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ファブライト、ファウンドリ、IPベンダーが集うSPIフォーラム

最近、日本の半導体はファブレスに進むべきではないか、という元半導体メーカーOBから意見をいただくことがあった。製造にかかる投資コストに耐えきれないという理由によって、ファブライトへ踏み出しているように見える。海外でもTexas InstrumentsやIDT、Cypressなどの企業はIDM(垂直統合の半導体メーカー)からファブライトへとシフトしている。日本IDM企業のファブライトへのシフトは、成長を促進するだろうか。

IDMからファブライトへシフトする海外企業は、投資コストに耐えられないからファブライトにシフトする訳ではない。TIやIDT、Cypressなどの企業は強みを伸ばすためにファブライトを選択したのである。TIはアナログへのシフトを進めており、微細化投資の必要なデジタル製品OMAPやDSPはファウンドリに依頼している。アナログはオペアンプやコンパレータなどの純粋アナログから高精度品、低消費電力RF、パワーマネジメント、データコンバータなどを強化するため、バーブラウンやチップコン、ナショナルセミコンダクターと次々と買収してきた。IDTやCypressはソフトウエアを強化するため、プロセスへの投資ではなく、ソフトウエアや人材などへの投資に切り替えてきた。結果的にファブライトあるいはファブレスへとやってきているだけなのだ。

海外企業のファブライト戦略は極めて明確だが、日本のIDMはファブライトによって何を強化するのかがよく見えない。そして、見えないままずるずると年月だけが経ってきた。やはりいまだに見えないのである。ファブライトへシフトするのなら、では何に投資の重点を置くのか、が見えない。LSI設計は得意でもシステム設計が得意とは思えない。ソフトウエア技術者を増やしているとは思えない。どうすればよいか。

第三者がファブライトを進めるべきという意見は本末転倒ではないかと思える。まず何を特長として誰にも負けない製品や技術やサービスを提供するのか、を定義すべきであり、ファブライトかIDMかという議論はその次である。

ファブライトやファブレスは強みがなければ絶対に成功しない。日本でもザインエレクトロニクスやメガチップスといったファブレス企業はある。世界のファブレスと比べると、残念ながらそれほど強くはない。トップ20社には入っていない。ましてや、半導体回路の一部だけに特化したIPビジネスは、ファブレス以上に尖った特長が不可欠。そのような中、日本にもIPビジネスを手掛けるベンチャーが出てきた。IPベンダー、ファブレス半導体メーカー、ファブライト、IDM、ファウンドリといったエコシステムが整えば、弱体化した電機OEMメーカーにとっても強力な助っ人組織となる。

しかし、お互いに顔を合わせたことがない。彼らが知り合いになり、エコシステムを構築し、パートナーとしてコラボレーションできるようになれば、世界を舞台に競争できる環境が整う。人脈を形成することがビジネスの基礎であることは世界共通だ。米国、欧州、アジアそして日本、人脈形成に向けてセミコンポータルは協力したい。

セミコンポータルは9月24日に、SPIフォーラム「新時代のアジアの半導体産業」と題したセミナーを東京御茶ノ水のソラシティで開催する。台湾と中国のファブレス、インドでも始まる半導体製造、台湾ファウンドリながら日本では存在感の薄かったUMC、そして日本でもグラフィックスプロセッサIPを開発してきたDMP社から講演がある。これからの時代を目指すアジアの半導体企業を紹介していく。さらに、ビジネスをするうえでパートナーとしてエコシステムを構築する企業がこのフォーラムから多数出てくることを願う。

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