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プロセスドライバ半導体製品が変わってきた

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GlobalPress Connections社主催のe-Summit 2012に出席するため米西海岸に来た。ここで世界中の記者やメーカーの人たちとディスカッションしていると、真実が見えてくることが多いが、今回もやはり一つの大きな流れ(トレンド)を知ることができた。今回はTSMCが28nmラインを止めている、という欧米メディアの真偽についてディスカッションした。

図 米カリフォルニアで開催されたe-Summit2012 休憩時間に撮影

図 米カリフォルニアで開催されたe-Summit2012 休憩時間に撮影


これまで米国メディアや英国のメディアからTSMCの28nmラインについての報道があり、28nmの生産ラインが3月末までストップしている、というもっぱらの話だった。実際、クアルコムやnVidia、アルテラなどのファブレスメーカーはチップを生産してくれないという不満を述べていた。ところが、台湾の記者は全く違う意見を述べている。28nmラインを止めたのではなく、生産ラインがあふれてしまっていたために注文を断っていたというのである。生産能力を上げる作業がほぼ終わったために間もなく新しい注文を受け付けるという。こういったことは45nmの時もあっただけで、大した問題ではないと台湾の記者は言う。

しかし、欧米の記者は全く意見が違う。TSMCにはもはや生産能力が足りないため、ファブレスメーカーはTSMC以外のファウンドリと契約を始めている。こちら(米西海岸)の噂では、クアルコムがサムスンとファウンドリ契約をしているらしい。TSMCの歩留まりはまだ低いとみている記者が多い。

いずれが正しいのか時間がはっきりさせてくれると思うが、いずれの場合もこのことは28nmになってからプロセスドライバが変わったためだと考えてよい。

これまで、微細化のプロセスドライバはFPGAデバイスと決まっていた。実際、FPGAデバイスはソフトウエアでフレキシブルに回路構成を変えられるというメリットがある半面、ロジックスイッチに相当するSRAMセルのアレイの面積が大きすぎるために微細化はマストであった。最も微細なプロセスを使うデバイスはFPGAだった。

ところが、アプリケーションプロセッサという量産デバイスが登場してきたのである。このプロセッサチップには、マルチコアCPUだけではなく、グラフィックスプロセッサやビデオコーデック、オーディオコーデック、その他インターフェース、時にはベースバンドモデムなども含めた回路が集積されていて、極めて集積度が高い。高機能で高集積度だからこそ微細化してチップ面積の増大を防ぐ。しかも、用途がスマートフォンだからこそ、消費電力を削減する技術が求められる。そのための回路も集積する。

アプリケーションプロセッサはこれまで、FPGAの次に微細化を進める分野であった。ところが、2012年のMobile World Congress(MWC)やConsumer Electronics Show (CES)などで新型のスマートフォンやタブレットが続々発表されるようになると、消費者の需要が急速に高まるため、チップの生産能力が間に合わなくなる。なにせスマートフォンは世界中で何百万台も出る商品である。FPGAの出荷数はその2桁以上も小さい。生産ラインが間に合わなくなることは当然だ。

スマートフォンはいきなり何百万台の生産となる一方、急速に代替わりされる機器である。だからこそ、量産立ち上げを急がなければ半導体メーカーはビジネスチャンスを失ってしまう。クアルコムやnVidiaなどがTSMC以外のファウンドリを見つけようとしたことは合理的な判断である。

e-Summit 2012において、アルテラのシニアバイスプレジデント兼軍用・工業用・コンピュータ用部門のジェネラルマネージャーであるジェフ・ウォーターズ氏(以前、ナショナル・セミコンダクター・ジャパン社長)が「アルテラはTSMCにこだわる(のでセカンドソースのファウンドリを求めない)」と述べた時は驚いた。しかしよく考えてみると、数量がアプリケーションプロセッサとは全く違うFPGAではセカンドソースを求める必要がないかもしれない。

(2012/04/24)

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