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メモリ半導体の今:Samsungの最先端、3D XPoint連携、中国の生産化

米中摩擦のインパクトの懸念を孕みながらも、依然高価格で推移しているメモリ半導体が引っ張る熱い半導体市場の活況が続いている。今後に向けたメモリ半導体プレーヤーの活発な動きが出揃ってきており、首位を突っ走るSamsungからは他社との差を開く5G, AIなど新分野を見据えた8-gigabit LPDDR5 DRAMの開発、Micron/Intel陣営からは新型メモリ、3D XPoint連携の更新、そして参入&立ち上げを図る中国の新しい顔ぶれの現況が打ち上げ、ないしまとめられている。東芝メモリは別途としての今回の注目である。

≪メモリ半導体業界の新たな構図≫

DRAMおよび3D NANDの最先端を牽引し続けているSamsungの最先端の取り組みに、また新たな1ページである。5Gスマートフォン、人工知能(AI)、自動運転車システムなど今後を引っ張る多彩な分野を視野に、データ処理速度を50%高めた10-nm級プロセス技術での8-gigabit LPDDR5 DRAMを世界初として打ち上げている。

◇Samsung intros 8Gb LPDDR5 DRAM for 5G and AI-powered mobile applications (7月17日付け DIGITIMES)

◇Samsung develops new DRAM for 5G, AI features of smartphones-New mobile DRAM is optimized for 5G, AI in smartphones (7月17日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→Samsung Electronicsが、スマートフォンでの5G cellular通信およびartificial intelligence(AI)技術用にモバイルDRAM半導体を開発、10-nm級プロセス技術で作られた該8-gigabit LPDDR5 DRAMは、最大6,400 megabits/secまでデータを動かせる旨。

◇韓経:サムスン、1.5倍速いDRAMを世界で初めて開発…ギャラクシーS10に搭載 (7月18日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→サムスン電子が17日、10-nm級8ギガビット(Gb)LPDDR5 DRAMを世界で初めて開発したと発表、超高解像度(UHD)映画14本を1秒で転送できる次世代モバイルDRAMの旨。データ処理速度が既存製品より50%ほど速く、第5世代(5G)スマートフォンと自動運転車システムなどに主に使われる予定。サムスン電子はこの製品を世界最大のメモリ半導体工場、京畿道(キョンギド)の平沢(ピョンテク)工場で量産することを決定、NAND型フラッシュを生産するという戦略を約1年ぶりに修正したもので、世界のDRAM市場需給に少なくない影響を及ぼしそうな旨。該DRAMは、2014年に8Gb LPDDR4 DRAMを開発してから約4年で1段階進化したDRAMであり、半導体業界ではSKハイニックス、米マイクロンなど競合企業より最小1年以上リードする技術と評価される旨。10-nm第1世代技術として開発されたが、量産段階ではさらに微細な作業が可能な10-nm第2世代工程技術に発展し生産性がさらに高くなるとの分析も出ている旨。

MicronとIntelからは、完全な詳細が明らかにされていないphase change memory(PCM)-ベースの新型メモリ、3D Xpointについての今後の連携が、更新発表されている。来年、2019年前半に予定の第2世代の共同開発完了後は、その先についてそれぞれの製品戦略によって独立に取り組んでいくというものである。当面は、米国・Lehi, UtahにあるIntel-Micron Flash Technologies(IMFT)拠点での共同開発が続けられることになる。

◇Micron and Intel announce update to 3D XPoint joint development program-Intel, Micron to unveil second-generation 3D XPoint tech (7月17日付け DIGITIMES)
→MicronとIntelが、両社の3D XPoint共同開発パートナーシップの更新を発表、latencyを劇的に減らし、NANDメモリより書き換え回数を指数関数的に高める全く新しいclassのノンボラメモリの開発を行っていく旨。両社は、2019年前半に出てくる見込みの3D XPoint技術の第2世代の共同開発完了で合意、第2世代より先の技術開発は、それぞれの製品およびビジネスニーズに向けて該技術を最適化するために2社独立に追求していく旨。
MicronとIntelは、Lehi, UtahにあるIntel-Micron Flash Technologies(IMFT)拠点で引き続き3D XPoint技術ベースのメモリを製造していく旨。

