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トヨタの「事件」は英国においても大問題、危機管理のまずさが浮き彫りに

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1年ぶりにロンドンに、やって来た。ロンドンには有名な金融街シティ(日本橋兜町に相当)があり、ロンドン=金融の街、という図式を思い浮かべる。しかし、英国は今、国を挙げて製造業の実力アップへ向けて取り組んでいる。製造業のトップに君臨しているトヨタのブレーキの不具合による事件は、こちらでも大きく報道されている。英国の新聞「The Times」は、「これはひとつの出来事(phenomenon)であって欠陥ではないとトヨタは述べた」と伝えている。

ロンドン名物、ビッグベンと2階建てバス

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トヨタがこのような態度をとるのであれば、世界の人々はどのように思うだろうか。今回は場合によってはトヨタの命取りになりかねない、極めて重要なビジネス事件だ。危機管理のまずさはトヨタほどの大企業でさえ、企業の運命を決めてしまうことがありうる。トヨタのような製造業が国にとって重要なことはどの国でも同じだ。それだけに製造業がきちんとした対応、クレーム処理といったまともな対応が望まれる。それも、これらの後ろ向きの処理だけではなく、クレームを逆手にとった新提案やクレームをよこしたカスタマへのさらなる接近など、ポジティブな方向へ向けた危機管理を行えば企業をより強くする。にもかかわらず、今回のトヨタ幹部の対応は情けない。逃げの一手としかメディアには映っていないのである。

今いる英国では毎日のようにテレビでトヨタの事件を伝えている。モノづくりの王者であったトヨタがトップのまずい対応のために、テレビや新聞などのマスメディアが大きく反応している。トヨタ事件はトヨタがしっかり対応すべきことで、一般的なモノづくり産業を強くするためにはどうしたらいいだろうか。

ここに一つの解として英国のモデルがある。モノづくりを推進する日本機械学会では、「全てのモノ作りは設計から始まる」と認識している。この認識は極めてまともである。モノづくりは、まず設計図を作り、それに従って製造していく。この基本はどのモノづくりも変わらない。ただし、設計図を描くための作業、製造していくための手順、レシピ、製造条件などあまりにも複雑になってくると、設計と製造を分けてしまう方が良い製品を早く市場へ出せる。メモリー以外の半導体産業がまさにこのような傾向を示している。さもなければ世界の競争の舞台に立てないからだ。

過去、2回の英国出張では、設計に力を入れているエレクトロニクス企業を伝えてきたが、今回は設計と製造があまりにも単純で、それほど大きな距離は離れていないテーマを取り上げる。これからの産業としてプラスチック材料、有機材料を使ったプリンテッドエレクトロニクスが日経エレクトロニクスなどで特集が組まれたように、注目されており、実は英国が極めて高い関心を寄せている。

プラスチック材料は曲げられる、印刷技術が使える、などのメリットはあるが、決してシリコンに変わるものではない。どのように逆立ちしてもトランジスタの性能ではシリコンに勝てない。大面積、フレキシブルといった独特の用途で生きるのであって、プラスチックの物理を知っていれば、シリコンからプラスチックへ、などという流れは決して見えない。

プラスチックトランジスタの可能性を示したのは、日本人で2000年度にノーベル物理学賞を受賞した白川英樹教授である。しかしトランジスタの性能だけを比較するのなら、シリコンの移動度には全くかなわない。シリコンの結晶格子から量子力学的にシュレーディンガー方程式を解けばエネルギーバンドギャップが求められるが、ポリマー材料では結晶格子という概念がない。平面上あるいは1次元状の鎖がポリマーを構成している。この基本構造を理論的に導き、再現性のある性能を常に得られるようにし、さらに自由に材料や形状をデザインできるように理論を確立する必要がある。英国の大学(ロンドンインペリアルカレッジ)では、理論解析がモデル化を含め始まっている。半導体とは違い、不純物だらけのポリマーをどうやってそれを取り除き、理論を打ち立てるか、問題は山積している。

第3回の英国特集では、もちろん理論解析だけではなく、実際の設計法、製造法、応用、サプライチェーンなど現実のモノづくりに即したプリンテッドエレクトロニクスを紹介していく。

(2010/02/10)

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