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昔のラジオ少年が最新の電子回路キットを見た

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かつて、ラジオ少年だった頃、3球ラジオや5球スーパーラジオ、あるいは1石鉱石ラジオをいじくっていた。トランジスタが現れた頃、1石トランジスタあるいは3石トランジスタのラジオにも飛び付いた。トランジスタや真空管の配線を図面通りにつなぐと、ラジオの動作はよくわからなかったものの、スピーカーから音が流れた時は興奮した。無線の電波を何かしら増幅すればスピーカーで音を聞くことができるという自然科学を体験した。

この頃は、ラジオに関する雑誌を買い読みまくった。その中に、錆びた釘にアンテナとアースを付ければラジオが聞こえる、という記述があり、自分で真っ赤に錆びた釘で実験してみた。アンテナには100Vの電源コードを利用したところ、電波の強かったNHKの第1か第2放送が聞こえてきた。後に大学に入り、固体物理を勉強していた時に酸化鉄は半導体になるという記述を読み、錆びた釘が半導体だったことを思い出した。錆びた釘がショットキバリヤの整流ダイオードとして検波という作用を行ったのである。こういった自分の原体験がエレクトロニクスや半導体を理解するバックグラウンドになっている。

今は、ラジオを聴くことが理科に興味を持つ原動力になるとは思えないが、パソコンをツールとしてアプリを書くことが現代版ラジオ少年かもしれない。もちろん、ソフトウエアを書くことはコンピュータの動作を理解するかもしれないが、システム全体は理解できない。システムを理解するためには、ソフトウエアだけではなくハードウエア、すなわち電子回路や半導体も理解する必要がある。

コンピュータだけではなく、携帯機器や/IT機器、ロボット、ゲーム機、電気自動車などもデジタル回路とコンピュータシステムからできている。最近では、コンピュータと同じようにCPUやメモリ、周辺などの構成を持ちながらコンピュータではないシステムを、組み込みシステムと呼んでいる。ロボットなり、ゲーム機なり組み込みシステムに興味を持つようになれば、ハードもソフトも必要だということを理解する。何よりも学生がこれらに興味を持つことが重要で、興味を持たせるように導くのが産業人の役割ではないだろうか。

典型的なハードの一つが電子回路だ。電子回路に描かれた配線図をつなぎ合わせると、増幅器やラジオ、信号発生器、発振器、コンパレータなどが出来て、それらの機能を体験できる。例えば、基準電圧を3Vとしてこれより大きいか小さいかを比較するとコンパレータになり、大きい方を1小さい方を0とみなせばデジタル回路となる。またコンパレータをつなぎ合わせて、「大きい」・「小さい」を連続的に表現すればΣ型のADコンバータとなる。電子回路の応用は実にさまざまな機能を実現する。


図1 電子キットを持つシステムLSIセンターの河崎社長

図1 電子キットを持つシステムLSIセンターの河崎社長


こういった電子回路に、中学生、高校生、大学生が興味を持ってもらいたい、もっと身近に感じてもらいたい。スマートフォンや携帯ゲーム機の心臓部となる半導体チップをもっと知ってもらいたい。そのような思いから、システムLSIセンター社長の河崎達夫氏は、学習用の電子回路キットを考案した。それをビジネスとして、FPGAやASICのデザインハウスであるMGIC(エムジックと呼ぶ)が販売する。河崎氏は元松下電子工業の専務取締役を務めた現役のエンジニア兼経営者。大阪市でシステムLSI技術学院を運営しており、LSIの設計や製造を若い人に伝授するというミッションを持ってLSI教育に熱心に取り組んでいる。

販売する電子回路キット「電気・電子実験室」では、30種類程度の回路を構成できると共に、液晶のオシロスコープも自分で組み立てられるようになっている。LEDを点灯させる回路や、デジタルカウンタ回路など基本的な回路が入っている。回路ボードは配線ピンを差し込む方式で、はんだ付けは必要ない。さまざまな回路を実現するカギとなる半導体チップは、サイプレス(Cypress Semiconductor)社が提供する、8ビットのアナログ混在マイコンpSoCである。これはProgrammable system on chipの略であるが、アナログ回路部分をプログラムで好きな回路に構成できる、という特長がある。pSoCにはプログラムに必要なソフトウエア開発キットも付いており、マイコンの仕組みや動作が中学生にも理解できるようになっている。


図2 電子回路キット「電気・電子実験室」 オシロスコープ(右)と電圧計・信号発生器(左)

図2 電子回路キット「電気・電子実験室」 オシロスコープ(右)と電圧計・信号発生器(左)


河崎氏は、日本の理科教育の一環として使ってもらいたいと願っているが、日本だけではなく世界中のモノづくりを支えるエンジニアの養成講座としても使っている。ちなみに今回のキットの前身となる回路キットをカンボジアやモンゴルの大学で使って見た例があるという。前回のキットは、プリント回路基板が完成していなかったが、今回の電子回路ボードを完成させ、オシロとソフトウエア開発キットやマニュアルまで付けて販売する。消費税込みで2万円。日本の教育関係者に期待している。製品の問い合わせは、(株)MGIC sakura@m-gic.com, 電話06-6195-8680

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