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MWC報告をベースに半導体産業のゆくえを占う〜4月5日ワークショップ開催

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半導体産業はこれから先、どうなるのだろうか。少なくとも日本だけを取材していてはその全貌をつかむことはできない。先月、Mobile World Congress(MWC)に参加する機会に恵まれ、スペインのバルセロナに行ってきた。この展示会は元々、通信オペレータ(NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど)の集まるイベントであったが、今やオペレータの上を行くビジネスを展開しているアップル社やグーグル社などOTT(Over the top)も携帯機器市場のど真ん中にいる。もちろん、半導体メーカーも多い。とにかく動きが速い。

MWCでは、通信オペレータにハードウエアやソフトウエアを納入する企業やサービス企業などが1500社以上、出展した。半導体関連企業は80社以上出展したが、そのうち日本企業はわずか2社;ルネサスモバイルと富士通セミコンダクターだけだった。モバイル分野における日本の半導体メーカーの存在感が極めて乏しい。

半導体産業の先頭を走る米国では、インテルがパソコンビジネスからモバイルにやってきた。企業内向けグループウエアを手掛けてきたソフトウエアメーカーのオラクル、あるいは製造系ソフトウエアで有名なドイツのSAP、さらにコンピュータの巨人IBMなど、これまで携帯分野とは縁が薄いと思われた企業が出展しているのである。もともと携帯に強いクアルコムやブロードコム、マーベルなどは言うまでもなく、サムスンやSKハイニックスの韓国勢に加え、台湾のメディアテックも参加した。欧州や米国からは無名の半導体メーカーも多く参加した。まるで、猫も杓子も「Go Mobile」であった。

ところが、日本から取材に行ったメディアは、新しいスマートフォンの発表が少なかったせいか、MWCを大きな話題としなかった。せいぜいFirefox OSとタイゼン(Tizen)OSについての報道が見られたが、残念ながら現地ではFirefoxはまだしも、タイゼンはほとんど話題にさえ上らなかった。その中では、ロシアのメーカーが発表した、ユニークなスマホには人だかりができていたが、日本人はほとんどいなかった。ここでも日本に伝わる情報と現地での評判との温度差を肌で感じた。

モバイル分野、ワイヤレス分野はこれから最も成長していく産業である。単なる携帯端末が話題ではない。クアルコムのCEOであるポール・ジェイコブス氏は「スマホは2012年に出荷台数ベースでパソコンの2倍に達した。もはやスマホがコンピューティングのプラットフォームになった」と基調講演で語った。スマホが従来の携帯電話と決定的に違うのはアプリである。アプリをインストールすることでスマホにさまざまな機能を追加できる。まるでパソコンである。

スマホは、デジカメ市場を食い、MP3音楽プレイヤー市場を食い、さらにナビゲーション市場を食い、ゲーム機市場まで食っている。スマホ1台でこれら全ての機能が実現できるほか、例えばインターネットラジオのアプリを入れるとスマホでラジオを楽しむことさえできている。かつてのワープロ専用機からパソコンへと変化していった時と同じことがスマホで起きている。

4月5日の18時からセミコンポータルでは、SPIフォーラムワークショップ「半導体産業のゆくえ2〜MWCレポート」を開催するが、このMWCからの話題を拾い、さらにモバイルとは関係しなかった企業が続々参加している様子をお伝えする。ここに近未来の成長の種があるからだ。彼らはいったいどのような気持ちで参加したのかを含め、MWCの全貌をお伝えする予定だ。さらに近未来の成長に向けたテーマを提案し、議論していきたいと思う。

実は、前回のワークショップで新しい試みを行った。オーディエンス参加型の仕組みを採り入れた。それ以前のセミナー方式では質問や意見などの発言が少なかった。前回は、参加者の8割から9割の方が発言してくれた。今回もまたたくさんの方が発言しやすい雰囲気を作りたいと思う。これこそがワークショップ本来の目的だからである。それまで接することもなかったユーザーやサプライヤ、ライバルメーカーの人たちと知り合いになることができ、同じ世代の仲間ができたと聞かされ、うれしかった。今回も、参加者が議論したコンテンツを会社に持ち帰り、それを成長の種にしてくれることを願う。
申込は以下のページから。
SPIフォーラム ワークショップ「半導体産業のゆくえ2〜MWCレポート」
定員に達した場合には締め切らせていただくことをご理解いただければ幸いである。

(2013/03/29)

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