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AMATも東京エレクトロンも絶好調

Applied Materialsが半導体景気の好調を受け、2017年度第3四半期(5~7月)の売上額は、創立以来、最高額の37億4000万ドルを記録したと発表した。前年同期比33%増であり、これで5期連続増収ということになり、ずっと右肩上がりの成長を続けている。

営業利益率も好調で27.3%と前年同期よりも6.2%ポイント増えた。全売り上げの内、半導体製造装置の売り上げが全体の68%とやはり大きいが、スペアパーツや保守点検サービス,200mmウェーハ装置などのサービス部門(AGS)も21%と比較的大きく、ディスプレイや周辺装置などの市場は11%にとどまる。


図1 アプライド マテリアルズ ジャパン代表取締役社長の中尾均氏

図1 アプライド マテリアルズ ジャパン代表取締役社長の中尾均氏


同社日本法人アプライド マテリアルズ ジャパンの代表取締役社長は2017年1月に就任した中尾均氏(図1)。同氏は、市場の見通しを1990年代から2010年までの「PC+インターネット時代」から2020年くらいまでの「モバイル+ソーシャルメディア時代」を経て、2020年以降の「AI(人工知能)+ビジュアルコンピューティング時代」を迎えると定義した。PC+インターネット時代は、前工程の装置市場は255億ドルであったが、そのバラつき「シグマ」は、80億ドルもあったとした。それ以降、すなわちリーマンショック後のモバイル+ソーシャルメディア時代は、売り上げ324億ドルに対してバラつきが30億ドルに下がっている。これからのAI+ビジュアルコンピューティング時代には売り上げはもっと増えながらバラつきが30億ドルよりも小さくなるとみる。すなわち半導体製造装置ビジネスは安定成長の時代に入る。

当然ながら、半導体は今、好況期である。アプライドのライバルであり、かつて合併作業を進めていた東京エレクトロンも絶好調で、2017年度の第1四半期(4~6月)の売り上げは前年同期比60%増の2363億円、営業利益は同148%増547億円となった。営業利益率は同8.3%ポイント増の23.2%となっている。


図2 ウェーハ前工程装置の内、メモリ向けが毎年増えている

図2 ウェーハ前工程装置の内、メモリ向けが毎年増えている


製造装置の今の好調をけん引するのはやはりメモリで、例えば2012年ごろの前工程装置は303億ドルの内NAND向けが9%、DRAM向けは14%しかなかった。図2のように2017年は、NAND向けが30~35%、DRAM向けが15~20%という構成になるとみている。IoT時代にクラウドへ蓄積するメモリは不揮発性が求められるため、NANDフラッシュの需要はまだ底が見えない。中尾氏は、DRAM向けはまだ直線的な伸びを示すが、NANDフラッシュ向けは指数関数的な伸びを示しているという。

NANDフラッシュはこれまでのプレーナから3次元(3D)化へと進んでいる。1チップ内に32層、48層、64層などセルを縦に積んでいく構造のメモリでは、最下層から最上層までの深いエッチングと電極を接続するピラーが必要になる(図3)。そのためのエッチング装置とCVD装置は新開発になる。


図3 3D-NANDフラッシュは深い最下層から表面まで電極を取り出す必要がある

図3 3D-NANDフラッシュは深い最下層から表面まで電極を取り出す必要がある


3D-NANDフラッシュの多層構造の構成技術には、単純に重ねるモアペア(More Pairs)法、いくつかの層をまとめて重ね合わせるマルチティア(Multi-tiers)法、縦方向スケーリング、横方向スケーリングなどの方法がある。どの方法でも重ねてから電極を取り出すための階段状のスティアケースを作り、さらに垂直に一気に穴を開けて、導体を埋め込む。こういった一連のプロセスは均一性、すなわちウェーハ内のバラつきやウェーハ間のバラつきを減らすことが歩留まりを上げるうえで最優先となる。

アプライドの中尾氏は、そのために2015年に発売したエッチング装置「Centris Sym3」がカギとなると言う。この装置はCD(クリティカルディメンション)の均一性が0.5nm以下という優れモノ。装置名のSymはシンメトリック(対称性)の略で、従来の装置だとバラつき「シグマ」が1.2%だったが、Sym3は0.2%と大きく減少した。装置内のガスの流れ、ポンプの位置、熱流をすべて対称にしたことで、それぞれのバラつきを減らした。プラズマを発生させるRFマッチング回路とは別に自己バイアスでコンデンサをマイナスに充電してプラスイオンを引き込むためのRFマッチング回路を新規に開発した。

この装置の基本構成は8チャンバ(6台のエッチャー+2台の剥離用)で、発売以来装置は増え続け、チャンバ数で表すと2017年には4桁のチャンバ数が売れると見込んでいる。また、AMATとして正式な見通しの数字は発表しないが、次の四半期は元々伸びるという季節要因を含むが、個人的には40億ドルには到達するだろうと中尾氏は見ている。2018年には中国の投資が大きくなり、製造装置のビジネスチャンスは広がっている。

(2017/08/29)


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