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中国スマホ低迷でも半導体投資は18年に3兆円強〜太陽電池は補助金打ち切り

米国が通商法301条を発動させたことにより、米中貿易摩擦激化の影響がかなり出始めている。ZTEショックは回避できたものの、これが中国のナショナリズムに火をつけた形となった。故に半導体国産化の論調が強まり、中国政府の半導体ファンドは2018年度も2000億元(約3兆円強)と拡大方向になっている。

 「いうところの補助金バラマキによる中国のビジネスモデルは、はっきり言ってかなりすさまじい。太陽電池については雨あられの補助金バラマキで、世界のPV導入量約103GWのうち、中国メーカーのシェアは80%に及ぶという状況に押し上げた。ところが、国家発展改革委員会が6月1日に補助金引き締め政策を発表した途端に、一気にクールダウンした。2018年は少なくとも前年に対し26%減になることは間違いない。さすがの中国も補助金の財源不足が目立ってきた。」

こう語るのは中国にあって電子デバイス産業新聞の上海支局長を務める黒政典善氏である。黒政氏によれば、太陽電池に続きLEDメーカーに対する政府補助金も一気にトーンダウンしているという。今後はリチウムイオン電池、液晶、半導体にバラマキが続くであろうが、「色々あって急にもうやめたから」と言ってのける中国政府の対応に右往左往するメーカーは数多いというのだ。

それにしても中国が主導して引っ張ってきたスマホの低迷ぶりはひどいものだ。中国スマホは2016年に年間4.9億台を出荷し、これがピークアウトと見られる。2017年は初めて前年比マイナスとなり、2018年に入っても1月〜5月は毎月ほぼ前年割れが続いている。なんとこの5カ月の出荷台数は、対2016年比でいえば26%も減少しており(編集室注1)、一気凋落といっても良いだろう。

さて一方、中国では2018年〜2022年に約20カ所で300亶場の立ち上げが計画されている。2018年のトータルウェーハ能力は月産652Kが予想されるが、2020年ころにはこれが3倍増の1840Kにもなるというのだ。

しかしながらよく見てみれば、最先端レベルの300亶場はサムスンの西安工場、インテルの大連工場、TSMCの南京工場などの外資系大手によるものが圧倒的に多い。中国の国産メーカーであるSMIC、XMC、Hualiなど15社はいまだ8インチがかなり多く、300丱ΕА璽呂砲靴討40nm〜90nmが主力とみられており、要するに3周回遅れというのが現実なのだ。

3D-NANDフラッシュメモリに挑戦するXMCについても現時点での量産レベルの微細化水準は、28nm/14nmを開発中という段階であり、サムスンや東芝のレベルに達するには2〜3年以上かかるとみる向きが多い(編集室注2)。

中国半導体投資ラッシュに関するセンセーショナルな報道は加速するばかりであるが、前記の太陽電池にみられるように「補助金なくなったからもうやめるもんね」、といきなりはしごを外されることがないとは決して言えないのだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注
1. 26%減という数字の根拠はわからないが、少なくともセミコンポータルが把握している数字は、2018年第2四半期では前年同期比7%減である(アジア系調査会社のCounterpoint社による)。DRAMの値上がりを受けてスマホも値上がりしたため、消費が一時的に冷えているからだ。
2. フラッシュメモリの微細化は、ロジックとは違い、10nmまでも行っていない。むしろ微細化をあきらめ3次元化に向かったため、3D-NANDでは最先端でもせいぜい19nm程度で止まっている。もしXMCが14nmまで進んでいるのであれば、最先端を行っていることになる。

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