2021年の世界半導体企業成長率ランキング、4位までがファブレス大手

図1　2021年における世界半導体企業の成長率上位ランキング　出典： IC Insights

IC Insightsの2021年における成長率は前年比23%増という極めて大きい（参考資料1）。45兆円を超す巨大な産業で、これほど大きな成長率を示す業種は半導体以外にはない。全ての産業の中でも最も成長率の大きな産業だと言える。今年の要因は新型コロナ禍とそれを解決するための手段の一つとして半導体が驚異的に伸びた。社会問題をテクノロジーで解決するという言葉がIT関係者の間で使われているが、半導体こそがそのテクノロジーであることを示したような2021年である。

半導体製品の出荷数は同20%で成長しただけでなく、ASP（平均単価）も3%上昇したことで金額ベースでの市場規模が23%成長になるとこの調査会社は見ている。2008~2009年のリーマンショックからの急回復による2010年の34%成長に次ぐ数字となる。

今回、50%以上の成長を記録するファブレス半導体4社は、全てエッジコンピューティングやAI（機械学習）、5Gモバイルや基地局で潤っている企業ばかりだ。つまり、AI、IoT、5GというITトレンドの先頭に立っている。いかに早くITの最新トレンドを自社に組み込み、実装した企業が急成長したといえそうだ。

65%という最も高い成長率を示したAMDは、ゲーム機用GPU（グラフィックスプロセッサ）やコンピュータ用CPUで成長したが、時代の先取りが同社CEO のLisa Sue氏の下で花開いた。コンピュータではデータセンター用とパソコン用共に大きく成長した。

台湾のファブレスMediaTekは、予想売上額170億ドルの57%を占めるモバイル部門で同111%増という2倍以上の売上額を実現する見込み。同22%を占めるIoT/コンピューティング/ASIC部門も43%という成長を果たし、同14%を占めるスマートホーム部門でさえ35%成長を示す。加えて、同7%しか占めていないパワー半導体IC部門でさえ、39%成長である。全ての部門で大きく伸びる。もちろん最大のモバイル部門は5Gスマートフォンだけではなく、AIスピーカー（音声アシスタント）やクロムブック、Wi-Fiルータ、テレビなどで大きく成長、最新5GチップではTSMCの4nmプロセスを使っている（参考資料2）。

3位のNvidiaは時価総額が7935億ドルと世界第9位に浮上したことで、半導体以外の分野でもその名が知られるようになっている。グラフィックプロセッサ（GPU）の先駆者だけではなくAI学習・推論チップの先駆者でもある。同時に半導体チップだけではなく、それを使ってもらうためのソフトウエア開発、AIソフトウエアの取り込みなどにも長けている（参考資料3）。

5Gの先駆者であるQualcommは5G以外の成長分野にも手を広げ始めた。同社CEOのChristiano Amon氏は、コンピュータやIoT等いくつかの技術部門にも力を入れ、これらを応用した自動車分野で、まず力を入れる。目標は現在の7倍の時価総額7000億ドルだ。すべにBMWの次世代自動運転向けのRIDEベースSoCやADASなどにSnapdragon進化版の開発で提携した。

ファブレスだけではなく、ファウンドリも成長率の高い上位企業の仲間入りを果たしている。中国SMICの39%成長をはじめ、GlobalFoundriesが34%成長、UMCは26%成長、TSMCの24%成長といずれも高い成長率を示す。

日本企業ではルネサスエレクトロニクスに34%成長が見込まれており、リストラ後の成長が実りつつある。特に、製品ポートフォリオではほとんどシナジーを生まないIDT社を買収したものの、同社の経営陣を産業向け製品のトップに据え、シリコンバレー流の経営手法を導入したことで、成長路線に乗り始めた。もはやグローバル企業になってきている。

参考資料
1. "Annual Revenue Growth to Skyrocket Among Top 25", IC Insightsニュースリリース(2021/11/17)
2. 「MediaTek、AIエンジン付き最高級の5GハイエンドSoCをリリース」、セミコンポータル (2021/11/19)
3. 「Nvidiaの最新技術会議、ハードとソフトのセット応用拡張戦略が明確に」、セミコンポータル (2021/11/16)