セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

一体、いつになったら、半導体は戻るの?〜台湾は上昇、遅れるニッポン〜

|

「過剰在庫は急減していると聞く。公的資金もすでにワールドワイドで、200兆円も投入されている。それでも、回復のシナリオはまったく見えない。一体、いつになったらもどるの?」国内大手半導体メーカーの基幹工場トップは、いらだちを隠せず、こうぶつぶつとつぶやいた。

これまでのエレクトロニクスの回復基調は、とにもかくにも米国が戻り、欧州が戻り、そして日本がこれを追いかけて上昇してくるというパターンであった。しかしながら、今回は全く異なっている。米国は経済全体としても、2009年は2%のマイナス成長は確実といわれており、民需はいまだにふるわない。これに対して中国は、自動車、デジタル家電、携帯電話などの購入促進のための補助金を断行し、急速に民需が拡大している。当初は農村部のみにこの補助金は限られていたが、最近では上海など都市部にも適用されることになり、景気上昇に弾みがついている。

中国におけるIT機器の購入上昇は、欧米の半導体メーカー、さらには台湾ファンドリにその影響をもたらしつつある。台湾の大手ファンドリであるTSMCは、40nm、65nmなどの最先端プロセスはすでにフル稼働となり、ラインはパンパン状態だ。また、米国の液晶テレビベンチャーであるビジオ社は、そこそこの機能、買い安い価格を武器に一気に売り上げを伸ばしており、久しぶりに全米売り上げトップに返り咲いた。ビジオ社のテレビは米国でも売れているが、中国にもかなり出荷しているのだ。

この中国特需のインパクトは、残念ながらシャープ、ソニー、東芝などの日本勢にはあまりプラス影響を与えていない。それは無理のないことだ。日本勢のエレクトロニクス機器は、高機能、過剰品質であるゆえに高価格であり、また国内の高いインフラ(水、電力、労働力)を使うがゆえにグローバルマーケットではまったく価格競争力を持たない。現在のITマーケットの回復を引っ張るのが、欧米の高所得者、中層階級であれば、おそらく日本製品をかなり買うであろうから、日本メーカーに好影響を与えるだろう。しかし、今、世界のITを引っ張るマーケットの力は中国を筆頭にインド、ロシア、ブラジルなどの新興国である。当然のことながら、ロープライスのITしか買わない。

こうした図式の中で、日本勢が大きく遅れをとっていくことは中学生でもわかる理屈なのだ。日本のエレクトロニクスが現状で世界のマーケットにマッチングしないのであれば、日本の半導体メーカーがちっとも回復してこないのは当たり前だろう。なぜなら、日本の半導体は国内メーカー向けが60%以上であり、海外向けはまったく弱いからだ。

ブラジル、ロシア、インド、中国などの電子機器の消費者はおおよそ年収3000米ドルの人たちが中心だ。この層は、2005年当時で2億人程度であったが、2010年は5億人を超え、2015年には10億人になると言われている。このビックマーケットを取らない限り、日本勢の回復はありえない。しかしながら、現状の事業スタイルを変えない限り、エレクトロニクスメーカーも、半導体メーカーもみな、「日本一人負け」になっていくことは火を見るより明らかだ。

つまりは、これまでのシリコンサイクルのようになぜ回復してこないのかと、日本の半導体メーカーがいくらぼやいてみても、何も始まらない。世界全体が回復基調にあっても、日本だけは下手すれば周回遅れになっていくだろう。

半導体消費のトップは今やデジタル家電であり、パソコンではない。携帯電話も三番手から二番手を狙う勢いだ。これを見ても、ロープライスの製品向けが半導体アプリの中心に据わり、そこそこの機能をもつ半導体を大量に供給できない限り、日の丸半導体がもう一度上昇していくことは決してないだろう。また、セットメーカーのプレイヤーたちも、高コスト体質を克服しない限り、世界のステージではもはや闘えないだろう。何しろ、ソニーのブラビアのトータルコストが1581ドルであることに対し、何とライバルのサムスンは1111ドルで作ってしまうのだ。

業界で有名なアナリストである南川明氏(アイサプライジャパン副社長)は、最近の日本勢の元気のなさについてこう言い切るのだ。「とにかく、日本の半導体の主力メンバーがみな年をとった。20〜30年前と同じメンバーが研究開発をリードし、設備投資を策定し、製品戦略を練っている。これでは勝てない」。

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.