◇Micron and Intel announce update to 3D XPoint joint development  program (7月17日付け ELECTROIQ)
→「Micronは40年に及ぶメモリ技術開発の世界を主導するノウハウを擁して力強い革新の実績があり、引き続き次世代の3D XPoint技術を引っ張っていく」と、Micronの技術開発executive vice president、Scott DeBoer氏。
「Intelは顧客の力強い支持を得てclientおよびデータセンター市場に向けてOptane製品の広範なportfolioを届ける主導的な位置づけを展開している」と、Intel Corporationのsenior vice president & general manager of Non-Volatile Memory Solutions Group、Rob Crooke氏。

◇Intel, Micron to Wind Down 3D XPoint Joint Development (7月18日付け EE Times)
→IntelとMicron Technologyが、non-volatileメモリ、3D XPointの第二世代を来年前半に完了後、両社の3D XPoint共同開発プログラムの中止に合意の旨。

◇Emerging Memory Types Headed for Volumes (7月18日付け ELECTROIQ)
→数10年のR&Dを経て、2つの途上のメモリの種類、IntelとMicronが共同開発したphase change memory(PCM)-ベース3D Xpointおよびいくつかのファウンドリーからのembedded spin-torque transfer magnetic RAM(e-MRAM)が、今や市場にやってきている旨。興味のあるポイントの1つとして、どちらもますます困難なscaling難題に直面するcharge-ベースのSRAMおよびDRAMメモリ技術に依存しないこと。もう1つ、ともに固有の性能優位性があり、向こう数10年使える可能性の旨。3D XPointは、phase-changeに基づくstorage class memory(SCM)で、高速DRAMおよびnon-volatile NANDの間に当てはまり、現在SSDsおよびDIMM form factorでのサンプルで入手可能の旨。

◇Intel's 3D XPoint Plans Clearer Than Micron's (7月19日付け EE Times)
→3D XPoint技術共同開発プログラムについて、2019年前半に完了予定の第2世代より先はそれぞれ独立に進めていくと発表したIntelとMicron。該技術には依然強気、現在の道のりを引き続き進んでいく、とIntelのnon-volatileメモリソリューショングループ、vice president、Bill Leszinske氏。Intelが現在Optane技術と呼ぶものではサーバ内のDIMMでのopportunitiesが見えており、並びにサーバあるいはclient機器での高性能ストレージがある旨。

◇Micron's and Intel's 3D XPoint Futures Compared (7月19日付け EE Times India)

中国のメモリ半導体業界であるが、この4月に3社、Yangtze Memory、Innotron MemoryおよびFujian Jin Hua Integrated Circuit(JHICC)の立ち上げる動きが一斉に見えてきたばかりである。繰り返して見ると、次の通りの確認である。

◇Yangtze Memory obtains first 3D NAND chip orders (4月16日付け DIGITIMES)
→中国の国有Tsinghua Unigroup傘下、Yangtze Memory Technologies(YMTC)のchairman代理でTsinghua Unigroupのexecutive VP、Charles Kau氏。
YMTCが、8GB SDメモリカード用に10,000個超の3D NANDフラッシュ半導体の商用生産に向けた最初の受注獲得の旨。全部で10,776個の32-層3D NAND半導体発注がYMTCに行われ、同社は2018年の終わりごろ該半導体の量産を開始する旨。YMTCは、4月11日にWuhan(湖北省武漢)の同社の新しい12-インチfabでの装置搬入を祝う式典を開催の旨。

◇Innotron Memory gearing up for DDR4 chip production, says CEO-Innotron Memory plans for DDR4 memory production (4月17日付け DIGITIMES)
→中国のInnotron Memory(以前Hefei[安徽省合肥市] ChangXinあるいはHefei RuiLiとして知られる)が、2019年の8Gb DDR4半導体の量産に向けて備えている旨。InnotronのCEO、David NK Wang氏が最近、2018年末に8Gb DDR4半導体の試行生産を始めるとしている旨。Innotronは、2019年にウェーハ20,000枚に達する月次capacityで該メモリの量産に入る予定の旨。

◇China DRAM startup gearing up for production in 2018-Sources: DRAM startup is ahead of schedule with new fab (4月17日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国・Fujian[福建] Jin Hua Integrated Circuit(JHICC)が、7月にも装置搬入を完了、2018年第三四半期の量産への道を開いていく旨。Jin Huaの12-インチウェーハ工場の建設は予定に先行、該工場のphase-one拠点が2018年第三四半期に生産開始予定の旨。該工場の棟上げ式は2017年11月に行われた旨。

