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経済再開に向けて:高まる米国の圧力の中、中国半導体の躍進ぶり

アフリカ全54カ国にも感染が広がった新型コロナウイルス、世界全体の累計感染者は5月14日時点で443万人を超え、新規感染者は新興国が先進国を上回っている現状とのこと。第2波に警戒しながらの経済再開に向けた動きが米欧各国はじめ進められ、我が国では緊急事態宣言が39県で解除され追加経済対策が施されようとしている。半導体関連では、米国の中国、特にHuaweiに対する輸出制限圧力が日を追って高まる一方、米中に挟まれた立場の台湾・TSMCが米国・Arizonaに最先端の新工場を建設する発表が行われる急展開の現時点となっている。トランプ大統領は新型コロナで中国を威嚇、「関係遮断も」と迫っている中、中国の半導体の躍進ぶりも垣間見えてきている。

≪概況&半導体関連≫

「COVID-19」インパクトが引き続く世界の概況について、以下日々の動きからの抽出である。経済再開に向けた米国および欧州の具体的な動きはじめ、以下発信日で示している。

□5月11日(月)

◇英、外出制限を一部緩和、6月から休業店舗再開へ (日経 電子版 05:07)
→英国のジョンソン首相は10日夕(日本時間11日未明)の声明で、3月23日に導入した外出制限の緩和計画を公表、まず11日の週から規制を小幅に緩め、人との距離を保つことを前提に建設業や製造業などでの出勤を奨励する旨。1日1度としていた運動のための外出回数の制限も取り払う旨。休業中の店舗は6月から段階的に営業を認め、7月には飲食店も再開させたい方針。

◇フランスが経済規制緩和、百貨店開店、市民の外出解禁 (日経 電子版 07:04)
→フランス政府は11日、2カ月ほど続いた新型コロナウイルス対策の経済活動制限を緩和、外出を条件付きで認め、百貨店、ブティックなどの営業再開を認めた旨。感染が小康状態になったと判断したが、飲食店、映画館などクラスター(感染者の集団)が起きやすい業種の再開は見送った旨。欧州連合(EU)で2番目の規模を持つ同国の経済の本格再開はなお遠い旨。

□5月12日(火)

◇NY州、15日から一部で経済再開、7条件で地域ごとに (日経 電子版 07:03)
→新型コロナウイルス感染者が米国で最も多いニューヨーク州で、15日から一部の業種や地域で経済活動が再開する旨。クオモ知事が11日の記者会見で表明した旨。州内の地域ごとに、新規感染者や死者数の減少などの基準に照らし行動規制を緩和する旨。ただ、早期に再開した一部の州で再び感染が拡大しており、クオモ氏は本格的な再開になお慎重な姿勢。

米国株式市場は、新型コロナの状況および経済再開への期待の両面を見計らった値動きの推移が続いている。

◇NYダウ反落し109ドル安、コロナ感染の第2波警戒、ナスダックには買い (日経 電子版 08:37)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落し、前週末比109ドル33セント(0.4%)安の2万4221ドル99セントで終えた旨。中国や韓国で新型コロナウイルスの新たな集団感染が発生したと伝わり、米国でも感染の第2波を警戒した売りが優勢となった旨。もっとも、ハイテクやヘルスケア銘柄が買われ、相場は底堅く推移する場面もあった旨。

□5月13日(水)

◇NYダウ続落、457ドル超安、コロナ感染第2波を警戒 (日経 電子版 07:05)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落、前日比457ドル21セント(1.9%)安の2万3764ドル78セントで終えた旨。米経済活動の再開を期待した買いが先行したが、新型コロナウイルス感染の第2波を警戒した売りが次第に広がった旨。景気敏感株を中心に、引けにかけて一段安となった旨。相場上昇を牽引してきたハイテク株も利益確定売りに押された旨。

◇新型コロナ感染者数、ロシアが世界2位に、23万人超 (日経 電子版 07:15)
→ロシアで新型コロナウイルスの感染拡大が続いている旨。12日に感染者数は23万人を超え、スペインや英国を抜いて米国に次いで世界で2番目に多くなった旨。1日当たりの新規感染者数は10日連続で1万人を上回り、3月末から続く外出制限下でも増加に歯止めがかからない旨。米欧で感染者数の増加が緩やかになる一方で、新興国での拡大が顕著になっている旨。

□5月14日(木)

◇NYダウ516ドル安、FRB議長発言で (日経 電子版 05:50)
→13日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は大幅続落、終値は前日比516ドル安の2万3247ドルで1日以来の下げ幅となった旨。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が景気に強い警戒を示し、市場に不安が広がった旨。米中貿易交渉を巡る不透明感も相場を下押しした旨。

◇ブラジルのコロナ感染者、約19万人、独仏抜き6位に (日経 電子版 07:47)
→ブラジル政府は13日、新型コロナウイルスの感染者が約18万9千人を超えたと発表、前日のドイツに続きフランスも抜き、世界で6番目となった旨。累計死者数も1万3千人を超えた旨。経済活動の早期再開を求めるボルソナロ大統領は「人々は仕事に戻らなければならない」と述べ、外出自粛の解除を主張する旨。経済や政治の混乱が嫌気され、通貨レアルは過去最安値を更新した旨。

◇緊急事態宣言、39県で解除、2次補正予算編成へ (日経 電子版 18:21)
→安倍晋三首相は14日の記者会見で、新型コロナウイルス対策で全国に発令した緊急事態宣言について39県で解除すると表明、重点的な感染対策が必要な13の「特定警戒都道府県」のうち茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県と、特定警戒ではない34県を対象から外す旨。経済的影響へ対応するため2020年度第2次補正予算案を編成する方針も示した旨。
北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、京都、大阪、兵庫の8都道府県への宣言は維持する旨。緊急事態宣言は4月7日に7都道府県へ発令し、16日に全国へ拡大、発令後に解除するのは初めてとなる旨。

□5月15日(金)

トランプ大統領が新型コロナに貿易摩擦を抱き合わせて、断交も辞さない強力な態度で中国に迫っている。

◇トランプ氏、新型コロナで中国威嚇、「関係を遮断も」 (日経 電子版 05:08)
→トランプ米大統領は14日放映のFOXビジネステレビのインタビューで、新型コロナウイルスへの中国の対応について「とても失望している」と重ねて不満を示した旨。同時に「私たちは多くの措置をとることができる。中国との関係を遮断することもできる」と表明した旨。
トランプ氏は「もし関係を途絶えさせたら、5000億ドル(約54兆円)を節約できる」とも述べた旨。2国間貿易の全面停止も念頭に強力な報復措置に動く姿勢を示したが、米大統領が断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇するのは異例。

