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2010年英国への旅、伝統とハイテクの融合

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今回はプリンテッドエレクトロニクスというテーマで英国を回り、最後にやはりデバイスの主流であるシリコン半導体開発拠点のブリストルを訪れた。まず日曜日にロンドンに到着、官公庁取材の後、ウェールズ州にあるスワンジー(白鳥の海Swanseaの意味)を訪れた。駅名や空港名が二つの言葉で書かれてあり、英国のビジネス・イノベーション・技能省 (日本の経産省相当)傘下のKTN(Knowledge Transfer Network)のニック(Nick)さんに聞いてみるとウェールズ語だという。

赤い字で書かれた言葉はウェールズ語で書かれた「カーディフ空港」の意味

赤い字で書かれた言葉はウェールズ語で書かれた「カーディフ空港」の意味


言葉は全く違う。単なるナマリかと思ったが、スペルが英語とは全く違う。発音の仕方も違う。完全に別な言語なのだ。知らなかった。ニックにそのことをたずねると、実は昔の歴史と深く関係あるようで、言葉はラテン語系だという。ニックによると、イタリアやスペイン、フランスの言葉と良く似ており、ウェールズ生まれの自分はこれらの言葉がおおよそわかるという。

英国にはかつてローマ人が侵略した形跡がいたるところにあり、ウェールズに近くイングランドの西にあるバース(Bath)はローマ人が発見した温泉地区だ。ここを訪れる日本人も多く、街を歩いているとよく見かける。最後の日(金曜日)の取材先となる企業があるこの街で今回は日本人を見かけた。特に、温泉博物館はここの名所だ。訪問先のスマートメータなどのデータウェアハウス用ソフトメーカーであるSidonis社のCEOによると、今でも温泉が出ており、温泉に入ることができるという。それもビルの屋上にお風呂場を作っている温泉があるらしい。

スワンジーには、1960年代に開校した新しい大学があり、新しいテーマと新しい学科を運営している。もともとスワンジーは古くからある港町で、宿泊したホテルの近くにヨットハーバーがあり、すぐそばに詩人ディラン・トーマスの博物館があった。古い街に新しい大学。それも古くて新しいプリンテッドエレクトロニクス分野を研究するが、やはり企業との連携が盛んだ。

2年前に訪れたケンブリッジ大学は、より企業寄りの姿勢を見せていたことが極めて印象深かった。今回、スワンジーの後に訪れた「この学部にいる教員はみんな何らかの分野で起業したいと思っています」、とCIKCのChris Rider教授は語る。物理学の権威で有名なキャベンディッシュ研究所からのスピンオフも出てきている。大学と企業との関係は理学部でさえ、密になりつつあると思えた。ただし、工学部のRider教授に言わせれば、物理学科の研究者の産業界への貢献意識はまだまだ低いという。

今回取材したプリンテッドエレクトロニクスは古い技術ながらも新しいプロセスや理論が求められる分野である。古くからの印刷技術を使いながら、新しい有機半導体でEL(最近はOLEDと言われる)照明やディスプレイを作る、その理論を構築することで設計法を生み出すなど、古さと新しさが混じり合っている。古い英国の伝統と、新しい英国のハイテクとの融合という分野はこの先、何かワクワクするような新しい理論と新しい事実が出てくることが期待されそうだ。

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