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国家支援なしで競争力のある高性能スーパーコンピュータを作ることは可能

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海外のスーパーコンピュータは民間企業が開発し、クレイ、SGI、サンマイクロシステムズ、そしてIBMが性能トップ10メーカーに入っている。IBM以外はいずれも日本のNECや日立製作所よりも小さな企業である。しかも性能は日本製よりも高く、価格は安い。国からの援助もない。一方、日本勢は、NECと日立がスーパーコンピュータ分野から手を引き、富士通1社だけが国の援助を受けながら開発を続けている。

こういった現状を政治家や文部科学省はご存じだろうか。この現状を踏まえたうえで、国家の資金をさらにつぎ込まなければスーパーコンピュータを開発できないとは、一体どういうことか。現在の31位から1位にするために何が必要なのか、きちんと積み上げられているのだろうか。ただ、ムードだけでスーパーコンピュータの開発を国家が支援して続けることを要求してはいないだろうか。ノーベル賞を受賞した科学者たちはスーパーコンピュータの性能が何で決まり、どうすれば今世界一の性能を持つコンピュータを開発できるが本当にご存知なのだろうか。

技術力を向上していくことはもちろんとても重要である。しかし、技術の象徴あるいはトップ技術がスーパーコンピュータだという認識は時代錯誤も甚だしい。それよりも、NECや日立よりも小さな企業がトップの性能を誇れるスーパーコンピュータを設計製造できる仕組みを探るべきではないのか。

高性能スーパーコンピュータを開発している海外企業は、計算すべきプロセッサをインテルあるいはAMDの市販のプロセッサ製品を使っている。プロセッサはもちろんマルチコア構成の並列処理方式で動かす。それをコントロールするソフトウエアは自社製あるいは外注である。プロセッサ同士あるいはプロセッサとチップセット間などでデータをやり取りするバスは、AMDプロセッサなら標準仕様のHyperTransport、インテルのプロセッサならフロントサイドバスを使う。いずれも標準化しており、市販の部品をできるだけ使ってコストを下げる。

コンピュータシステムでは、プロセッサや標準バスには市販、あるいは標準化された部品をできるだけ使い、演算速度が市販部品では不十分になるところのみ自社開発する。ここではプロセッサやメモリー、インターフェースは共通化し、周辺回路とソフトウエアを専用化し開発して他社に負けない製品を作る。だからNECや日立よりも小さな企業が勝てるのである。CPUや独自のインターフェースを開発してもどれほどコストや開発期間に見合うか、ここが問題なのである。独自のCPUを開発しているうちに、ボトルネックが実は周辺回路だった、というようなことになりかねない。だったら、周辺回路を独自に開発しよう、そのために数十億円をかけよう、というような開発の進め方ではお金はいくらあっても間に合わない。もちろん、性能も間に合わない、他社に追い抜かれてしまっているのである。

日本のスーパーコンピュータ開発がクレイやSGI、サンマイクロ、IBMに勝つためにはどうすべきか。答えは簡単で、性能のボトルネックとなっているところ(主に周辺チップセットとソフトウエア)に注力し、他は市販の高速部品を使うのである。自社はボトルネックの開発だけに注力すればよいため、短期間で、しかも低コスト、そしてボトルネックを解決すればもちろん性能も上がる。こういった決まった勝ちパターンに国家財政の投入がいるのだろうか。

ソフトウエアの開発にしても海外にはマルチコアの設計を容易にするソフトウエア企業が多数あり、演算処理を一つ一つのプロセッサに最適に振り分けるソフトウエアを開発しているベンチャー企業は多い。こういったベンチャーと組んでソフト開発してもいい。演算処理の効率が上がり、高速処理が可能になる。

国内メーカーが何もかも自社で開発したり、国内企業同士だけで開発したりしても国際的な競争力は付かない。開発期間を早くすることも重要で、気が付いたら技術が陳腐化していた、ということにもなりかねない。このことの方がよほど心配だ。IBMでさえ、世界のベンチャーをはじめとする先端企業とコラボして実績を上げていることを知るべきである。

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