◇NYダウ4日ぶり反発、377ドル高、早期の経済再開期待で (日経 電子版 05:42)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発、前日比377ドル37セント(1.6%)高の2万3625ドル34セントで終えた旨。ダウ平均は前日までの3日間で1083ドル(4.5%)下落しており、自律反発を狙った短期筋の買いが優勢だった旨。欧米などでの経済活動の再開期待から原油先物相場が急反発し、1カ月ぶりの高値を付けたことで同じリスク資産である株式にも買いが入った旨。

□5月16日(土)

◇NYダウ続伸、60ドル高、原油上昇や経済再開期待で (日経 電子版 05:58)
→15日の米株式株式相場は続伸し、ダウ工業株30種平均は前日比60ドル08セント(0.3%)高の2万3685ドル42セントで終えた旨。経済活動の再開に伴う米景気指標の改善や原油先物相場の上昇などを好感した買いが入った旨。


シリコンバレーの最新状況が以下の通りである。コロナ禍でのいろいろな切り口での実態が引き続きあらわれている。

□5月8日(金)

◇San Jose's answer for retail social distancing: Let's do business outdoors (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→人と人の間隔を6 feetあける新しいsocial distancing制約のもとで近い将来retailビジネス、特にレストランを漸次再開していく期待、San Jose市長、Sam Liccardo氏と市議会議員、Dev Davis氏が、ビジネスが戸外の歩道、駐車場および通りにおいてさらに行えるようにする市の条例に取り組んでいる旨。

□5月12日(火)

◇Coronavirus roundup: Stanford's revised infection projections| Bad news for unemployment (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→*Stanford Universityの研究者が、4月1日までにSanta Clara Countyにおいて48,000〜81,000の人々がCovid-19 coronavirusに感染と評価していたが、このほど約54,000人、Santa Clara Countyの住民の2.8%に絞った旨。その時点で確認された1,000人を遥かに上回る旨。
 *Gavin Newsom知事が月曜11日、Californiaの失業率が20%を越え、25%にも達するとしている旨。shelter-in-place命令が3月半ばに始まって以降、該州では4.5 millionが失業申請、Californiaの19.3 million強のworkforceの約23.3%の旨。

□5月13日(水)

◇Coronavirus roundup: San Mateo County set to loosen restrictions| Local governments struggle with budgets (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Covid-19 pandemicが安定化の兆し、San Mateo CountyがBay Area countyとして初めて、来週にもstay-home命令を緩和、事業再開を認める運びの旨。

□5月14日(木)

◇Coronavirus roundup: San Jose budget report declares the recession is here, amid $70M budget shortfall (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Silicon Valleyの多くの地方自治体に今年度の終わりが近づいて、現地政府が、Covid-19 pandemicに対抗する広大な売上げ損失および支出から来年に向けた予算見通しにおける不足をきたしてきている旨。San Joseがこのほど予算数字をリリース、City Manager、David Sykes氏が市議会にプレゼンした2020-2021 Proposed Operating Budgetによると、San Joseは来年度に向けて$71.6 millionの不足が見込まれる旨。

□5月15日(金)

◇Coronavirus roundup: San Mateo County might not be ready to reopen| More Covid-19 testing available (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→*San Mateo Countyが経済再開前倒しに向けたCaliforniaの要求にまだ適合していないという分析が示されている旨。
 *Covid-19 testingが、San MateoおよびSanta Clara countiesに拡大されている旨。


以上の世界の概況の中、半導体および関連業界におけるコロナウィルス関連の対応&動きについて、以下日々の動きの中からの抽出である。

まずは、米国が最先端半導体工場の建設を有力半導体メーカーに働きかけている動きが、5月10日の週の早々に次の通りである。

◇Washington in talks with chipmakers about building U.S. factories-Report: Administration seeks more US wafer fabs-Trump administration talks to chipmakers about building in US (5月10日付け Reuters)
→1.Trump政権が、米国での半導体工場建設について半導体各社と協議している、と半導体メーカー2社の代表日曜10日発。
 2.IntelおよびTSMCが、米国での新しいウェーハfab拠点の建設を検討、安全確実なmicroprocessors(MPUs)の国内供給を巡るTrump政権からの懸念に適合する旨。「Intelは、米国所有の商用ファウンドリーを稼働、広範な安全確実microelectronicsの供給で米国政府と協働する好位置にある。」と、Intelのspokesman、William Moss氏がemailedステートメントにて。

Intelは、真剣な受け止めである。

◇Trump and Intel are reportedly pushing for new processor factories in the US-Intel says it’s ‘very serious’ (5月10日付け The Verge)

台湾・TSMC側からは、慎重、ないし否定的でもある当初の反応である。

◇TSMC confirms investment talks with U.S. but no concrete plans yet-TSMC discusses building a US-based wafer fab (5月11日付け Focus Taiwan)
→TSMCが月曜11日、米国での工場建設について米国・Department of Commerce(DOC)と協議に入ったという報道を確認、しかしながら、現時点可能な投資に向けた具体的な計画はないことを強調の旨。

◇EDITORIAL: Unlikely TSMC will soon build in US (5月12日付け Taipei Times)
→米国政府が、半導体の自己充足に向けて米国で新しいfabsを建設するためにTSMCなど半導体メーカーと話し合っており、Trump政権のたくさんの“Make in the US”活動の最新の動きの旨。

米国が敵対視するHuaweiは、プロセッサ半導体製造をTSMCから中国国内のファウンドリー、SMICにもっていく動きもうかがえている。

◇Huawei Kirin 710A chip achieves mass production-Huawei puts Kirin 710A chip into volume production (5月11日付け Global Times (China))
→Huawei TechnologiesからのKirin 710A半導体が、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)にて14-nanometerプロセスで量産にある旨。深セン(Shenzhen, China)の市場調査会社、N1mobileのhead、Sun Yanbiao氏は、この動きはHuaweiのTSMCへの依存を減らす、としている旨。

TSMCの米国と中国の間で翻弄される現状があらわされている。

◇Taiwan's semiconductor industry is stuck between Trump and Huawei-Viewpoint: Taiwan chip firms stuck between China and US-US president wants to stop manufacturers supplying chips to blacklisted companies (5月12日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→National University of Singaporeのvisiting senior fellow in the Business School、Alex Capri氏記事。TSMCなど台湾の半導体メーカーが、Huawei TechnologiesとTrump政権の間の衝突に巻き込まれている旨。
「しかしながら明らかなのは、台湾の半導体分野は向こう何年か中国と米国の間の地政学的地雷原にはまり込んだままとなる。」と結論づける同氏。

