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技術ジャーナリストの私にも半導体産業の未来に向けてできる小さなこと

先日、自宅近所の夏祭りに「LEDランプ製作教室」を開いた。これは、白色LED1本を光らせるだけのたわいのないLEDランプなのだが、子供たちに少しでも理科に興味を持ってほしいという思いから、この企画を夏祭り実行委員会に提案した。理科離れが叫ばれて久しいが日本がモノづくりで生きていく以上、理科好きを一人でも多く輩出すべきだろう。

図1 自作のLEDランプ

図1 自作のLEDランプ


このLEDランプの製作には、白色LED1個と抵抗1本、単3乾電池3本、細い電線1本だけは秋葉原で購入し、容器やスイッチなどそれ以外の物はすべて家庭にある紙(チラシや少し厚手のボール紙)や、アルミホイール、セロテープ、梱包材のプチプチ、などを利用した。ハンダごては火傷する危険がありここでは使わなかった。小学生高学年から中学生を対象としたが、意外にも低学年も参加してくれた。

LEDは光る半導体であり、順方向に電池をつながなければ光らない。しかも乾電池1個では光らない。2個だと少し光るが、光は弱い。3個つないで初めて明るいランプになる。このワイドギャップ半導体ゆえの特徴をわかってもらおうと思ったが、小学生には難しかったようだ。何せ基本的な所から戸惑いがあった。電池の向きを間違えた子供もいた。4.5Vにするためには同じ向きに3本直列接続することから教えなければならなかった。

それでも、ただ単に光るランプを作ったことだけでもよかった。中身はわからなくても、これがきっかけになって中身を知ろうとしてくれればよい。

夏祭り前に実行委員会の仲間(大人)で作り方をレビューした。まず電池を直列に同じ向きにつなぎ、紙で巻いていく。できるだけきつく巻かないと電池がするりと落ちてしまうため、セロテープで仮止めしてもよい。その後、電池のマイナス側に63オームの抵抗をくっつけるのだが、接触面積を増やすためにアルミホイールを細く切り、抵抗のリード線の周りに外れないように巻きつける。電池のマイナスと抵抗の接触強度を増すためプチプチをクッション(バネ)として使いセロテープでその上からしっかりと固定する。電池のプラス側にはLEDのp型端子を取り付ける訳だが、これもリードの先端を丸くし接触面積を増やして細いアルミホイールを巻きつける。さらにプチプチで押さえ、セロテープでしっかりと固定する。LEDのもう一方の端子に数cmの銅線を付けて配線を実質的に伸ばし、先ほどの抵抗のもう一端とスイッチを形成する。このスイッチはやや厚手の紙にアルミホイールを巻き付けたものと抵抗を接触させ、セロテープで固定し、少し浮かせておく。これをLEDの配線と接触させるとスイッチになる。これが仕掛けだ。非常に単純で、誰でも作れる。最後はペットボトルを半分に切ったモノに採り付けると完成である。ペットボトルだけでは無愛想なので、それぞれ何かかわいいシールを張ってカスタマイズする。


図2 LEDランプの作り方 イラスト:山口香苗と@a_mizuho

図2 LEDランプの作り方 イラスト:山口香苗と@a_mizuho


この作り方のイラスト(図2)を同じ実行委員のメンバーが作ってくれた。またペットボトルを半分に切る作業も仲間の一人が手伝ってくれ、ペットボトルの上にシールを張るというアイデアやシールなども仲間が提供してくれた。このようにみんなに助けられて子供たちのアイデアを織り込めるようなLEDランプ製作教室を開くことができた。

元エンジニアだとはいえ、私は30年間技術ジャーナリストの仕事をしてきたので、半導体産業の復活やモノづくり産業の隆盛、理系人間の養成など当事者として取り組めない、というもどかしさがあった。半導体産業界への新しい提案や海外の半導体産業の活動を伝えることはできても決して当事者にはなれない。どうすれば当事者として貢献できるかを考えた結果、理系好き人間を一人でも二人でも増やすことは自分ができる範囲のことだろうと思った。だから今回、子供たちに理系の面白さを伝えることを行った。

子供たちの反応は良く、最後になって教えてほしいという子供も増えてきたため、時間を延長してLEDランプ作りに追われてしまった。きっかけは何でもよい。子供たちが理系に興味を持ってくれたら、最高にうれしい。

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