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2番底を信じるから、成長できない、回復が遅れてしまう

なぜ、日本だけ回復が遅れているのだろうか。半年先が見えないからといっていつまで悲観的に見るのだろうか。なぜ楽観的に見ないのだろうか。在庫と受注状況から少なくとも半年先まではプラス成長していくことが見えている。しかし、その先が見えないから「2番底が来る」、と見る一部の評論家たちに脅かされているのではないだろうか。

これまでは、半年先まで好調ならその先も好調なはずだと信じてビジネスをやってきた。そして3ヵ月たってみると、好調だった。最初、見えなかった半年先はその3ヵ月先になった。3ヵ月先には受注が増えてきていることがわかった。しかし、その時点からの半年先はやはり見えない。半年先が見えないのは経済予測ではつきものだ。受注、在庫、売り上げから判断して半年先までは見える。しかし、その先は見えない。これまでも見えたことはない。

だから、「2番底が来る」と無責任な一部の評論家は言う。しかし「2番底が来る」とは半年前から言われていた。さて、その半年がもう過ぎた。2番底は来たか?来なかった。となると評論家の予測は見事に外れた。

半年後まではプラス成長できると見えているのに、その先が見えないからといって、なぜ180度転換してマイナスとして見るのか。その根拠は実は乏しい。今の失業率、株安、円高という、今立ち止まって見ている時のマイナスの材料を並べただけで、その推移を見ているわけではない。推移を見て予測はするものだ。いくらマイナス材料でもマイナスの幅が小さくなってくれば未来は明るいのである。

悲観的に見ることこそ、成長にブレーキをかける最大の要因だと思う。2番底を信じて投資や開発費にブレーキをかけると、どうなるか。半年先もこれまで同様に成長していれば、半年先の成長カーブに乗れないことになる。つまり半年先に立ち上がるビジネスの機会を失い、マイナスのスパイラルに陥ってしまう。今の日本の状況はまさにこのために回復が遅れているのである。「2番底」を信じるから、成長できない。

現実に、日本よりも経済状況が悪かった欧州、米国では誰も2番底など信じていない。だから回復が早い。セミコンポータルが昨年から警告を出しているのは、「必要以上に悪く考えると次の成長曲線に乗れないぞ」ということだ。無責任な評論家は勝手なことを言い、予想が外れても知らん顔してテレビにまた出て来る。一昨年、原油が1バレル140ドルという超高値を付けた時、テレビに出ていたどの評論家も下がるとは一言も言わなかったことを思い出してほしい。中には200ドルまで上がるとか少なくとも160ドルにはいくとか、知ったかぶりして言っていた評論家もいた。

半年先の受注が見えないのであれば、その先も今の受注が続くと考えよう。もし今後、半年先の受注が減り始めた時が本当に警戒すべきことであり、半年先が見えないからといって今からブレーキをかければ成長を放棄したことに等しい。これではその先の成長は見込めない。

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