そして、週末金曜15日にきて、TSMCが米国・Arizonaで5nm fabを建設するという急展開の発表が行われ、業界各紙の取り上げが続いている。

◇TSMC to Build 5nm Fab in Arizona (5月15日付け EE Times)
→TSMCが、Arizonaで5nm fabを建設、該州および米連邦政府の支援を得る旨。該拠点は、20,000 wafer-per-monthのcapacity、1,600超の直接jobsおよび数1000の間接jobsをつくり出す旨。

◇Major Apple chip supplier plans $12 billion U.S. factory in Arizona (5月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→世界最大のcontract silicon半導体メーカーが、米国での広大な先端半導体工場に約$12 billionを投資する旨。Arizona州知事、Doug Ducey氏が木曜14日夕方、TSMCの新しいPhoenix工場のニュースを発表、Wall Street Journalなどの先の報道を確認の旨。

◇Taiwan chip maker TSMC's $12 billion Arizona factory could give the US an edge in manufacturing-TSMC to build $12B, 5nm wafer fab in Ariz. (5月15日付け CNN)
→TSMCが、Arizonaに$12 billionをかけてウェーハfab拠点を建設、5-nanometer features搭載のmicrochipsをつくる旨。米国で2番目の同社の半導体工場建設は、1,600 jobsを生み出し、来年始まる予定の旨。

◇Apple supplier TSMC to build a $12 billion chip factory in the U.S. (5月15日付け CNBC)

◇TSMC to Build and Operate an Advanced Fab in the U.S. (5月15日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

◇台湾TSMC、米に半導体工場、米中覇権争いのカギ (5月15日付け 日経 電子版 10:22)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は15日、米アリゾナ州に最先端の半導体工場を建設すると発表、2021年に着工し、2024年に量産を開始する旨。総投資額は120億ドル(約1兆3千億円)になる見通し。
半導体製造技術はハイテク分野を巡る米中覇権争いのカギを握るとされ、今後はIT機器などのサプライチェーン(供給網)にも影響しそうな旨。
新工場の生産能力はウエハー換算で月2万枚。工場建設にかかる投資額は2021〜2029年で約120億ドルになるとしている旨。TSMCは声明で「米国の半導体生態系にとって最重要の戦略的意義を持つ」とした旨。

米中が牽制し合う中での今後に注目である。

米国のHuawei潰しの動きも、並行する形で以下のこれも急展開を見せている。

◇Trump extends U.S. telecom supply chain order aimed at Huawei, ZTE-Trump extends Huawei, ZTE ban for another year (5月13日付け Reuters)
→Donald Trump大統領が、米国の会社が国家安全リスクと見なされるテレコム会社とのビジネス遂行を禁止する大統領命令を来年5月まで延長する旨。該禁止措置は、Huawei Technologies, ZTEなど中国の会社に向けている旨。

◇Donald Trump extends Huawei ban through May 2021-Huawei is still in trouble with the White House (5月13日付け The Verge)

◇米、ファーウェイ製品調達禁止の大統領令1年延長 (5月14日付け 日経 電子版 14:01)
→トランプ米大統領は13日、リスクの高い外国製通信機器の調達を禁じる大統領令の効力を1年間延長した旨。米企業による中国・華為技術(ファーウェイ)製品の購入を制限するのを念頭に検討を進めている旨。トランプ政権は安全保障上の観点から中国のハイテク企業に警戒を強めており、規制強化を急ぐ構え。

上記のTSMCの米国新工場発表と重なるタイミングに、Huaweiの半導体について米国の技術&ソフトウェア使用をさらに厳しく制限する措置が発表されている。我が国はじめ跳ね返りが危惧されるところがある。

◇U.S. Targets Huawei's Chip Supply (5月15日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→米国・商務省の一機関、Bureau of Industry and Security(BIS:産業安全保障局)が、Huaweiの半導体の海外での設計&製造に向けた米国の技術&ソフトウェア使用を制限する計画を発表、米国の輸出管理を害するHuaweiの活動を遮断するよう目論まれた動きの旨。

◇U.S. moves to cut Huawei off from global chip suppliers as China eyes retaliation (5月15日付け Reuters)

◇米の対ファーウェイ制裁「抜け穴」封じ、ハイテク圧力強化 (5月16日付け 日経 電子版 05:32)
→トランプ米政権が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する制裁強化に乗り出した旨。ファーウェイが仕様を指示した外国製の半導体について規制を課し、2019年5月に発動した事実上の禁輸措置の「抜け穴」をふさぐ旨。ただ外国企業の事業にも大きな影響を及ぼす副作用も大きい旨。米中のハイテク覇権争いに他国が巻き込まれる構図が鮮明となっている旨。

◇米、ファーウェイ禁輸の例外措置、8月にも廃止 (5月16日付け 日経 電子版 10:08)
→米商務省は15日、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置を巡り、一部の取引を容認する例外措置を廃止する可能性があると発表、通信網の保守に必要な場合に限って米国製品の輸出を認めてきたが、8月にも打ち切る旨。5月15日に同時発表した制裁強化に加え、例外措置もなくなれば禁輸の影響は一段と大きくなる旨。

中国側も、対応して綱を緩めたり締めたりの動きが続いている。

◇China announces new tariff waivers for some U.S. imports-China waives tariffs for 79 US products (5月12日付け Reuters)
→中国が火曜12日、米国からの輸入増大圧力が続く渦中、双方貿易戦争の絶頂で課された制裁関税からwaiversに適格な米国の79品目の新しいリストを発表の旨。中国の財務省はステートメントで、該新waiversは5月19日に発効、2021年5月18日期限の旨。稀土類元素鉱石、金鉱石、銀鉱石および濃縮液などの製品が対象の旨。

◇中国、IT機器調達に安保審査義務、インフラ企業対象 (5月13日付け 日経 電子版 18:00)
→中国は6月から通信や交通、金融など公共インフラ運営企業が、サーバーなどのIT機器を調達する際に安全保障の審査を義務付ける旨。6月1日に「サイバーセキュリティー安全審査弁法」と呼ぶ行政規則を施行、2017年に施行した「インターネット安全法(サイバーセキュリティー法)」にもとづく新しい規制。政治や外交などによって供給が中断するリスクなどを考慮するとしており、外資系企業が締め出される恐れがある旨。米HPや米デル・テクノロジーズなど中国で営業するIT大手が影響を受けかねない旨。
自国優先の姿勢を強める中国の政策は、米国の反発を招く可能性が高い旨。

