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スタン・シーのスマイルカーブから学ぶ(1)

エイサーの総師スタン・シー会長は、TSMCのモーリス・チャン会長と並んで台湾ビジネス界の英雄として知られている。パソコンで世界ナンバー2のメーカーに押し上げたエイサーのスタン・シー会長は日本の半導体業界ではモーリス・チャン会長ほどは有名ではないとしても(日本のIT業界では知らない者はいない)、彼が考え出したスマイル曲線あるいはスマイルカーブは知っている業界人は多いと思う。

スタン・シーのスマイルカーブ


スタン・シーのスマイルカーブは、下に凸のカーブが人の笑ったときの口の形に似ていることから、そのように呼ばれる。ちなみに上に凸なら、「へ」の字の怒った顔になる。パソコン産業は、部品から組み立て、販売へと上流から下流へ進むにつれ、付加価値は高いところからいったん下がり、再び高くなるということを示している。販売では、かつてBTO(ビルド・ツー・オーダー)などのビジネスモデルで価値を高めたビジネスモデルを提案したのがDellである。

スタン・シー会長は、パソコンの組立産業は付加価値の低い産業であることに気づき、このようなスマイルカーブを提案した。このようなスマイルカーブを提案したからといって、提案したことに意味があるわけではない。自社をこれから先、どのように舵取りしていこうか、その戦略に深くかかわるからこそ、その戦略をわかりやすく表現できる手段として示したのがこのスマイルカーブである。

スタン・シー会長はパソコン産業を今後も成長させるための解決策として、パソコンの組み立て産業部分は人件費の安い中国やフィリピンへと生産シフトして、台湾では半導体や部品、モジュールなど価値の高い産業へシフトすることでエイサーは業績を伸ばしていった。

CPUとメモリーやI/Oインターフェースとをつなぐチップセット(ノースブリッジやサウスブリッジなど)の開発でインテルと争ったファブレスのエイサーラボラトリーズ社(Ali)や、DVD-ROM装置で日本を抜いたエイサーペリフェラルズ(現BenQ、さらにQisdaに分社)などに分社化して、価値の高い分野へエイサーは、シフトしていった。

なぜ、今このようなエイサーのスマイルカーブを議論しているかというと、実はこのビジネスモデルが最近の半導体ビジネスにもそっくりそのまま応用できることに気づいたからだ。それは、コバレントマテリアル社の香山晋社長とSEMI主催のプレス懇談会でディスカッションしていたときに、はたと気がついた。詳細は次回に議論する。

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