そして、このほどこれら3社の取り組みの今が、台湾発で次の概要である。

◇China memory startups gearing up for commercial production in 2019-Yangtze, Fujian, Innotron to begin commercial production (7月19日付け DIGITIMES)
→中国のメモリメーカー、Yangtze Memory Technologies(YMTC), Fujian Jinhua Integrated CircuitおよびInnotron Memoryが、来年商用生産を始める予定の旨。YMTCは32-層3D NANDフラッシュ半導体10,000枚を越える受注獲得の一方、JinhuaおよびInnotronはそれぞれDRAM生産および8-gigabyte LPDDR4半導体に重点化する見込みの旨。

さらにその詳細をということで、以下の通りである。

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Yangtze Memory Technologies (YMTC), Fujian Jinhua Integrated Circuit およびInnotron Memory(以前はHefei ChangXinあるいはHefei RuiLiとして知られていた)など中国のメモリstartupsがすべて、2019年の商用生産に向けて備えている旨。

中国国有Tsinghua Unigroup傘下のYMTCは以前、最初の受注を獲得したとし、8GB SDメモリカード用の32-層3D NANDフラッシュ半導体10,000枚を越える商用生産の旨。それにも拘らず、業界筋によると、YMTCの32-層NAND半導体の月次outputは約ウェーハ5,000枚に辿り着いたばかり、依然限定される旨。

新製品については、YMTCは64-層3D NANDフラッシュメモリにR&Dリソースを主にかけており、2018年末にそのサンプルを展開予定の旨。64-層3D NAND製品の開発を経て、同社のoutputは大きく規模を増す見込みの旨。YMTCは2020年に生産capacityを月当たりウェーハ100,000枚に立ち上げられ、3つのfabsがすべて稼働すると、総計350,000〜400,000枚に到達する旨。

DRAMメモリの製造に特化するJinhuaおよびInnotronは、ともに来年の商用生産を目指している旨。

Jinhuaは以前、2018年末にUMCと共同で開発した同社第一世代DRAM生産技術を生産化にもっていくとしている旨。Jinhuaは中国でMicron Technologyを相手取った訴訟で勝っているが、JinhuaのMicronとの特許係争が技術開発スケジュールにインパクトを与えるかどうかわからない旨。

業界筋が見るところ、Innotronは最近8Gb LPDDR4半導体のtrial生産に入っている旨。同社はその生産がすでに始まっているかどうか、確認してない旨。

Innotronは以前に19nm-made 8Gb DDR4製品のengineeringサンプルを披露しており、2018年末までに出てくる旨。その量産は2019年前半に始まる見込みの旨。
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この中国での動きを意識した韓国政府の取り組みが、韓国発で以下の通りである。

◇S. Korea mulls state-backed R&D projects for memory chips-South Korea to support next-gen memory chip projects (7月18日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→韓国のminister of trade, industry and energy(MOTIE:産業通商資源部)のPaik Un-gyu氏。韓国は、先端メモリ半導体の国内開発へのサポートを高める計画、該政府支援の動きは韓国および中国の半導体メーカーの間で増大する競争から出ている旨。

これも気になる詳細ということで、以下に示すが、今後に向けた懸念のキーワードのてんこ盛りである。

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半導体が現在韓国のトップ輸出品目であり、中国は世界最大の半導体市場であるが、中国が海外製品への依存を減らすために自国の業界の展開を焚きつけるよう壮大なファンドを計画、該分野の長期的展望を巡る懸念が生じている旨。

「政府は次世代メモリ半導体の設計および製造に向けた大規模プロジェクトを考えている。」とminister of trade, industry and energy、Paik Un-gyu氏は国会で開かれたパネル討議セッションで該ファンドの詳細な量は披露せずに述べている旨。

韓国のハイテク大手、Samsung Electronics Co.とSK hynix社はworld-classのメモリ半導体開発で技術革新を引っ張っているが、中国の速いfollowersによる挑戦増大をかわすためにエキスパートは重要分野への政府の関与拡大を求めている旨。

「中国は韓国との差を詰めるために自国の半導体業界を展開する動きを踏み上げており、グローバルな供給過剰にもつながる可能性がある。」とPaik氏。

最新の動きとしてまた、メモリ半導体価格の上昇が続く渦中、中国の公正取引当局が韓国のSamsung ElectronicsとSK hynix、および米国のMicron Technologyに目を入れている旨。該3社合わせてグローバルDRAM市場の90%以上を占めている旨。