◇Chinese IC equipment makers revving up to serve domestic demand-Sources: Chinese vendors of fab gear aim at domestic clients (5月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国の半導体装置メーカーが、自己充足を高め米国サプライヤ依存を断ち切る政府の活動に沿って、種々のfrontendおよびbackend ICプロセス装置の開発の準備を整えている旨。

米国との摩擦の渦中で自立化を国家計画2025のもと推進している中国の関係する現下の動きから。まず、Huaweiは、欧州のSTMicroelectronicsとの半導体設計の連携を図っている。

◇Huawei strikes European chip tie-up as fears rise over US curbs-Collaboration with Tesla supplier STMicro also set to aid self-driving goals (4月28日付け Nikkei Asian Review)
→Huawei Technologiesが、French-Italian半導体メーカー、STMicroelectronicsと協働、Washingtonの輸出制限厳格化から我が身を守ろうと、モバイルおよび車載関連半導体を共同設計する旨。

前回示しているが、IC Insightsによる2020年第一四半期半導体ベンダー・トップ10にHuawei傘下のHiSiliconが、中国メーカーとして初めて第10位のトップ10入りを果たしている。

◇With HiSilicon, China Gets First Legit Global IC Player (5月8日付け EE Times)

◇Huawei's chip unit breaks into Top 10 (5月8日付け China Daily)

中国の半導体ソリューション・プロバイダー、GigaDeviceが、半導体IPのRambusと特許licensing合意を交わしている。

◇GigaDevice announces patent licensing agreement with Rambus-Rambus licenses RRAM IP patents to GigaDevice (5月13日付け DIGITIMES)
→non-volatileメモリ, 32-bit MCUおよびセンサソリューションのプロバイダー、GigaDevice(兆易創新:北京)が、半導体IPプロバイダー、RambusとのRRAM(resistive random access memory)特許licensing合意に調印の旨。GigaDeviceは、Rambus, GigaDeviceおよびいくつかの戦略的投資パートナーの間の合弁、Reliance Memoryともlicensing合意調印の旨。

Huaweiの最新スマホについて、部品の国産化の割合の目覚ましい高まりである。

◇ファーウェイのスマホ、中国部品4割超に、米制裁1年 (5月14日付け 日経 電子版 18:00)
→米国が華為技術(ファーウェイ)に対し、米企業との取引の大半を禁じる制裁「禁輸措置」を科してから、15日でちょうど1年が経つ旨。重要部品を米国から調達できなくなったファーウェイのスマートフォンは制裁後、どのように変わったのか。同社の技術力を示す最上位のスマホを分解すると制裁の前後で、中国製部品の使用比率が金額ベースで約25%から約42%へと大きく上昇、一方、米国製部品は約11%から約1%に引き下がったことが分かった旨。調査対象にしたのは、ファーウェイの最上位機種の新製品「Mate30」の5G版。

TSMCに比べて数世代プロセス微細化が遅れるとされる中国のファウンドリー、SMICの現状と今後への意気込みがあらわれる以下の内容である。

◇SMIC Aims to Raise More Than $3B for Expansion-For expansion, SMIC will sell shares to raise more than $3B (5月11日付け EE Times)
→Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)(上海)が、拡張投資に$3 billionを上回る調達が行える新株売却を目指している旨。

◇SMIC、純利益5倍、中国、今期投資を3割増、1〜3月 (5月15日付け 日経)
→半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)が13日発表した1〜3月期の純利益は、前年同期比約5倍となる6400万ドル(約70億円)。
中国での通信機器向けの需要が好調で、売上高は同35%増の9億500万ドルと、四半期ベースで過去最高となった旨。成長を加速するため、通期の投資額を従来比で3割増の43億ドル(約4600億円)にすることも明らかにした旨。
4〜6月期の売上高は、1〜3月期に比べ3〜5%増える見通しも示した旨。華為技術(ファーウェイ)が新型スマホに搭載する半導体の製造委託先を、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)からSMICに変更したとされることなどが業績を押し上げる見通し。

コロナ禍のもと、5Gの普及で先行する中国である。

◇中国、5G契約シェア7割へ、米欧はコロナで足踏み (5月12日付け 日経 電子版 05:32)
→中国が次世代通信規格「5G」の普及を加速している旨。既に5G対応のスマートフォンの契約は5000万件を突破。年内には国内で対応スマホが100機種出そろい、契約数で世界の7割を握る見通し。世界でも20カ国以上で5Gサービスが開始した旨。ただ対象地域が国内の一部にとどまり、新型コロナウイルスの影響で通信網の整備や対応スマホの投入遅れも目立つ旨。中国は着々と投資を拡大し、5Gで覇権を握ろうとしている旨。

英国政府とのやりとりがあったばかりの中国資本傘下、半導体IPのImagination Technologiesが、中国政府系の車載メーカーと北京・中関村に車載半導体設計合弁を設立している。

◇Imagination, BAIC Capital to form automotive chip JV-Imagination sets auto chip JV with BAIC Capital (5月12日付け DIGITIMES)
→Imagination Technologiesが、中国政府が所有する車載メーカー、BAIC Groupの投資部門、BAIC Capitalと車載半導体設計合弁を設立、該中国の合弁は、車載グレードsystem-on-a-chip(SoC)デバイスおよび関連ソフトウェアの設計&開発を行う旨。本社はZhongguancun(中関村) Integrated Circuit Design Park(北京市西北郊の海淀区)に置かれ、Imagination, MediaTek, QualcommおよびSpreadtrumでsenior roles歴任のBravo Lee氏がCEO。

経済再開とは言えコロナ・インパクト対応が程度差で引き続く中国の市場における動きから、以下に注目している。

◇中国IT、コロナを商機に、アリババ、生鮮宅配店を倍増、京東、ロボ配送実用化へ (5月11日付け 日経産業)
→中国のIT企業が不要不急の外出を控える「巣ごもり」需要を取り込もうと動き始めた旨。ネット通販最大手のアリババ集団はネット宅配に対応する生鮮スーパーの出店を拡大、需要の高まる生鮮品の取り扱いを広げる旨。
京東集団(JDドットコム)は無人配送の実用化に本腰を入れる旨。新型コロナウイルスが新たなサービスの生まれるきっかけにもなりそうな旨。

