セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

トヨタの対応と品質管理について思うこと

|

今回の一連のトヨタの対応は、半導体分野から見ていて、とても違和感を持った。おそらくこの違和感こそが、海外のメディアが「トヨタたたき」として日本人の眼に映っているものではないだろうか。もちろん、同じ日本人としてトヨタにもっと頑張ってもらいたいと思う気持ちは同じなのだが。

半導体デバイスが故障した、というクレームを受け取ると、半導体メーカーはそのデバイスはどのロットで起きたものか、追跡するだろう。それも同じ製品の同じロットのデバイスが全て故障する訳ではない。出荷した製品の1万分の1とか1千分の1とかの故障であることが多い。

今回のトヨタの対応を見ていると、実験ではアクセルもブレーキも正常だからそのクレームはおかしい、と言っているように聞こえる。しかし、問題を起こすのは1000台に1台とか、わずかな台数のクルマで起きていることのはず。全数が故障するようでは話にならない。確率的にいって、実験では何も故障は起きないのは当たり前だ。

そのわずかなクルマが故障したというクレームなのに、そのわずかな数のクルマの原因を特定していないのではないだろうか。このわずかの台数のクルマに対するクレームを適切に処理したのかどうか、が今問われている。かつて半導体メーカーで品質や信頼性を勉強させていただいた私の立場から見ると、この品質管理の考えが違っているように見える。わずかな数の商品に対するクレームの原因を探ることがメーカーの責任ではないか。

基本的な「わずかな数の商品に対するクレーム」をいつまでもほったらかしにしているからこそ、いい加減な反論も出てくるのではないだろうか。すなわち米国の大学教授がトヨタ車で故障が起きるとした、いい加減な実験のことだ。こういった「やらせ」に近い実験を米国人が公表することでトヨタに対するイメージはますます悪くなる。

クレームとはわずかな数の商品で起きる故障に対するユーザーの要求である。これを適切に処理しなければ、企業イメージが傷つくことを今回トヨタは教えてくれた。半導体メーカーにとっても同じことが起きないとも限らない。わずかな数の商品に起きた故障、不良に対するクレームを早く適切に処置すること、原因を究明してニ度と起きないように対策を講じること、これは品質管理の基本ではなかったか。半導体メーカーも私自身もこれを他山の石として、商品やサービスに対するたとえわずかな数でも、クレームには真摯に対処していきたいと思う。このことで顧客の信頼を勝ち取ることができる。

月別アーカイブ