中国政府は調査していると正式には発表していないが、業界観測筋はメモリ半導体の価格を下げ、そして通商係争の渦中Washingtonに圧力をかけることを狙った動きと見ている旨。
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東芝メモリ、Western Digitalそして台湾勢と合わせて、引き続き敏感な注目を要し、続けるところとなる。


≪市場実態PickUp≫

【相次ぐCEO交代】

先月下旬のIntelそしてRambusに続いて、このほどTexas Instruments(TI)でもCEOの辞任が以下の通り発表されている。いずれも会社の行動規範ないし標準に不適合とのあらわし方となっている。国内外いろいろな分野で問題になっている事例が浮かんでくるが、時代の進展&風土をわきまえたその立場でのあり方、振る舞い、そして処し方と改めて考えさせられている。

◇Texas Instruments CEO Resigns After Code of Conduct Violations-Chairman Rich Templeton to reassume president, CEO roles at company-Templeton steps in as TI CEO after Crutcher resigns (7月17日付け The Wall Street Journal)
→Texas Instruments(TI)のCEO、Brian Crutcher氏が、行動規範違反で辞任、ChairmanのRich Templeton氏が、無期限にpresident and CEOの任に戻る旨。

◇Is #TIToo a Coincidence? (7月18日付け EE Times/Blog)
→6週間前にTexas Instruments(TI)のpresident and CEOに指名されたばかりのBrian Crutcher氏が、火曜17日辞職の旨。

【米中摩擦関連】

中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対する米国の制裁は7月13日に解除され、業務の再開に至っているが、米中摩擦の応酬の景況へのインパクトの懸念が半導体含め関連業界に広がる一方、ZTE自体も回復の先行きがなかなか見えない状況となっている。

◇ZTE, Tariffs, and a Chip Strategy (7月16日付け EE Times/Blog)
→米国商務省が中国・ZTEへのコンポーネント販売禁止を解除、半導体業界の血圧が金曜13日、数ポイント下がった旨。Trump政権が最大市場(中国)に対する該禁止および関税措置を発表、executivesはMaaloxの摂取を上げている旨。Trump大統領の貿易関係を急激に変化させる試みが関係をリセットして半導体通商団体が長らく求めている"条件を平等に"もっていくopportunityを開くかどうか、明らかではない旨。該戦術が延々と続く貿易戦争を生じ、経済低迷の引き金になる可能性をそれら団体が危惧するこの頃である旨。

◇中国ZTEが全面再開、米制裁から3カ月、イメージ失墜、先行き不透明 (7月18日付け 日経)
→中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)は、米国が13日に制裁を正式解除したことを受け、約3カ月ぶりに業務を全面的に再開した旨同社は4月、イランなどへの輸出規制に違反し、米国から米企業との取引禁止を命じられた旨。主要部品が調達できず経営危機に陥りかけたが、制裁解除でひとまず最悪の事態は回避する形となった旨。ただ失った信頼やイメージダウンは大きく、経営の先行きは不透明の旨。

我が国の輸出高で見ると、本年前半は10年ぶり40兆円となり、特に中国向けの半導体製造装置が目立っている。

◇1〜6月輸出、10年ぶり40兆円、アジア・中国向け最高 (7月19日付け 日経 電子版)
→財務省が19日発表した1〜6月の貿易統計速報(通関ベース)。輸出額は前年同期比で6.2%増の40兆1305億円と2年連続で前年同期を上回った旨。上期に40兆円を超えるのは2008年以来、10年ぶり。特に半導体関連製品の中国向け輸出が伸びた旨。輸入額は同7.5%増の39兆5238億円。輸出から輸入を引いた貿易収支は黒字を確保したが、原油などの資源高で黒字幅は縮小した旨。

米中摩擦の推移次第ではどうなるか、半導体製造装置業界での懸念があらわされている。

◇US-China trade war dims bright future for semiconductors-IT advances signal long growth cycle, but linked supply chains vulnerable to export feuds-US-China trade war causes concern for producers of IC gear (7月15日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→Applied Materials, Lam Research, Nanotronicsなど半導体製造装置サプライヤが、米国と中国の間の通商緊張の高まりにより中国のざわめいた半導体業界におけるアメリカ製製品需要が鈍くなると懸念をもっている旨。
SEMIの予測では、半導体装置の世界出荷が今年10.8%増、そして来年7.7%増としている旨。