◇中国、ビデオ会議も地元勢が席巻、日米と環境に違い (5月13日付け 日経 電子版 02:00)
→新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が増え、急速に需要が伸びるビジネスアプリ。利用されたアプリをみると、日米では「Zoom」が普及する一方、中国ではアリババ集団など地元勢のアプリがダウンロードの上位を占め、中国と日米の違いが鮮明。ビデオ会議を通じたやりとりが増えるなか、利用アプリの違いはビジネスの足かせにもなりかねない旨。

◇中国立訊、iPhone生産参入検討、台湾勢以外で初 (5月13日付け 日経 電子版 12:51)
→中国の電子機器の受託製造サービス(EMS)大手、立訊精密工業(Luxshare:ラックスシェア)が、米アップルのスマートフォン「iPhone」の生産の参入を検討していることが13日分かった旨。ラックスシェアはiPhoneケース製造大手の設備の買い手に浮上しており、組み立てへの参入を視野に入れているよう。iPhoneの生産は台湾勢が独占しており、同社の参入が実現すれば台湾勢以外で初となる旨。

新型コロナウイルスで結局のところ、ものづくりを北米に戻す動きが加速するのではないか、との見方である。TSMCが発表しているが、米国での半導体新工場建設にIntelはじめ名乗りが続くかどうか、今後に動向に注視である。

◇Survey: Pandemic Boosts U.S. Manufacturing Revival (5月14日付け EE Times)
→製品sourcing and supplierベンダー、Thomasが今週リリースした業界調査。新型コロナウイルスが、主に需要の山谷を乗り切れるようoperationsを自動化することにより、製造を北米に戻す活動を再燃&加速しているさらなる証左があらわれてきている旨。


≪市場実態PickUp≫

【Intel Capital関連】

Intelの投資部門、Intel Capitalが、このほど発表したハイテクstartupsへの投資が11社、$132 million。この中に、摩擦渦中の中国から2社が挙げられている。

◇Intel Capital Investments Cover Analytics, EDA, IC Design, More (5月12日付け EE Times)
→Intel Capitalが、ハイテクstartupsへのもう1つの投資roundを発表、今度は11社に$132 millionの旨。今回は"artificial intelligence(AI), autonomous computing, およびIC設計に重点化"としている旨。今年の同社の選り抜きに見出されるテーマがあるとすれば、ビジネス応用向けautomatedおよびautonomous解析ツールである旨。

◇Intel Capital Invests $132M in Tech Startups-Intel Corp.'s funding arm announced $132 million in investments in a set of startups that are concerned with business data and analytics... (5月14日付け EE Times India)

◇Intel Capital invests in Chinese chip companies amid tech tensions-Chinese companies get investments from Intel Capital (5月13日付け Reuters)
→Intel Capitalが、11のstartupsへの総額$132 millionの投資を発表、その中に中国の2社のstartups、electronic design automation(EDA)ソフトウェアを開発するProPlusおよび半導体製造用specialtyガスを生産するSpectrum Materialsの旨。

【DRAM市場】

第一四半期のDRAM市場は、コロナ渦中の売上げが前四半期比3.3%減、圧倒的首位のSamsung健在である。第二四半期は、売上げがこれより20%上回るとの見方があらわされている。

◇Samsung maintains dominant status in Q1 DRAM market despite revenue drop: data (5月13日付け Yonhap News Agency)
→TrendForce発。Samsung Electronics Co.の1-3月四半期のグローバルDRAM市場における市場シェアが前四半期比0.6 percentage point増の44.1%で支配的な地位を維持する一方、売上げは同3.3%減の$6.5 billion、新型コロナウイルス世界的大流行の渦中の旨。

◇20% rise expected for Q2 DRAM revenues-DRAMeXchange: DRAM market to see 20% increase in Q2-The DRAM market has changed from one of falling prices and rising shipments to rising prices and falling shipments, says DRAMeXchange. (5月14日付け Electronics Weekly (UK))
→DRAMeXchange発。第一四半期にDRAMサプライヤは、在庫を減らすことができ、もはや価格を下げる圧力は受けない旨。結果として、第一四半期のDRAM ASPは前四半期比約0-5%上昇、サプライヤのprofitabilityを助けている旨。ASPの小幅な上昇にも拘らず、第一四半期のDRAM売上げはCOVID-関連の市場の混乱から前四半期比4.6%減の$14.8 billion。
DRAMeXchangeは、第一四半期の受注残が第二四半期に延ばされると見ており、第二四半期にDRAM ASPの前四半期比増加が拡大、およびbit出荷が回復して、DRAM売上げ全体では20%を上回る前四半期比の増加を予測の旨。

【Ampereの2件】

1つは、Intelの元社長、Renee James氏などが設立したAmpere ComputingによるARMコアを採用したデータセンター/サーバ向けプロセッサの打ち上げである。

◇Will Arm Finally Make Inroads into Data Center in 2020?-Certainly, the timing is right from a technology perspective, but Arm's success in this market depends on more than its customers' ability to meet hyperscalers’ stringent demands... (5月11日付け EE Times India)
→最近のhigh-profile製品打ち上げが、データセンターでのArm-ベースCPUs使用の考え方にまた脚光を浴びせている旨。データセンター向けArm-ベースCPUsに排他的に重点化するSilicon Valleyのstartup、Ampereが、Altra CPUを打ち上げ、最大80個のArm Neoverse N1 coresでつくられるAltraはピークworkloadで210 Wの消費の旨。

もう1つは、事前に憶測を呼んでいたNvidiaの画期的な新GPUアーキテクチャー、Ampereである。オンラインでのプライベートカンファレンス、「GTC 2020」での同社CEO、Jensen Huang氏による発表で、以下の各紙取り上げとなっている。

◇Nvidia CEO cooks up ‘world’s largest graphics card’ for GTC 2020-Nvidia CEO to unveil "world's largest graphics card" (5月12日付け VentureBeat)
→NvidiaのCEO、Jensen Huang氏が漏らすに、同社のonline GTC Digitalイベントにて木曜14日、"世界最大のグラフィックスカード"を投入の旨。該発表にはNvidiaのgraphics processing units(GPUs)に向けて噂のAmpereアーキテクチャーが含まれるとの業界の憶測がある旨。

