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パワーエレクトロニクスの全貌と成長市場をこの目で見るセミナーを開催

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季節としては残暑なのに、猛暑が続いている。テレビ報道によると、この猛暑でビールをはじめとしてエアコン、扇風機などが売れたそうだ。さらに三菱電機のパワー半導体が通常の2倍の売れ行きを見せていることがテレビで伝えられた。パワー半導体の話題がテレビに上るとは思いもよらなかった。パワー半導体は今やパワーエレクトロニクスのキモとなっている。

図 2010年5月に開かれたSPIフォーラム「次世代パワーグリッド構想」の光景

図 2010年5月に開かれたSPIフォーラム「次世代パワーグリッド構想」の光景


パワーエレクトロニクスはもともと産業機械、大型輸送機械、電力網などに使われていたが、家庭用のエアコンや冷蔵庫などのインバータなどに入り込み、実は家庭の電気代を減らしてくれている。さらに自動車のECUにも使われているが、今後の電気自動車には心臓部にも使われるようになる。ソーラーや風力などの再生可能エネルギーにも使われている。NチャンネルMOSFETのドレインにp領域を追加して、電子・正孔のバイポーラ動作を行うIGBTは風力発電やソーラーパネルを電力系統につなげるパワーコンディショナに使われている。今後、インフラ整備されるスマートグリッドにも大量に入っていく。蓄電池の制御にもパワーICが使われる。

パワーエレクトロニクスの世界では、数A以上の電流を制御するのに半導体のスイッチを用いれば接点の摩耗も、バチっという雑音も入らない。機械式のリレーよりも高速にスイッチング動作できる。30年ほど前、サイリスタからゲートターンオフサイリスタ(GTO)に変わろうとしているときに三菱電機や東芝、日立製作所などのパワーデバイス関係者に取材した。サイリスタはいったん電流が流れるとラッチ状態になり、+と−の電極を入れ替えなければ電流を止められない。このため大きなインダクタンスからなる転流回路が必要だった。GTOはゲートにマイナスのパルスを入れるとアノードからカソードに向かって流れている電流を止めることができ、回路を簡素化できるとしてずいぶん期待された。半導体の電流容量が上がるにつれ、それまでは比較的小さな電流しか扱えなかったIGBTはさらに使いやすいGTOに取って代わるようになった。

電車を動かすような1200Aもの電流を動かすサイリスタやGTOから数AまでのパワーMOSFETまでパワー半導体にはさまざまあるが、これからの成長戦略に採り上げられている、再生可能エネルギー、電気自動車、スマートグリッドなどの分野ではパワー半導体は不可欠な存在となる。具体的にどのような回路にどのように使われようとしているのか、それによってどのくらいのスペックのデバイスを開発しなければならないのか、パワーエレクトロニクスの実例を知らなくては売れる商品にならない。

こういった成長分野は、現在のデジタル、アナログ、ミクストシグナルの半導体製品にも大きな影響を及ぼす。パワー半導体のゲートをドライブするトランジスタやパワーIC、そのパワーICに指令を送るデジタル制御ICやマイコン、CPU、周辺チップ、インターフェースIC、メモリーなども必要になる。半導体ビジネスにとってどれほど大きなインパクトがあるのか全く計り知れない。

成長分野を中心に、パワーエレクトロニクスにどのようなビジネスチャンスがあるか知りえるチャンスが巡ってきた。再生可能エネルギー、電気自動車など新分野のパワーエレクトロニクスのセミナーを企画している。新しい充電方法を開発した兵庫県尼崎市のベンチャーも登場する。電池寿命を5〜6倍伸ばしてくれる上に半分の時間で充電できるアルゴリズムを開発したテクノコアインターナショナルだ。

電気自動車向けのパワーエレクトロニクスではモーター駆動モジュール以外にも出番は多い。その一つとして、デジタル電源を自動車向けに開発している新電元は、PWM制御のキモとなるDSPについて語る。ソーラーシステムに使われるパワーコンディショナと同じような電流―電圧トラッキングシステムを導入し、日陰や鳥の落し物などによる電流低下に対してもある程度までカバーできるソーラーオプティマイザについてナショナルセミコンダクターが第2世代のSolarMagicも含めて語る。

半導体の視点からはSiCの行方を知りたい。今のところ、トランジスタに逆方向に並列に接続して、オフ時にスイッチした時の電荷を逃がす役割を担うショットキーバリヤダイオードしか、SiCの実用化は見えない。SiCの電子移動度は理論的にはSiの2倍以上あるため、Siよりも高速動作が期待できる。しかし、現実のSiC MOSFETはまだシリコンの移動度の1/10しかない。これでは性能が悪い。表面に出ている結晶欠陥が強く影響を及ぼすからだ。実用化にはもう3〜5年かかると見られている。

日本のメーカーがみんなSiCのMOSFET、あるいはGaNのHEMTを開発しているのを横目に見ながらインフィニオンはJFETを間もなく市場へ出してくる。JFETはゲートの空乏層でチャンネル電流を変調制御するデバイスであるため、表面欠陥の影響は全く受けない。ただし、ノーマリオン動作しかできないため、ゲートにマイナス電圧を印加しなければオフできない。ゲートのバイアス回路がやや複雑になるという問題がある。しかし、研究者同士の間ではインフィニオンは5年も前からJFETを使ったインバータ回路の研究を続けてきた。そして今年商用化する。できる所から開発していくというこの研究開発手法は勝ち組になれるか、注目に値する。インフィニオンの講演も楽しみだ。

9月22日、東京四ツ谷の主婦会館プラザエフにおいて「パワーエレクトロニクスの全貌と半導体の未来――電気自動車、環境、再生可能エネルギーのカギを握る」と題してセミコンポータル主催のSPIフォーラムを行う。パワーエレクトロニクスの全体像から、成長するマーケット、分野をしっかりとらえることができる。手前味噌かもしれないが、期待に応えられるセミナーになると自負している。

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