。全体的には携帯電話が技術をけん引することは間違いない。

例えば、iPhoneを当初、日本のメディアは2.5Gの遅れた電話、というとらえ方をしていたが、とんでもない。iPhoneのGUIは他のメーカーよりも5年は進んでいるとアップル社CEOのスティーブ・ジョブス氏は言う。このGUIをはじめとするソフトは誰でも簡単にいじれるし、機能も豊富だという考えで開発されたソフトである。今、日本の携帯電話メーカーはみんな「iPhone方式」の電話を必死に開発中だ。早ければ今年、あるいは来年には「iPhoneまがい」の電話がそこら中から出てくるだろう。

ハードの得意な日本は、これに向けてタッチスクリーンビジネスが進展するとみている。高精度で簡単なタッチスクリーンは案外まだ少ない。これからその市場は伸びるとみている。Consumer Electronics Showではタッチスクリーン機器があちこちに出てくるのではないだろうか。タッチスクリーン自体も材料ビジネスと同時に、タッチ性能の良いディスプレイ技術の開発もそこら中で行われている。

キーワードは何かと聞かれた知人には以上のように答えた。

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