◇Nvidia Reinvents GPU, Blows Previous Generation Out of the Water (5月14日付け EE Times)
→3月のNvidiaのGPU Technology Conference(GTC)から延期された本日のJensen Huang氏の待望の基調講演で、同社の第8世代GPUアーキテクチャーが披露される旨。前世代のVoltaアーキテクチャー登場から3年後にあらわれるAmpereは、同社史上最大の世代の飛躍といわれる旨。Ampereは、AI trainingと推論の両方とも、並びにデータanalytics, scientific computingおよびcloudグラフィックスを加速するようつくられている旨。

◇Nvidia turns to driver-assistance market as robo-taxis stall-Nvidia will focus on ADAS chips to boost AV development (5月14日付け Reuters)
→Nvidiaが、自動運転車技術の推進に向けてadvanced driver-assistance systems(ADAS)用半導体を開発する旨。同社はまた、データセンター用の同社Ampereアーキテクチャー・ベースA100 graphics processing unit(GPU)を披露、そしてartificial intelligence(AI) modeling向けのMerlin application frameworkをお披露目の旨。

◇Nvidia's new data center GPU packs 20 times the performance of its predecessor-The graphics chip will power servers used by Amazon, Google, Microsoft and other cloud service providers. And it will be used to fight COVID-19. (5月14日付け CNET)

【センサ関連】

2019年のO-S-D(Opto, Sensor, Discretes)デバイスの販売高が、IC Insightsにより次の通りあらわされている。半導体全体の販売高が落ち込む中の比率上昇である。

◇O-S-D to take 20% of semi market-IC Insights: O-S-D market grew to $86.1B in 2019 (5月14日付け Electronics Weekly (UK))
→IC Insights発。昨年、2019年のO-S-D(Opto, Sensor, Discretes)デバイスの販売高が半導体販売高全体の比率として19.4%に上昇、該IC市場が急な15%減ゆえの旨。今年のO-S-D販売高は、減少する見込みの半導体市場全体の中で4%増の$104 billionの見込みの旨。

イメージセンサをリードするソニーの新たな取り組みである。

◇Sony aims to make image sensors smarter to expand beyond smartphones-Sony adds AI to image sensors, looking beyond phones (5月14日付け Reuters)
→ソニーが、スマートフォンの共通部品、イメージセンサにcapabilitiesを高めるようartificial intelligence(AI)プロセッサを統合、該AI capabilitiesをもってイメージセンサが、群衆の規模を評価、バーコードを読み取り、そして眠そうな運転者に注目し続けられる旨。

fingerprint-on-display(FoD)センサの急伸&急拡大ぶりが、以下の通りである。

◇Fingerprint-on-display sensor market grows nearly 8-fold in 2019, says Omdia-Omdia: Shipments of FoD sensors rose 674% in 2019 to 228.3M (5月14日付け DIGITIMES)
→Omdia発。fingerprint-on-display(FoD)センサのグローバル出荷が、2019年に約8倍に増大、従来のスマートフォンにおけるsilicon-ベースcapacitive半導体をますます置き換えている旨。2019年に全体で228.3 million個のFoDセンサが出荷され、2018年の29.5 million個から674%増。FoDセンサは市場pricingに向けたsweet spotに達しており、2020年には引き続き途轍もない増加見込み、400 million個を上回る拡大の旨。

【インド市場関連】

2020年第一四半期のインドのスマホおよびPC市場、そしてコロナ・インパクトへの見方&対応があらわされている。まだまだこれからの展開&拡大を控えるはずの該市場の定点観測である。

◇India Smartphone Market Posts 1.5% YoY Growth In 1Q20 (5月11日付け EE Times India)
→IDC発。インドの2020年第一四半期のスマートフォン市場が、前年同期比1.5%増の32.5 million台と比較的横這い。それにも拘らず、中国および米国市場がそれぞれ前年同期比-20.3%および-16.0%と減少、トップ3の間で唯一伸びる国であった旨。

◇Covid-19 Pandemic to Slow India IT Services Market Growth (5月13日付け EE Times India)
→IDC India発。COVID-19 pandemicにより、2020年12月までに年間6.5%増の$14 Billionに達すると予想のIndia IT Services & Business市場の伸びを鈍らせている旨。

◇India is Poised to Reboot Economy through Science & Technology (5月14日付け EE Times India)
→インドのMinister of Science & Technology, Harsh Vardhan氏。同国のCovid-19との戦いは、力強く着実に急進している旨。さらに、インドは科学、技術およびリサーチを通して経済を再起動する備えが十分にある旨。

◇PC Shipments in India Declined by 17% YoY in 1Q20 (5月15日付け EE Times India)
→International Data Corporation(IDC)発。desktops, notebooks, およびworkstationsから成るインドの伝統的な市場の2020年第一四半期の出荷が1.8 million台、前年同期比16.7%減。


≪グローバル雑学王−619≫

世界最強のサイバー軍を擁するアメリカのサイバー戦略について、そもそもの成り立ち&経緯、そして世界を揺るがす攻撃事例について、

『サイバー戦争の今』
 (山田 敏弘 著:ベスト新書 607) …2020年1月5日 初版第一刷発行

より迫っていく。サイバー攻撃が繰り広げられるインターネット及びコンピュータ上であるが、そもそもインターネットを開発したのはアメリカで1960年代のこと。1988年には最初のサイバー攻撃とも言われるケースが発生、「サイバー攻撃」時代の幕開けとされている。こうしてサイバー空間は、世界各国間のサイバー紛争の時代に突入していく、という経緯である。まだ耳新しいここ数年の事例として、米国大統領選挙に介入してきたロシアとその後それを封じたアメリカ、そして、北朝鮮のミサイル発射実験を発射した直後にサイバー攻撃などで破壊する「Left-of-Launch(発射寸前)」作戦が以下あらわされている。アメリカのサイバー軍の推移、そして監視システムの物凄さが続いていく。


