インテルら15社が半導体パッケージングの研究組合を組織化
インテルジャパンをはじめ、オムロンやレゾナック、信越ポリマー、三菱総合研究所など15社が「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合」(SATAS)を4月16日に設立していたことを5月7日に明らかにした。そして、同日に三菱総研やレゾナックから、SATASに参加したというニュースリリースが流れてきた。設立した主語が誰なのかよくわからないようなニュースリリースとなっている。
図1 半導体パッケージング研究組合の組織図 出典:SATAS
この組織図ははっきりしないが、5月7日の日本経済新聞は、「インテルが装置や素材メーカーに共同開発を呼びかけた。日本の装置や素材メーカーと連携する狙いで、今後も参画企業を募る。経産省も最大数百億円の支援をする見通しだ」と報じている。これが事実ならインテルが組織化したことになる。
SATASは理事会と、研究組合から成り立っており、さらに理事会は、経済産業省およびNEDOと横でつながった組織図(図1)が描かれている。経産省からの補助金はNEDOを通じて提供されることになるだろう。
この組織の狙いは、ウェーハプロセスを終えた後、チップレットや2.5D、3D-ICなどを積層するSiP(System in Package)を作ることであろう。単なる後工程ではない。複数のチップとチップレットを一つのパッケージに収容するための工程を自動化に必要な技術や標準化仕様を作成することであり、装置の開発と実装、統合されたパイロットラインでの装置の動作検証を行い、2028年の実用化を目指すとしている。
SATASの理事会のメンバーは、理事長がインテルの代表取締役社長の鈴木国正氏、理事が三菱総研の全社連携事業推進本部 情報通信分野担当本部長の高橋知樹氏とSEMIジャパン代表取締役の浜島雅彦氏、そして監事が紀尾井町奉律事務所弁護士の三尾美枝子氏の4名からなる。三菱総研は、SATASの事務局となる。
SATASの組合員は50音順で、インテル、オムロン、シャープ、信越ポリマー、シンフォニアテクノロジー、SEMIジャパン、ダイフク、平田機工、FUJI、三菱総合研究所、ミライアル、村田機械、ヤマハ発動機、レゾナック・ホールディングス、ローツェとなっている。
この中に、クリーンルームの天井を走る自動化ラインに必要なFOUP搬送装置のメーカーも含まれており、前工程のようなクリーンルームの天井を搬送ロボットが走り回るような自動化システムを想定しているようだ。先端パッケージでは、ウェーハから外したチップやチップレットをパネルに搭載して、マウントや実装することになるだろう。図1に示すように、自動搬送・保管システム、キャリアとトレイ、ロードボードとフロントエンドモジュール、搬送用メインフレーム、プロセスセル、パイロットライン、という6つのテーマで技術開発や標準化が行われることになるだろう。
この6つの全てのテーマに参加が含まれる企業はインテルだけであり、インテルが主導してこのエコシステムを作ったことはほぼ間違いない。これまでIntelは3D-IC技術「Foveros」やチップ間を接続するEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)シリコンブリッジなどを独自に開発してきたが、この先の先端パッケージ技術では、おそらくハイブリッドボンディングや数µm幅の配線を実現する新リソ技術(参考資料1)など新しい材料や技術が登場する。そのためにはもはや1社だけで技術開発することには無理があることをIntelは理解したのであろう。
TSMCでさえも先端パッケージング技術のエコシステムであるTSMC 3DFabric Allianceを組織化している(参考資料2)。ここではサブストレート材料としてグループは、イビデン、Toppan、そしてユニマイクロン(旧クローバー電子工業)の3社と組んでいる。
ということは今回のアライアンスは、Intel vs TSMCの先端パッケージ技術の競争の舞台ともなりかねない。TSMCは昨年10月に日本企業の参加を独自に呼び掛けたが、今回のアライアンスはIntelが呼びかけ経産省も補助金を出す組織となっている。TSMCは、つくばで材料研究開発を日本企業と共に実施している。Intel vs TSMCの対立構造において、日本は漁夫の利を得ることを考えた方が良いかもしれない、TSMCがかつて日米対立から漁夫の利を得たように。
参考資料
1. 「セミコンジャパン2023、先端パッケージング技術が続出(1)」、セミコンポータル、(2023/12/26)
2. 「TSMC、先端パッケージ技術エコシステム3DFabric Allianceの詳細を明らかに」、セミコンポータル、 (2023/10/31)