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イノベーションの欠如はいつまで続く、黒船来襲の意識から抜けきれない日本

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東洋経済8月7日号の特集見出し、「格安航空が来襲」を見て、違和感を感じた。海外から格安航空ビジネスが日本に来るようになったことを、嫌々受け入れるようなニュアンスの見出しである。かつて日本が鎖国していた時代に黒船来襲といった言葉とよく似ている。この違和感は、なぜ日本は能動的に海外に打って出ないのだろうか、という疑問だ。

戦国時代に、駿河の今川義元が尾張の清州城を攻めに来るという情報を得た織田信長は、座して死を待たずに自ら桶狭間で切り込んでいった。戦力で10対1以上の差があるため、じっとしていれば殺されることがわかっていたからだ。今の日本企業はこれまでの財産・資産があるために座して従来のことしかしない所が多いが、自ら攻めていくという気概が欠けているのではないか。それはメディア側も同じような意識があるからこそ、「〜〜が来襲」というタイトルを付けたがるのである。ただ待っていて来襲されるのではなく、自ら攻め込んでいくのでなければグローバル競争に勝てない。

日本はいつまでこのような意識を持つのだろうか。新しい時代は自分から切り開く、という意識が見られないのは残念だ。新しいことが海外で起きたら、日本はゆっくりとただ見ているだけであり(英語ではwait-and-see attitudeという)行動を起こさない。ましてや全く新しいこと(innovation)を開発し、海外に示しに行かない。この格安航空はイノベーティブな新しいビジネスモデルである。

黒船来襲という言葉は、自分からは何も仕掛けないために、海外から新しいイノベーションがどんどん入り込むことに対して使われている。この言葉でさえ、日本は自分から何も仕掛けない、という態度そのものを表している。もし日本が自ら何か新しいイノベーションを仕掛けるのなら、黒船来襲という言葉は死語になるはずだ。しかし、悲しいかな、いまだに生きているのである。

3年半前に、半導体業界に限らず米国製造業界の論客の一人、サイプレス社CEOのT.J. ロジャーズ氏にインタビューしたとき、今の日本の問題は何かと聞いたら、「イノベーションが欠如していること、コストが高いこと」の二つを挙げた。残念ながら、3年半たってもいずれの問題も解決されていない。日本の高コストとイノベーションの欠如に関して日本国内で誰も問題視しないということも問題である。高コスト問題は別に議論するとして、イノベーションについて考えてみたい。

本当のイノベーションは教育制度を根本的に変えなくては日本では創造できないかもしれない。しかし、少なくとも昔の日本の製造業にはイノベーションがあった。ソニーの小型8mmビデオ「ハンディカム」は好例だろう。ここにCCDイメージセンサー、リチウムイオン電池、高密度多層実装基板などの発明・開発によって初めて実現したイノベーションがある。イメージセンサーとリチウムイオン電池は現在まで生き続けているキーテクノロジーとなった。

半導体レーザーでは、米国業界が1.3μm帯、1.55μm帯の光通信用レーザーが完成すると開発を止めてしまったのに対して、日本はさらに可視光レーザーの開発をしつこく続け、CDやMD、DVDなど光ディスクで大きなビジネスを生み出した。これもイノベーションが大きなビジネスを稼ぎ出した好例だろう。

問題はここ10年以上、日本がイノベーションらしいものを開発していないことだ。かつてイノベーションは日本に確かに存在した。しかし今は欠如している。なぜか。子供たちから勉強を奪った「ゆとり教育」のせいもあろう。企業自身がグローバル化の波に背を向けてきたこともあろう。イノベーティブな考えをすぐ否定したがる企業人が増えてきたのかもしれない。今や「ゆとり教育」の犠牲者が社会人となっている。これでは、イノベーションの欠如はこの先10年以上続くかもしれない。まずは教育制度を一刻も早く立て直さなければ日本の将来は暗くなるばかりだ。意識改革は教育から始めれば20年後には何とか変わるはずだから。失われた10年が20年になり、やがて30年になるかもしれない。でも意識改革、教育改革を今から始めれば30年で食い止めることができる。

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