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今、SiC/GaNの市場が立ち上がり始めた

パワー半導体は日本のメーカーが善戦している分野であり、トップテンの中の地位を占めてはいる。トップではないものの、期待は大きい。特にシリコンのIGBTはパワーMOSFETのドレイン領域をp型にして電子と正孔の2種類のキャリアを使うバイポーラ動作で電流密度を高めるIGBTが大電力パワー半導体の主力であるが、SiCやGaNなどの化合物半導体を使ったパワー半導体も出てきた。

図1 11月21日にオンライン開催するSPIフォーラム

図1 11月21日にオンライン開催するSPIフォーラム


SiCは耐圧が1200V系も登場し、GaNでは650V系が主流になっている。しかもIGBTと違って電子だけという多数キャリアデバイスであるため、スイッチングオフ時には高速に動作する。SiCは京都大学名誉教授の松波弘之名誉教授が研究し続け、GaNは青色ダイオードの発明をきっかけにパワー半導体への応用が進んだ。いずれも日本発の技術である。

しかし、共に世界的にはビジネスで負けている。SiCではトップが欧州のSTMicroelectronics、2位がInfineon Technologies、GaNでは米国のNavitasとPower Integrationsがトップ争いを演じている。共に外国企業がトップについている。

だから日本はダメだというつもりはない。むしろ、SiCとGaNの市場は今、立ち上がり始めたところで、これから量産が始まるのである。ここからが勝負になる。

量産競争となると、規模のスケールだけではなく、応用をいかに捉え、応用技術と営業活動の力がモノを言うことになる。規模のスケールは単なるコストダウンでしかないからだ。自社の製品にどう付加価値を付けるかは、応用技術と技術営業が極めて重要になる。欧州・米国の半導体メーカーがよくやる手として、サブシステムをユーザーに作って見せ、ICチップの製品価格が高くてもサブシステム全体で安くできることを示す。説得力があり、IC製品を値下げせずとも購入させるテクニックである。

そのためにはSiCやGaNのシステムを知ることが重要になる。SiCでSTがトップシェアを握るのは、Teslaの電気自動車Model 3に採用された。またNavitasやPower IntegrationsはGaNを使うことで電源アダプタの効率が上がり、そのサイズが半減することを訴求してきた。スマートフォンやパソコンの電源アダプタにGaNがたくさん使われているのは、電源回路の効率が上がったために小型化とバッテリが長持ちするようになったことが大きい。

セミコンポータルは、ようやく立ち上がり始めたSiCとGaNが今後どうなっていくのか、日本のメーカーが海外と勝負できるようにするためのヒントを、SPIフォーラム(図1)を通じて提供していく。11月21日はオンラインで、SiCの応用とGaNの新技術をそれぞれの専門家に語っていただく場を設ける。聴いていただく日本のメーカーがSiC、GaNで世界のトップ争いをやっていただけることを期待する。申し込みは以下のURLから;

https://www.semiconportal.com/spiforum/231121/

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