セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

地デジ放送によって、従来のテレビが停止することをどう国民に伝えるか

|

地デジが米国で本格化、従来のアナログテレビは停止した。米国の地デジは本来、今年の2月に全面切り替えだったのを6月まで延長し、国民の喚起を促してきた。ケーブルと衛星テレビを合わせて87%はすでに地デジ対応できるが、残りの13%のうちの2%まで未対応世帯を減らしたと6月12日発行の日本経済新聞で報じている。280万世帯が未対応だそうだ。

日本ではどうか。スマップの草なぎクンが地デジを宣伝していたが、いま一つピンとこない。アナログからデジタルへ、と言っても最も長時間テレビを見ているお年寄りの方たちに伝わっていないと思う。一日中テレビを最も楽しみにしているのは、リタイヤしたお年寄りたちだ。毎日、お茶を飲みながらテレビ放送を楽しみにしているお年寄りにとって、ある日突然テレビが見られなくなる。地デジの恐怖はここにある。

今、毎日見ているお年寄りに「アナログ放送が2011年に終了します」、といったところでなんのことやらわからない。そもそもアナログ放送とは何か、を説明していないからだ。アナログ放送というテレビが終わっても自分には関係ないや、という程度でしか考えていないと思う。アナログという放送は終わっても従来のテレビ放送は続くのだろうと思っているのに違いない。しかし、このまま2011年7月を過ぎると、いつも見ていたテレビが突然見えなくなってしまうのである。ここにきてお年寄りは初めて自分のことだと気が付く。そうなっては、テレビ局に抗議が殺到する。なぜ見られないのか、どうすればよいのか、という電話がテレビ局だけではなく役所や行政にも殺到する。問い合わせに答えても、「コンバータを買わなければならないの?」「アンテナをつけなければならないの?」「集合住宅はどうなるの?」疑問は多い。混乱は避けられない。行政やテレビ局の準備は出来ているのだろうか。

地上波デジタルテレビ放送というシステムが出てきたから、「アナログテレビ」という言葉が生まれた。それまでアナログテレビとは言わなかった。「普通のテレビ」こそが「アナログテレビ」だと誰も言ってくれない。アナログテレビをきちんと定義しなければ、一般の人にはわからない。しかし、アナログテレビを正確にわかりやすく説明できる人がどれだけいるだろうか。

昔、ベル研究所がトランジスタを発明した後、しばらくの間npnやpnpトランジスタをただの「トランジスタ」という言い方をした。その後MOSFETやJFETが生まれてから、FET(電界効果トランジスタ)をユニポーラトランジスタと言い直し、npnやpnpのトランジスタをバイポーラトランジスタと言い換えた。1980年代の新聞は「バイポーラトランジスタ(双極性トランジスタ)」と書いていたが、これでは説明になっていない。

アナログテレビをお年寄りにうまく説明できないのであれば、いっそのこと、「今ご覧になっているテレビ放送は2011年に終了します」、といえばよい。その方がよほどわかりやすい。「終了しても継続して見られるようにするためにはコンバータという機器、あるいは‘地デジ対応テレビ’を新たに購入する必要があります」と言って準備を支援すればいい。

米国では、放送のデジタル化で余った周波数帯を競売にかけて200億ドルの収入を得たという。この収入の一部をコンバータ購入のクーポン代に充てたという。1枚40ドルで1世帯2枚まで配布したということで、国民の税金を使わずに補助したことはりっぱ。日本は税金を使って補助金を出すことになるのだろうか。

混乱が生じるのなら、7月にいったん終了しても、完全停止を数カ月間延長して、地デジ以降への猶予期間に備えるのも手かもしれない。いずれにしても、このまま、「アナログ放送は終了します」を伝えても意味がないことは確かである。

月別アーカイブ