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これからのメモリを考えるSPIフォーラムを開催

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7月29日13:30からSPIフォーラム「これからのメモリを考える〜NANDフラッシュ、DRAM、NVMは?」を開催する予定だ。メモリはプレイヤーが少なくなっているが、日本ではキオクシアが唯一のプレイヤーとなっている。メモリは今、従来の成長率とは異なる一段と上のレベルに上がった半導体製品である(図1)。

メモリ販売額の推移

図1 世界半導体メモリ販売額の推移 2021年はWSTSの予測 出典:WSTSの数字からセミコンポータルがグラフ化


2017年と2018年のメモリバブルの時にメモリの販売額は大きく伸び、その反動が2019年にやってきて、落ち込んだが、それでも以前の6%成長時代から一歩上がった状態が続いている。一段と上がった要因は三つあると考えている。一つは64ビットシステムの定着である。32ビットコンピュータだとメモリを最大4GBしかアドレスできない(2の32乗が4G)。64ビットだと2の64乗となり、ほぼ無制限に使える状態になっている。二つ目はAIの普及だ。AIはニューラルネットワークを使って、MAC演算+メモリをセットにしたデータフロー型のコンピュータである。大きなAIモデルになればなるほどメモリを大量に使う。そして三つ目は、HDD(ハードドライブ)に代わる固体ストレージのPCでの定着である。

筆者は17年ほど前に新しい半導体雑誌を発行する際のマーケティング活動の一環で、旧DRAM設計者の話を聞いていた時に「メモリは今でも日本が強く得意な分野だ。DRAMを捨て、システムLSIに走ったのは間違いだった」と言われた。確かにシステムLSIとは何かを定義しないまま、日本の半導体産業全体の舵をその方向へ切り替えた。要はメモリ以外の高集積ICをシステムLSIと定義していた。中には、単なるディスプレイドライバをシステムLSIと言った大手半導体メーカーのトップもいた。システムLSIを理解せずに大手半導体企業を運営していたのである。これではうまくいくはずがない。どこに力を入れ投資すべきががわからないからだ。

DRAMは韓国の安さに負けたと1995年ころに大手半導体メーカー首脳は述べており、すぐにMicronも同様の価格のDRAMを発表した時にメディアは「黒船が来た」と表現し日本の半導体業界は蜂の巣をつついた騒ぎになった。Micronはその10年前の1984年ころから周到な準備を始めており、パソコン向けの安いDRAMを低コストで作るための設計技術とプロセス技術の両方を磨いていた。コンピュータはダウンサイジングというトレンドの中にあり、その当時は高級なメインフレームコンピュータから、ミニコンやオフコン、EWS(エンジニアリングワークステーション)を経ていずれパソコンになる、とMicronは読んだ。このために低コストで作る準備をしてきていたのだ。しかもその技術をSamsungにライセンス供与した。

日本がDRAMを止めた敗因の一つは、なぜ安いDRAMが必要なのかを分析せずに人件費の安い国で作るから安い、と勝手に判断していた。しかしDRAM製造における人件費の割合は、ある分析によると5~8%しかなく、どこで作ろうとほとんど変わらない。

MicronはDRAMを低コストで作るために、設計からプロセス全体に渡って見直した。メモリセルを無駄なくシリコンに詰め込むためのレイアウト設計や、微細化、そして工程の短縮化(マスク枚数の削減)にメスを入れた。今やどのDRAMメーカーも同様な考えになったが、Micronのチップを見て製造に強い日本のエンジニアはマスク枚数の削減ばかりに目を奪われた。

今ではメモリはほとんどがDRAMとNANDフラッシュになっている。しかし、DRAMはCPUと絶えずやり取りするメインメモリであり、NANDフラッシュはデータを保存しておくストレージであり、役割が全く違う。DRAMはわずか3社(Samsung、SK Hynix、Micron)が市場の95%を支配する寡占化が進んでおり、競争する健全なビジネスではない。NANDフラッシュは上位5社(Samsung、キオクシア、Western Digital、Micron、SK Hynix)による競争が行われている産業であり、ここに中国のYMTCが参加している。

これからのメモリの発展方向を見ると、日本でもDRAM工場が可能かもしれないと思える。現実に、台湾の南亜科技(Nanya Technology)は、今年後半にEUVによる10nmプロセスを使ったDRAM新工場の建設を始め、24年の稼働を目指す計画を発表した。300mmウェーハで月産4万5000枚の生産能力を持つ。日本はどうするのか。今、半導体には追い風が吹いている。

これからのメモリの行方をみんなで議論する場が、SPIフォーラム「これからのメモリを考える〜NANDフラッシュ、DRAM、NVMは?」である。メモリ市場やそのシステムを語る南川明氏と大山聡氏に加え、FinFETに変わる次のGAA(Gate All Around)に似たSGT(Surrounding Gate Transistor)を使った新型メモリも登場する。ウェビナー形式だが、活発なQ&A、議論ができるようにしている。

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