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2009年を総括し、2010年に備える

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今年1年間、ご愛読ありがとうございました。2009年最後のブログです。

2009年を振り返ってみると、ひどい落ち込みに見舞われた1年だといえる。特に第1四半期(1〜3月)の世界の半導体デバイスの売り上げは前年同期比29.4%減の4431億ドルを記録した。2月の単月では1423億ドルまで沈んだ。この10月になりようやく、前年同月比4.8%減の2249億ドルまで回復した。この数字は2008年の11月の2087億ドルを超えているため、2009年11月、12月の数字は間違いなくプラス成長に変わるだろう。

これらの数字は全て3ヵ月の移動平均をとったものだが、2月の数字を底として、少しずつ立ち上がり、その動きはずっと右肩上がりで回復してきた。今回の落ち込みを振り返ると9月の2296億ドルをピークに10月2249億ドルとわずか下がったが、11月、12月、1月と大きく下がり2月の底を迎えた。底に落ちるのが急激だった反面、回復のペースも急である。この回復のペースからは半導体市場に2番底は全く見えない。2番底とは半年先が不明な状況を悲観的に表わしているだけであり、半年前から2番底という言葉が使われたことは、単なるオオカミ少年だととらえてよいだろう。経済予測で半年先が見えたことはいまだかつてないからだ。

  ITバブル 今回の不況
ピークから底まで 15ヵ月 5ヵ月
底からピークの95%まで 44ヵ月 9ヵ月
 

今回の不況を2000年のITバブルと比べてみると、ITバブルの時は2000年10月の1865億ドルをピークとして沈み始め、2002年の1月に1002億ドルの底を迎えた。底に達するのに1年3ヵ月もかかっているが、今回は5カ月で底に来た。回復の場合も遅い。今回は4.8%減まで回復するまでに9カ月ですんだが、ITバブルの時は同じ4.8%減になるのが2004年6月と3年8カ月もかかっている。つまり、今回は、間違いなく右肩上がりの曲線、しかも急激な曲線に載っているのである。2009年全体の大きな動きとこれからの成長産業と新しい半導体の動向に関しては、12月28日の「ニュース解説」参照。

このように急速に回復しているのにもかかわらず、週末のテレビ報道を見えていると、2番底が来る、回復は遠い、デフレに入った、など未来が見えない話ばかりしている。「100年に一度の大不況」とグリーンスパン元FRB議長がこの不況を評したのに対して、必要以上に委縮してしまったのが日本ではないだろうか。グリーンスパン氏をはじめ金融関係者はこれまでITバブルを経験していない上に、不況というものを20年間、経験してこなかった。このために今回の急激な不況を100年に一度とオーバーに表現してしまったにすぎない。現実にITバブルと比べると、今回はまだマシといえる状況だ。

不況、不況とテレビでは叫ばれている一方で、半導体産業は正月休み返上で工場フル生産に入っている。テレビ報道に問題があり、世の中の正しい姿をとらえ切れていない。もちろん、半導体産業のフル生産にはリストラの影響はある。早期退職など人を切り過ぎた影響だ。

こういった好不況に対処するためには日本のメーカーのように人を切るだけではなくすぐに採用できるように、フレキシブルに対応できる派遣社員制度は製造業には欠かせないはずだ。現に米国企業には早くも採用を増やしているところも多い。この派遣を禁止するという天下の悪法「労働者派遣法」がまかり通ると、いよいよ日本のモノ作りは空洞化へ進むかもしれない。企業にとっては好不況にフレキシブルに対応できるこれまでのシステムを全面否定される上に、製造業の不平等な税負担など、製造業への締め付けが厳しくなるからだ。こうなると日本は何で成長していくのか、さっぱり戦略が見えなくなる。

そこで提案。菅副総理はCO2排出25%減(1990年比)をターゲットにした成長戦略がビジョンだと昨日のテレビで述べていたが、そうであれば25%削減するために具体的に製造業はどうなり、税制をどのようにして、実際に働くエンジニアを養成するための教育の見直しなどの道筋を示すべきだろう。ただし、大きなビジョンとして25%削減を掲げることは非常に好ましいことだと思う。ターゲットが高いほど参入障壁は高くなるからだ。

この高いターゲットを日本がクリヤーすると世界中のどこにも負けない技術が生まれる。さらに、それをビジネスに変えるビジネスモデルを生み出せば日本の50年は大丈夫だろう。かつて、京都議定書に米国ブッシュ大統領がサインしなかった後、全米自動車連盟が署名するように迫ったという経緯がある。その理由は排出ガスの少ないクルマを日本や欧州が開発するとアメ車は負けてしまう、からだった。実際、アメ車は負けた。環境のハードルは高ければ高いほど、高い技術を生み出す。「スーパーコンピュータ計画」のようなFLOPS表示だけの低いハードルはもう要らない。

再生可能エネルギー、蓄電池、スマートグリッド、エネルギーハーベスタ、それらを支える制御技術、制御技術の要となる半導体技術、これからの高いハードルの目標をクリヤーするための技術開発に向け、2010年を25%削減技術の元年としてほしい。

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