第3章 アメリカのサイバー戦略
 −世界最強軍団の実態

◆サイバー攻撃を仕掛けて米大統領選挙に介入したロシア
・2015年6月、ハッキング組織、「ザ・デュークス(the Dukes)」が、米国内の有名シンクタンクやNGO団体などへのハッキング攻撃を開始
 →まず標的としたのは、以下のような組織
  *汚職などと戦うNGOのTransparency International
  *米シンクタンクの新アメリカ安全保障センター(CNAS; The Center for a New American Security)
  *外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations)
  *国際戦略研究所(IISS:The International Institute for Strategic Studies)
  *政治リスクを調査する会社、Eurasia Group
 →これらの組織に、時間をかけてハッキングで侵入
・2016年の8月になると攻撃手法が変化
 →実在する企業や人物を装ってメールを開かせるスピアフィッシング・メールの送信を開始
 →それ以前のサイバー攻撃が上手くいったことを意味する
・一連のハッキング攻撃では2016年11月に大統領選挙を控えていた米民主党の全国委員会(DNC:Democratic National Committee)も狙われていた
 →セキュリティがお粗末だったDNC、2015年9月の段階で早々と侵入を許してしまっていた
 →7ヶ月にわたって、「the Dukes」はDNCのネットワーク内を自由に動き回り、焦ることなく内部情報を着実に盗み出した
・「the Dukes」は、別名「A.P.T.29」や「Cozy Bear」とも呼ばれているハッキング組織
 →ロシアの情報機関、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU:лавное разведывательное управление, ラテン文字転写:Glavnoye Razvedyvatelnoye Upravleniye)の指示で活動しているとされるサイバー攻撃軍団
・当時、米サイバー軍の司令官で、米国国家安全保障局(NSA:National Security Agency)の長官でもあったマイケル・ロジャーズ海軍大将
 →大統領選後に「the Dukes」について:「国家が、特別な効果を達成するために、意識的に仕掛けたことである」
 →この攻撃での、民主党本部が大統領選指名候補争いでクリントンに肩入れして勝たせようとしていたことなどの暴露
 →結局、2016年7月26日にクリントンが民主党指名候補の座を獲得
・2017年6月23日掲載The Washington Post記事:
 →当時のBarack Obama大統領のもとにロシアの米大統領選ハッキングについて超極秘情報がもたらされたのは、予備選直後の2016年8月のことだった
 →ウラジーミル・プーチン(Vladimir Vladimirovich Putin)大統領が自ら直接、米大統領選に介入を指示
 …クリントンを貶めてトランプを勝利させるよう命令を下したというもの
 →クリントン陣営は、大統領選に敗れた要因の1つだったと指摘
・大統領選では、フェイクニュースを大量にばらまくことで世論を誘導しようとする作戦も確認されていた
 →他国の内政に干渉しようとする新手のサイバー攻撃
・ロシア絡みのアカウントは、トランプの有利になるような情報やフェイクニュースをフェイスブックで執拗に、広範囲にばら撒いていた
 →こうした数々の工作には、ロシア西部Sankt Peterburgを拠点とするInternet Research Agency(IRA)という名のサイバー工作組織などが関与
 →IRAはプーチン大統領の親しい友人が資金提供しているとされる企業
・2016年の大統領選でこれほどの攻撃が起きていたのに、2018年の米中間選挙で何も起きないと考えるのはあまりにもナイーブ
 →アメリカはきっちりと同じ轍を踏まないよう、準備をした
 →米国が誇るサイバー軍はNSAと協力して、サイバー攻撃でIRAのネット接続を完全に遮断し、活動が行えないようにした
 →この攻撃は、トランプが承認したと言われている
・サイバー攻撃というのは、戦争の概念を変えつつある
 →いまも内戦が続くシリア情勢の例:
 …ロシアや中国などが支持する政府軍と、アメリカやイスラエルなどが支援する反政府軍が争い、さながら米露の代理戦争の様相
 →水面下では、お互いサイバー攻撃を仕掛け合い、激しいサイバー戦争を行っている
 →サイバー攻撃が「実働兵器」となっていく可能性は高い
 →社会から「抹殺」させて「息の根を止める」ことも
 →サイバー攻撃は「戦い」の考え方すらも変えていく
・先導しているのは、サイバー大国であり、大統領選のように大規模なサイバー攻撃の被害も受けるアメリカ
・政府や市民の生活はますますディジタル機器とサイバー空間に依存
 →気づかないままに、社会や生活がネットワークに接続されてしまう
 →そういう世界に向かっていく中で、戦闘の形が変わっていくのは必然
・現在、世界でサイバー空間を支配するのはアメリカ

◆北朝鮮のミサイルはアメリカがマルウェアで落としていた!?
・2017年3月22日、北朝鮮は東部沿岸にある元山(ウォンサン)付近から、弾道ミサイルを発射
 →数秒以内に爆発、発射テストは失敗に終わった
・北朝鮮は、2016年にも2015年にも頻繁に失敗していることが判明
 →特に、北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイル、ムスダンの発射実験の失敗率は88%
・イランのナタンズ核燃料施設でのサイバー攻撃成功を受けて、当時のオバマ大統領は、攻撃の矛先を北朝鮮にも向けようとした
 →2010年頃以降、オバマ政権内でその作戦が動き出した、と(筆者は)米軍関係者から耳にした
・2014年頃から、アメリカは新たな作戦に乗り出した
 →「Left-of-Launch(発射寸前)」作戦
 →北朝鮮がミサイルを発射する前と発射した直後に、ミサイルそのものをサイバー攻撃などで破壊するというもの
 →ミサイルをコントロールするコンピュータシステムやセンサ、そのほかミサイル発射に必要なネットワークをサイバー攻撃
 →こうしたアメリカのサイバー攻撃により、ミサイルは予想外に海に落ちたり、軌道を大きく外れたり、空中分解してしまったケースもあったと米軍は見ている
・オバマは、大統領選挙の投開票まで数ヶ月ほどしかない時期に、ロシアによるサイバー攻撃の報告を受けていた
 →2016年9月、オバマは中国で開催されたG20杭州サミットの場でのプーチンとの立ち話で「恫喝」した
 →プーチンはそこで、「証拠を出せ」と反論、アメリカもロシアの内政に干渉しているではないか、と指摘
 →その翌月、米国土安全保障省と米国家情報長官室がロシアの犯行を公式に表明
 →大統領選終了後の12月、オバマ政権はロシアの外交官35人と家族に対して国外退去を命じるなど制裁処置を発表
・2011年だけを見ても、アメリカは231件のサイバー攻撃を他国に対して実行
 →4分の3は、イラン、中国、ロシア、北朝鮮を標的にした攻撃
・政治や経済、軍事でも世界最強の国家であるアメリカは、サイバー攻撃で世界の標的になっている
 →2018年にサイバー攻撃がアメリカ経済にもたらした損害は1090億ドル(ホワイトハウスのリポート)
 →アメリカは世界中で最もサイバー攻撃を実施している国であり、世界で最もサイバー攻撃を受けている国でも