【今年の伸長予測2態】

TSMCが、四半期売上げの減少が今年前半続くなか、後半の伸びに期待をかけている状況であるが、今年の年間販売高の伸長予測について下方修正を以下の通り行っている。

◇TSMC to post revenue growth through 4Q18-Sources: TSMC expects to grow revenue in Q3, Q4 with smartphone SoCs (7月17日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCの2018年第三および第四四半期売上げが、大方はスマートフォンSoCsの受注立ち上がりから前四半期比増加する見込みの旨。
iPhonesおよびHuaweiのMateシリーズなど新規および次期スマートフォン向け半導体出荷が始まっており、TSMCの売上げは2四半期の前四半期比減少の後、第三四半期に同増加に戻ると見ている旨。

◇TSMC cuts 2018 revenue growth forecast, expects 8% Q3 sales rise (7月19日付け Focus Taiwan)

◇TSMC revises revenue, capex outlook for 2018 (7月20日付け DIGITIMES)
→TSMCのCEO、CC Wei氏が19日の投資家meetingにて。TSMCは、2018年売上げ伸長予測を以前の最大10%に対し、このほど5-9%に改定、仮想通貨需要の不調が主因として挙げられる旨。TSMCの2018年売上げは、スマートフォン、HPC、IoTおよび車載electronics応用に向けた半導体需要が引っ張り、HPC分野からの販売高は約40%増大、今年の全体売上げの25%を占める一方、スマートフォン分野販売高の占める比率は2017年の50%から40-43%に低下していく旨。

一方、IC Insightsによる今年のelectronicシステムおよび半導体市場の読みでは、現下の熱い活況を反映、強気の伸長予測となっている。新分野そしてメモリ半導体の牽引を見込んでいると思われるが、半導体市場については、米国・SIAのデータでは2017年に初めて$400 Billionを越えたばかりの販売高が、2018年$500.0 billionのまたまた大台越えとの見方が打ち上げられている。データベースの差異があろうが、驚かされるところではある。

◇Semi Content in Electronic Systems Forecast to Reach 31.4% in 2018-Semi content to surpass 30% this year, smashing the previous record high set just last year. (7月18日付け IC Insights)

◇Semi content in electronic systems forecast to reach 31.4% in 2018 (7月19日付け ELECTROIQ)

◇Semi content in electronic systems forecast to reach 31.4% in 2018, says IC Insights-Global semiconductor market to grow 14% in 2018 (7月20日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2018年のグローバルelectronicシステム市場が5%増の$1,622 billionの一方、今年の世界半導体市場は14%と急増の$509.1 billion、初めて$500.0 billionの大台を越えるとみる旨。該予測が結実すれば、electronic内の平均半導体搭載率は31.4%に達して、2017年に記録した史上最高の28.8%を更新する旨。

【2件のM&A】

STMicroelectronicsが、32-ビット組み込みmicrocontrollers(MCUs)グラフィックス専門のDraupner Graphics(デンマーク)を買収している。

◇STMicroelectronics acquires GUI software specialist-STMicroelectronics buys firm specializing in GUI software (7月10日付け New Electronics)
→STMicroelectronicsが、MCUsのSTM32ラインなど32-ビットmicrocontrollers(MCUs)上で走るembedded graphicalユーザインタフェース用ソフトウェア、TouchGFXを擁するソフトウェアspecialist、Draupner Graphicsを買収、TouchGFXは、appliances, consumer electronics, 産業用機器および医療用システムの応用に向けてSTM32半導体上で動作する、とSTMicroelectronicsのMicrocontroller Marketing Director、Daniel Colonna氏。

◇STMicro Buys 32-Bit Embedded MCU Graphics Specialist (7月17日付け EE Times)
→STMicroelectronicsが、32-ビットembedded microcontroller units(MCUs)上でembedded graphical user interfaces(GUIs)に向けてグラフィックスおよびアニメーションを可能にするソフトウェアframeworkの開発サプライヤ、Draupner Graphics(デンマーク)を買収の旨。

◇STMicroelectronics Take Control of Danish GUI Firm (7月18日付け EE Times India)

