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auブランドのiPhoneが手に入る日が現実的になってきた

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iPhone4がauブランドで手に入る日が来る可能性が大いに高まってきた。これまで日本ではソフトバンクしか扱えなかった。米国のベライゾン・ワイヤレス社がiPhone4を2月から売り出すことを1月12日に米国で発表した。これはKDDIと同じCDMAネットワークを使う最初のiPhoneだ。

図 CDMAネットワークを使うiPhone4 ベライゾンが発表

図 CDMAネットワークを使うiPhone4 ベライゾンが発表


これまで米国でのiPhoneは、AT&Tの回線を使っていた。アップルがその国のナンバーワンの通信業者(キャリヤ)にしかiPhoneをサービスさせなかったからである。アップルがAT&TにiPhoneを提供した時は、AT&Tは米国ナンバーワンだった。しかし、ベライゾンの勢いは強く、2009年末には加入者数でAT&Tを抜いてしまった。

AT&Tの3Gは、NTTドコモやソフトバンクと同じW-CDMA方式だが、ベライゾンやスプリントはKDDIと同じCDMA2000方式だ。携帯電話のデジタル変調方式が異なれば使えないが、今回iPhone4がCDMA2000方式に対応したということは、CDMA回線網を持つ米国以外の国でも使える可能性が出てきたという意味である。もしアップルが日本市場にiPhone4をさらに広げようとすれば、KDDIに供与し、auブランドのiPhone4が手に入る可能性は十分にある。原理的にはそれができるようになった。

アップルは少し前まで、国でナンバーワンキャリヤだけに独占的にiPhoneを扱えるようにしてきた。唯一の例外が日本であり、第3位のソフトバンクに提供したがこれは別の事情である。しかし、アップルはアンドロイド携帯端末が立ちあがってきたこともあり、1国1キャリヤというビジネスモデルだけでは危うくなってきたことを意識しているはず。すでに英国ではGSM/WCDMAなら全ての通信キャリヤにiPhoneを使えるように開放した。

ベライゾンのニュースリリースにはiPhone4のことしか触れていない。今回はパーソナルホットスポット機能を載せたとか、HDビデオ録画だとか、コンシューマが関心のあることしか書かれていない。ただ、パーソナルホットスポット機能は通信トラフィックの増大に悩むキャリヤにとってはできるだけWi-Fiを使わせようとする狙いが透けて見える。この機能は、iPhone4を持つユーザーの周りに最大5台までのWi-Fi機器をつなげることができるというもの。携帯端末を持つ消費者みんながみんな3Gネットワークを使ってアクセスすればデータレートは遅くなり、下手すると回線がパンクしかねない。このためキャリヤはできるだけWi-FiやWiMAXなど3G回線ではないネットワークを使ってほしい。少なくともこのパーソナルホットスポットは、5人がiPhone4を通してWi-Fiをアクセスできるため、通信回線は1本で済む。

今回のCDMAチップを設計するのはもちろんクアルコムだ。アプリケーションプロセッサはアップルのA4であるため、CDMAのベースバンド復調チップがクアルコムという訳であり、A4にはベースバンド機能がおそらく搭載されていないだろう。A4の売れ行きが伸びるためサムスンはまたもや商売繁盛だ。

ただし、LEDフラッシュや、3軸MEMSジャイロ、CMOSセンサー、NANDフラッシュ、DRAMなどの部品で日本メーカーが入り込める余地はある。残念ながら、ディスプレイはもはやどこもは入れない。クアルコムが以前買収したディスプレイ会社の製品Retinaを使っているからだ。Retinaディスプレイはコントラストや分解能が高く、HD対応も可能で、細かい文字を表示することもできるため若者には受けるだろう。

ルネサスが狙えるとすればLTEを搭載する時のiPhoneだ。この市場に食い込めるかどうかはルネサス次第。競争はすでに始まっている。早め早めに勝負に出れば勝機はある。

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