◆最初のサイバー攻撃は1988年に起きていた
・インターネットを開発したのは、外でもないアメリカ
 →1962年8月、米MITのJ・C・R・リックライダー(Joseph Carl Robnett Licklider)が思いついたコンセプト、「InterGalactic Computer Network」
 →4機関のコンピュータの接続に成功した「ARPANET(Advanced Research Projects Agency NETwork:米高等研究計画局ネットワーク)」
 →これこそが最初のインターネット
・1988年11月、最初のサイバー攻撃とも言われるケースが発生
 →1000万ドル規模の損害
 →「サイバー攻撃」時代の幕開け
・1990年、インターネットの一般の商用利用開始、急激な普及を遂げることに
 →サイバー攻撃と呼べるような不正アクセスや、マルウェア感染によるコンピュータの機能不全なども多数報告されるように
・フランスの核実験に反対する世界初の「ハクティビスト」(ハッカー+アクティビスト)がイタリアで誕生
 →1995年、世界初のDDos攻撃
 →フランス政府機関のウェブサイトがダウンする事態に
・こうしてサイバー空間は、サイバー紛争の時代に突入していく
 →1999年、「Moonlight Maze(月光の迷路)」と呼ばれる、米軍を狙った悪意のあるサイバー軍事作戦が発覚
 →ロシアにより、米軍に気づかれないまま2年以上にわたって行われた
 →2003年、米軍などを狙った、Titan Rainと呼ばれる中国による大規模なサイバー攻撃が発覚
・2009年、当時のロバート・ゲーツ国防長官が、国防総省で核兵器や弾道ミサイル、宇宙戦略を担う米戦略軍(USSTRAOCOM:United States Strategic Command)にサイバー軍の創設を指示
 →その翌年5月、NSA長官だったキース・アレクサンダー陸軍大将が、米サイバー軍の初代司令官に就任

◆6000人強の部隊を指揮するサイバー軍
・当初から、アメリカのサイバー作戦を担っていたのは、NSA(米国国家安全保障局)
 →数多くのアメリカ屈指のハッカーたちを擁しており、世界中でサイバー攻撃を繰り広げている
・アメリカのサイバー攻撃は、米サイバー軍とNSAが一緒になって実施、どちらの本部もMaryland州にあるFort Meade基地に
 →2003年、「サイバー空間を守る国家戦略」発表
 →2008年、「包括的国家サイバーセキュリティ構想」開始
 →2011年、オバマ政権は「サイバー空間の国際戦略」を発表、国防総省も「サイバー空間作戦戦略」を公表
 →サイバー空間を、陸、空、海、宇宙に次ぐ作戦領域として定めた
 →オバマはさらに、2012年、アメリカのサイバー戦略の中でも過去最も重要なもの、「大統領政策指令20(PPD[US Presidential Policy Directive]20)」に署名
 →他国などへのサイバー攻撃には大統領の承認が必要
 →敵国でサイバー攻撃を実施できるターゲットをリスト化
・こうした流れを引き継いだトランプ大統領
 →2017年にサイバー軍を独立した統合軍に格上げ
 →2018年9月には、トランプ政権のサイバー政策を発表
 →「国家安全保障大統領覚書(NSPM13:National Security President Memorundum)」に署名することで現場に攻撃の裁量を与えた
・国防総省は2018年5月までにサイバー部隊員数を6200人に増員、作戦チームの数を133にまで増やす目標を達成

◆恋人同士の裸の写真も見られている――アメリカが運用している監視システム
・オバマ米大統領は2016年4月13日、Virginia州のCIA本部でスピーチ
 →シリアとイラクでのIS(「イスラム国」)との戦いについて
 →米大統領の口から史上初めて、アメリカが攻撃的なサイバー作戦を国外で実施していると認める言葉が出た
・ISに対するサイバー攻撃方法
 →フィッシングメールでマルウェアを仕込んだ添付ファイル付きの電子メール発送
 →"水飲み場型攻撃"と呼ばれる手法も
 …標的がよく訪れるウェブサイトを秘密裏に改竄、標的がそのサイトにアクセスした際にウィルスなどのマルウェアに感染させる手法
 →2012年から世界中で確認され、日本の中央官庁も被害に遭っている
・最近では、テロリストでも暗号化機能をもつメッセージングアプリを使用している者が圧倒的に多いという
 →米サイバー軍には、暗号化アプリを使った人物を特定する技術
・2014年11月、California州Culver Cityにあるソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのオフィスにサイバー攻撃
 →公開前の映画のデータなども盗まれ、その中には、北朝鮮の最高指導者を暗殺するという内容の、公開直前の映画『ザ・インタビュー』も
 →実はこのサイバー攻撃は、公開をめぐって、北朝鮮が激怒して実施したもの
 →アメリカ側は北朝鮮に対して反撃のサイバー攻撃を行い、しばらくの間、北朝鮮のネットワークが完全に遮断されるという事態に
・アメリカが行うサイバー攻撃では、CIAと協力して進められる作戦も
 →「ブラック・バッグ・ジョブス」と呼ばれ、これまで少なくとも100件以上の作戦が実施された
 →担当するのは、CIAとNSAのjointチーム、Special Collection Service(SCS)
・SCSは、冷戦時代から世界各地で盗聴作戦に従事してきた組織
 →現在は世界65ヵ所の大使館または領事館に拠点
 →2013年にドイツのアンゲラ・メルケル首相をはじめドイツ高官らの125件の電話が、アメリカによって10年にわたって盗聴
 →実行していたのはSCSとされる
・アメリカのNSAは、世界中の人々のネット上での活動を監視できるとんでもなく大規模な監視プログラム、「PRISM」を運用
 →監視プログラム「エックスキースコア(XKeyscore)」では、おおよそ一般的にユーザが携帯やインターネットで扱うすべての情報を、日本も含む世界150ヵ所の収集拠点で集めていた
 →何百万人という人たちのデータが盗み取られ、最大で5日間、サーバに保存
・この監視プログラムは、元CIAの内部告発者、Edward Joseph Snowdenによって2013年に暴露されたもの
 →どこかの恋人同士が送った裸の写真なども勝手に見ていたという
 →Snowdenは、NSAのコンストラクター(請負職員)として東京・福生市にある米軍横田基地などに勤務していた経験
・防御の面では、2018年にトランプ大統領がCybersecurity Infrastructure Securuty庁(CISA)という組織を、米国土安全保障省の中に設置
・国防総省で行っている一風変わったサイバー安全保障のプロジェクト、「Bug Bounty Program」
 →国防総省のシステムにある脆弱性(セキュリティの穴)を一般のハッカーらに見つけてもらおうという取り組み
 →アシュトン・カーター元国防長官が在任中に始めた試み
 →これも国を守るための重要なサイバー戦略

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