もう1つ、Xilinxが、人工知能(AI)半導体startup、DeePhi Technology(北京)を買収、ともに今後の戦略性をうかがわせている。

◇Xilinx Buys China AI Startup-DeePhi acquisition seen as talent grab (7月18日付け EE Times)
→Xilinxが、北京の200人のstartup、DeePhiを買収、非常に熱いAI市場の早さおよびグローバルな規模を示す取引の旨。TsinghuaおよびStanford大出身グループが設立したDeePhiは、"神経ネットワークスに向けたdeep圧縮, pruning, およびsystem-level最適化"のノウハウを有する旨。

◇Xilinx acquires China AI chip startup-Xilinx purchases DeePhi Technology (7月18日付け DIGITIMES)
→Xilinxが、昨年以降主要投資家となっているartificial intelligence(AI)半導体startup、DeePhi Technologyを買収する旨。該買収後、DeePhiのチームは北京オフィスにそのままとなる旨。

【Apple関連】

Appleが、中国での再生可能エネルギープロジェクトファンド、China Clean Energy Fundを$300 million規模で次の通り発表している。

◇Apple announces $300 million clean energy fund in China-Apple, partners debut $300M fund for renewable energy in China (7月12日付け CNBC)
→Appleが木曜12日、そのサプライヤ数社と連携、中国での$300 million再生可能エネルギープロジェクトファンド、China Clean Energy Fundを構築の旨。該ファンドは、向こう4年間で少なくとも1 gigawattの再生可能エネルギーの生産につながる期待の旨。

Appleの今年これから発表される新しいiPhoneはじめ、顔認識に向けた3Dセンサが入る見込みで、化合物ICはじめ関連需要について今年後半の期待である。

◇Compound IC makers see bright 2H18 on robust Apple demand for 3D sensors-Sources: Apple's need for 3D sensors to drive compound IC demand (7月16日付け DIGITIMES)
→supply chain筋発。Appleがface IDに向けて新しい携帯機器に3Dセンサを大量に取り入れる見込み、台湾のIII-V化合物半導体および3D sensingコンポーネントおよびtesting装置のサプライヤが、Appleからの力強い需要から2018年後半について明るい出荷展望を期待している旨。3つの新しいiPhoneモデルおよび2つの新しいiPadバージョンが2018年第三四半期後半にリリースの運び、face ID機能の取り入れが濃厚で、重要光コンポーネントVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の需要を大きく引き上げている旨。


≪グローバル雑学王−524≫

米国から知的財産権の侵害を建て前とした制裁関税措置、それでは足らぬと追加の措置が打ち出されて、都度中国が全く同規模の対抗措置を行なっている、まさに応酬の渦中にある米中貿易摩擦の真相を、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

より読み解いていく前半である。自国の安全保障、自国のメーカーに打撃を与えているとする輸入制限、そして半導体業界の視点では米国のリーダーシップを維持する上で知的財産の侵害は看過できないとの立場が強烈に見えてくるが、航空機や自動車はじめ関連品目への高率の制裁関税の意味づけがあらわされている。保護主義台頭の現下の流れの中、世界における公平、公正な通商取引というものを改めて考えている。


第1章 米中貿易摩擦の真相を読み解く ―――前半

[POINT OF VIEW]
・米中経済対立の象徴ともいえる鉄鋼とアルミニウムの輸入制限
 →本章では、そのバックボーンをさらに深く追求、米中貿易戦争にどう発展していくか踏み込んでいく

■輸入制限発動が引き起こした米中経済戦争

Q17:輸入制限の理由「安全保障上の脅威」の中身とは?
・2018年3月23日、トランプ大統領が発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限
 →1962年通商拡大法232条に基づく
 →大統領が外国製品の輸入を「安全保障上の脅威」と認定すれば、関税率の引き上げや輸入割当枠の導入など幅広い制裁措置を発動できる
・2018年2月16日、米商務省の調査結果公表
 …「国家安全保障上の鉄鋼輸入の影響(The effect of imports of steel on the national security)」
 →(1)アメリカの鉄鋼メーカーは、防衛や重要なインフラに用いる鉄鋼の需要に完全には応えられない
 →(2)防衛や重要なインフラへの供給だけで鉄鋼会社は存続できず、商業的な活動が不可欠である
 →(3)現在のアメリカの自由市場制度下では、防衛や重要なインフラ用鉄鋼の供給を維持するためには、それらを供給する鉄鋼メーカーが非防衛、非需要インフラの事業を引きつける必要がある
 ⇒鉄鋼やアルミニウムの輸入が自国の安全保障に脅威を与えているという結論

