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2011年の2大ニュースから来年および未来につなげたい

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2011年が間もなく暮れようとしている。簡単に今年を振り返り、来年のはずみとなるヒントを提供したい。エレクトロニクス最大級の事件として、東日本大震災とその影響、スティーブ・ジョブズ氏の言葉、について考えていこう。

図 スタンフォード大学構内

図 スタンフォード大学構内


3.11は言うまでもなく、戦後最大ともいえる危機的状況であった。地震の後の津波、爆発した福島原発、電子産業へのダメージなどの事件が世界中を震撼させた。津波の恐ろしさを世界中の人々が再認識した。全米のテレビはどのチャンネルも繰り返し津波の映像を流した。ルネサス那珂工場の被災によって自動車産業が止まった。福島原発はとんでもないローテクを使っていたことがわかった。

3.11の2週間後、米国へ取材出張した時(参考資料1)にわかったことだが、海外の人たちは日本が壊滅した、と感じていた。現地に着くと、「よく来たね。ご家族みんな大丈夫か。放射能は?」と矢継ぎ早に質問攻めにあった。海外での日本に対する報道はでたらめが多く、日本には近づけない、といった誤解が生じていた。帰国のフライトはガラガラで、エコノミーシートの上で横になって眠ることができた。

半年後、10月に欧州IMEC、米国EuroAsia2011、11月に英国に出張すると、「日本人はすごい。あの大震災から、すごいスピードで立ち直ることができた」とさまざまな人たちから言われた。日本国内にいると、復興が遅い遅い、という報道しか伝わらなかった。想定外という言葉が連続して使われたほどの巨大な震災は、阪神淡路大震災の復興と比較され遅いことが強調された。

大震災に対して海外からの義援金の内、台湾からのお金が最大だったが、その理由が最近になってはっきりした。TSMCのテクノロジーシンポジウムや、セミコンジャパンでのASEの基調講演で、「1999年の台湾大地震後に最も大きな支援をいただいた日本に感謝している。今度は俺たちがお返しする番だ」と台湾の経営者たちは語った。逆にもし海外の人たちが将来大きな災害に見舞われた時、今度は日本がお返しする番だ、といえるようにしたい。

こういった世界の方たちは、日本を敬っている上に、日本はいつか必ず復活すると、思っている。しかし、当の日本人は、自虐的に先が見えないとか、2番底が来るとか、日本抜かし(Japan passing)とか、悲観的になり過ぎている傾向がある。ICパッケージングメーカートップの台湾ASEのCOO(Chief operating officer)であるTien Wu氏は、日本の半導体産業に対して質問すると、日本人は優秀なのだから、仕組みを変えれば必ず復活できる、と語ってくれた。

海外メーカーが日本に期待している以上、日本メーカーは彼らの期待に応える努力をする必要はあるだろう。自虐的になっている暇があれば、これからの未来に向けて成長していくための戦略を立てることにアタマを使おうではないか。セミコンポータルでは、来年も戦略立案の役に立つ記事を提供していくことを約束する。

10月はじめに亡くなられたアップル社会長のスティーブ・ジョブズ氏が2005年6月12日に米国スタンフォード大学で卒業生に向けてスピーチしたときの言葉「Stay hungry, Stay foolish」はまさに日本の産業にも呼び掛けている言葉とも受け取れる。「現状に満足するな、知ったかぶりをするな」は生半可なエリートや学歴を自慢する人たちに向けられた言葉でもある。このスピーチの冒頭で「私は大学を出ていない」と彼は語った。

中途半端に悲観的に考える人はエリートに多い。楽天家はモノを考えない人と思われがちだ。大震災の時に自粛ムードが漂ったが、生きている人間こそ、亡くなられた方々の教訓を生かすことを考えるべきであり、残された方にただ同情するだけでは未来が開けない。社会は、自粛より助け合い活動を進めたり、お金を循環させたりする方が活性化する。自粛は負のスパイラルを助長するだけである。生き残った私たちこそ、未来を考えなければ亡くなられた方々に申し訳ないだろう。

スティーブ・ジョブズ氏が残した、Stay foolishこそ、知ったかぶりをやめ、何が足りないのか、どうやって成長していくのか、未来を切り開くのか、をもっともっと考え尽くすべき言葉だろう。日本の半導体産業、エレクトロニクス産業が未来志向に変わり、これまでの仕組みを変え、新しい企業に生まれ変わった時が日本の半導体産業・エレクトロニクス産業が復活できる時だと思う。

来年こそ、未来に向けて踏み出していけるようにしたい。今年1年間、ご愛読ありがとうございました。

参考資料
1. 1年ぶりのGlobalpress主催のe-Summit、早くもPR会社からの誘いの手 (2011/03/28)

2. "You've got to find what you love," Jobs says (2005/06/12)

(2011/12/28)

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