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半導体物理に基づくデバイスを研究してきた賢人が語る固体素子コンファレンス

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大学が主体となってきた国際固体素子コンファレンス。10年前の2000年には学術機関からの発表論文の採択数が173件に対して企業からのそれは107件だった。9月22日〜24日に開かれる今年の固体素子コンは、学術機関の701件に対して企業からは80件とその差は開く一方だ。これを象徴するかのように今年は東京大学の本郷キャンパスで開催するが、大学で固体素子コンを開催するのは長い歴史の中で初めてだという。

かつて大手企業はみんな、中央研究所を作り、活発な研究活動を展開していた。学会が開くコンファレンスやワークショップなどにおいては各社の中央研究所の第一線の研究者が熱いディスカッションをたたかわせていた。だから発表論文件数も今よりもずっと多かった。シリコン、化合物半導体を問わず、研究所は理想の半導体を追い求めた。

企業が5〜10年先の研究をしなくなったが、では誰がその肩代わりをしているか。大学か?国立の研究機関か?大学が肩代わりしているとするなら、企業が大学に依頼してそのようにしているのだろうか。大学や研究機関が研究者の興味だけでやっていないだろうか。いずれにせよ、大学からの投稿・採択が急増していることは、昨今の半導体研究の大きな特徴といえる。

特別プレナリーの基調講演は2件ある。一つは1973年にノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈博士が自身の半世紀を語り、もう一つはレーザー研究の草分けの一人である霜田光一博士がレーザーの発展の歴史を語る。初日9月22日の17:00から東京ドームホテルで開催される。共に量子力学をベースにしたデバイスであり、半導体物理をけん引してきたことが共通している。今は技術の変革期に来ているため、このテーマが適していると論文委員会で決めたという。

レーザーはガスレーザー、固体レーザー、そして半導体レーザーへと発展してきた。半導体レーザーでも赤外レーザーから可視レーザー、さらには紫外光レーザーまで発展し、波長を変えられるチューナブルレーザー、チップ表面から発光する面発光レーザーなどバラエティに富んだレーザーが出てきた。

p型とn型の不純物濃度を極限まで上げてpn接合の空乏層を薄くすることにより、トンネル効果を実現させたエサキダイオードは、残念ながら工業的には主流になれなかった。入出力分離が必要な2端子素子だからこそ使いにくいという宿命のため、GaAsトランジスタに置き換えられた。しかし、江崎博士は、トンネル構造をもっと多数段に渡って作り周期性を持たせると人工的な半導体ができると考え、超格子(Super-lattice)という名の半導体を発明した。この発展形がHEMTになったり、MQWレーザーになったりした。最近ではGaNのHEMTもある。また超格子を作製する道具としてMBE(分子線エピタキシャル)装置が生まれた。青色LED製造に使われるMOCVDはMBEの発展形態でもある。

こういった歴史を見るとエサキダイオード自身は工業的なインパクトは少なかったが、派生効果は膨大にあったといえる。MOCVDがなかったら、青色LEDは生まれなかっただろうし、HEMTのような2次元電子ガスデバイスはできなかったかもしれない。今はこの2次元電子ガスの概念はグラフェン半導体デバイスへと発展してきている。

もちろん、江崎博士一人がこういった派生効果をもたらした訳ではない。さまざまな研究者や工場のエンジニアが関わってくることで、工業的に意味のあるものへと発展してきた。国際固体素子コンファレンスから未来に向けてどのような新しいデバイスやプロセスが発表されるか、楽しみだ。

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