Q18:知的財産権侵害への制裁の背景は?
・2018年3月22日、トランプ大統領は、知的財産権の侵害を理由に、500億〜600億ドル(5.2兆〜6.3兆円)相当の中国製品に高率の関税を課す制裁措置を正式に表明
 →「通商法301条」を発動、航空機や自動車を中心に約1300品目を対象に25%の関税を課す
・アメリカの技術と営業秘密を入手するために、中国が圧力と脅迫を使用したことに対する報復行為を行っているとしている
 →高い代価を払って最新の技術を開発しながら、バブルで肥大化した企業、それも中国当局の息がかかった企業が買収するのは公正な商取引、商慣習に反するという判断
・さらに、サイバー攻撃でアメリカ企業の事業情報に不正にアクセスしていることも問題視
 →それだけに留まらず、中国企業の対米投資の制限も決定
・人工知能(AI)やビッグデータ解析、自動運転自動車など次世代技術を巡る米中の攻防が背景に

Q19:安全保障は名目で、実際は国内産業保護では?
・国内業者を守らないと防衛やインフラが維持できない
 →自国で鉄をつくれないことは、相手が鉄を止めてしまったら自国の産業が成り立たなくなることを意味
  …明治期から「鉄は国家なり」

Q20:太陽光パネルと洗濯機の輸入制限も対中制裁か?
・2018年1月22日、アメリカは太陽光パネルと洗濯機でセーフガード(緊急輸入制限)を発動
 →太陽光パネルについては4年間で最大30%、洗濯機は3年間で最大50%の関税
 →太陽光パネルは、主に中国製品の輸入の急増を受けて米国メーカーが打撃を受けたことが原因
・洗濯機は輸入枠120万台を超える分について関税
 →中国で売っている白物家電、洗濯機はほぼすべて日本の技術供与
 →まともに輸出用生産を続けているのは韓国と中国ぐらいしかない

Q21:なぜWTOに提訴しても解決しないのか?
・アメリカの輸入制限に対して中国は対抗措置に踏み切るとともに、WTOへ提訴
 →最終的な判断が示されるまでには一定の時間が必要
 →判断が示されても、それは勧告的性格のものにすぎない
  →国際法が国内法と違って執行のシステムが脆弱であることに由来
・2016年の中国とフィリピンで領有権を巡る南シナ海に関する仲裁裁判(オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所)
 →フィリピンの訴えが認められ、中国が国際法に違反するという判断
 →その後は両国間で判決を棚上げすることで合意
 →国際法に基づく司法機関の判断の限界を示すもの
・そもそも現在の国際的な枠組みはアメリカがつくったもの
 →他国はWTOのルールを厳守するというスタンス。ところがアメリカは、WTOのルールをつくる国という考え方がベースに
・中国はルールをつくる側にはいない
 →人民元では何も買えないから

Q22:アメリカの同盟国・日本が輸入制限対象外だった理由は?
・アメリカによる鉄鋼とアルミニウムの輸入制限発動時の適用除外国
 →なぜカナダや韓国は除外されて、日本は除外されないのか
 →該当国とアメリカの間で、すでにFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などが締結済みまたは締結交渉中ゆえ
 →日本の場合、TPP(環太平洋パートナーシップ協定=Trans-Pacific Partnership)を軸にアメリカとの間の貿易協定を結ぶ予定
・とりあえず全範囲を課税対象にする。そこから条件に当てはまらない国は除外していくという手法はアメリカの常套手段
 →たとえ長く同盟関係を築いていた日本であっても、自国の利益を脅かすようなら平然と輸入制限を課す、それがアメリカのやり方

【COLUMN】トランプ流「ツイッター口撃」
・国民から直接選ばれるアメリカの大統領
 →国民は選挙人を選ぶが、事実上の直接選挙
 →米国大統領は任期付きの「独裁者」と思っていい
・トランプ大統領の「ツイッター口撃」は、決して無視できるものではない

Q23:さらなる輸入制限はあるか?
・今後、問題になる可能性が高いのはニッケルなどの希少金属
 →中国がアフリカのニッケル鉱山を買収したということが話題に
・自動車に関していえば、EUに対しても輸入関税の問題

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