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Nvidiaの時価総額が3兆ドルを超え、AIシフトが株式市場でも顕著に

先週、台湾の台北市でComputex Taipei 2024が開かれ、通常の基調講演とは別に開催日の前々日にNvidiaのJensen Huang CEOの基調講演が行われ、セミコンポータルでも報道した(参考資料1)。大会中Nvidiaは大きく注目を集め、時価総額はピーク時で3兆ドルを突破した。日本でシャープ堺工場の跡地をめぐる提案が2社から出てきた。半導体人材の育成も活発化してきた。

Jensen Huang, CEO, Nvidia / Computex Taipei 2024

図1 Computex Taipei 2024の基調講演でのJensen Huang CEO のスクリーンショット


6月7日の日本経済新聞は、Nvidiaの時価総額が5日のニューヨーク市場で3兆ドルを突破したと報じた。Apple を抜いてMicrosoftに次ぐ2位に躍り出たとしている。現在世界の主要株式市場に上場している企業の時価総額は5月末で113.9兆ドルに達し過去最高だった2021年11月16日に記録した120兆ドルに迫っている。わずか2年半の間に、当時の電気自動車(EV)やフィンテックなどのテック株からAI株へのシフトが明確になっている。

実際、EVのTesla社CEOでXのCEOでもあるElon Musk氏がNvidiaに対して、AI向けの半導体出荷をXのAI向けチップを優先するよう伝えていた、と6月5日のロイターが伝えている。これはMusk氏がTeslaよりもAIを優先していることを表している。もともとTeslaに出荷される予定だったH100チップの内1万2000個をXに振り向けるように指示していたらしい。

時価総額が上がったのはNvidiaだけではなく、クラウド事業への投資を拡大し続けているMicrosoftの時価総額も21年当時と比べ21%増に相当する5363億ドル増えたという。またクラウドやデータセンター事業に強いBroadcomも当時と比べ2.6倍の3815億ドル増えたとしている。NvidiaもBroadcomも製造を依頼しているTSMCの時価総額が15%増の880億ドルに留まっていることは不思議な気がする。


国内では、シャープの堺工場の跡地利用でIntelとソフトバンクが名乗りを上げた。7日の日経によると、Intelと日経14社がシャープの液晶工場を活用して半導体の生産技術を研究する。液晶はもはやハイテクではなくローテク産業となり、韓国でさえ撤退し始めている。Intelが狙うのはオムロンやレゾナック、村田機械などのサプライヤー14社と共に、後工程ではなく中工程というべき先端パッケージを開発する。

液晶の大型ガラス基板を用いた生産工場は、これからの先端パッケージの大型サブストレート利用と共通する技術が多い。大型サブストレートを使うのは、チップの大型化への要求が強まっているからだ。従来のモノリシックなアプローチでは半導体のレチクルサイズに限界があり、それ以上拡大すると歩留まりが悪くなってしまう。このため、大型化するためには先端パッケージ技術を使うことになる。これだとその制約は実質的になくなる。

ところが、翌日の6月8日の日経は、ソフトバンクが堺工場の跡地にデータセンターを作るということでシャープとの交渉権を得た、と報じた。6月3日にはKDDIがシャープと共にAIデータセンターを構築する方向で協議すると報じられていた。堺工場は広大な敷地に建てられているため、ソフトバンクはその6割の土地とそこに立つ液晶パネル工場や設備などを購入する考えだとしている。データセンターが使う電力は通常数十MWだが、ソフトバンクは150MWと巨大になる予定だとしており、将来は400MWに引き上げるとしているが、電力会社との協議は欠かせないだろう。低消費電力化の技術を見ていないようだ。


半導体人材の育成を巡り、ラピダスは北海道大学と人材育成と研究まで幅広く連携すると発表した。2024年中をめどに、キャンパス内に最先端半導体を評価分析する拠点を設け、早ければ25年4月にも2nmプロセスノードの半導体チップの評価分析を行うという。また、将来、ラピダスの社員が北大生の講義を担当したり、キャンパス内の評価分析施設を学生が見学したりできるようにするとしている。

ルネサスエレクトロニクスはインド工科大学ハイデラバード校と半導体分野で3年間の産学連携に関する基本合意書を締結したと発表した。インド政府は10年以上も前から半導体産業の振興を呼び続けているが、ようやく最近は民間がその呼びかけに答えるようになった。ルネサスはインドを成長機会の多い市場と捉えている。具体的にはルネサスが大学向けの授業カリキュラムの開発や同社の開発ボードを使用した体験学習や実証実験(PoC)などのプログラムを実施する。また、同大の工学学部生には同社での6ヵ月間のインターンシップ(就業体験)応募機会に加え、正規雇用を目指す機会を提供していく。

参考資料
1. 「Computexの前日、Nvidia CEOの基調講演、GPUを動かすソフトが話題に」、セミコンポータル、(2024/06/03)

(2024/06/10)
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