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11月の世界半導体販売高が前月比僅かに減、2020年に戻しの期待

年末大晦日に米国・Semiconductor Industry Association(SIA)から月次世界半導体販売高が発表され、2019年11月について$36.65 billion、前月10月の$36.75 billionから0.3%減、前年同月、2018年11月からは10.8%減というデータ内容である。10月データは12月始めの発表では$36.59 billionであったが、その後のアップデートで積み増した形である。前年同月比はこれで11ヶ月連続のマイナスとなり、史上最高の2018年に対する2019年の落ち込みぶりをあらわしている。5G、AIはじめ新分野が最先端微細化需要を引っ張って下支えし、2019年後半から着実に戻し基調にある半導体販売高が2020年に入って引き続きそのテンポを早めていくよう率直な期待である。

≪2019年11月の世界半導体販売高≫

米国・SIAからの今回の発表、次の通りである。

〇11月のグローバル半導体販売高が前月比僅かに減少−前月比0.3%減;前年同月比10.8%減 …12月31日付け SIA/Latest News

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2019年11月の世界半導体販売高が$36.7 billionに達し、前月、2019年10月の総計から0.3%減、前年同月、2018年11月の$41.1 billionに対して10.8%減、と発表した。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。SIAは、半導体製造、設計および研究における米国のleadershipを代表しており、メンバーが米国半導体販売高の約95%を占めている。

「2019年が徐々に終わっていく中、グローバル半導体販売高は引き続き昨年の総計に後れているが、来年の見通しに向けて控え目な戻しの兆しが見え始めている。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏は言う。「地域別では、Americas市場が唯一前月比で伸びているが、前年比ではAmericasへの販売高は大きく落としている。」

2019年11月の販売高は2019年10月に対して、Americasで増加、Chinaでフラット、そしてEurope, Asia Pacific/All Other, およびJapanで減っている。2018年11月に対しては、次の通りすべての地域にわたって減少している。

Americas
前年同月比 -22.3%/
前月比  2.3%
Europe
-8.0%/
-0.6%
Japan
-9.1%/
-1.9%
China
-6.0%/
0.0%
Asia Pacific/All Other
-8.3%/
-1.8%

                       【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Nov 2018
Oct 2019
Nov 2019
前年同月比
前月比
========
Americas
9.58
7.28
7.44
-22.3
2.3
Europe
3.64
3.37
3.35
-8.0
-0.6
Japan
3.39
3.14
3.08
-9.1
-1.9
China
13.82
13.00
13.00
-6.0
0.0
Asia Pacific/All Other
10.67
9.95
9.78
-8.3
-1.8
$41.11 B
$36.75 B
$36.65 B
-10.8 %
-0.3 %

--------------------------------------
市場地域
6- 8月平均
9-11月平均
change
Americas
6.40
7.44
16.3
Europe
3.27
3.35
2.6
Japan
3.07
3.08
0.5
China
12.10
13.00
7.4
Asia Pacific/All Other
9.69
9.78
0.9
$34.53 B
$36.65 B
6.1 %

--------------------------------------

※11月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/12/November-2019-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の取り上げである。

◇Global semiconductor sales decrease slightly MoM in November (1月2日付け Evertiq)

◇Global semiconductor sales continue slide-SIA reports chip sales declined 10.8% in November (1月3日付け DIGITIMES)
→Semiconductor Industry Association(SIA)発。11月の世界半導体販売高が$36.7 billionで前年同月比10.8%減、半導体売上げ減少の11ヶ月続く流れの旨。グローバル地域のすべてで販売高が前年同月比減少の旨。

2016年後半から2年あまり史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であるが、これまで通りの販売高の推移の見方を続けると以下の通りとなる。昨年11月から販売高が前月比マイナスとなって以降、12月、今年に入って急激に落ち込む経緯があらわれているが、2月以降は$32 billion〜$33 billion台に押しとどまって、8月は$34 billion台に戻すに至っている。9月は$35 billion台半ば、そして10月は$36 billion台半ばを越えて今年最高を続けて更新、11月がほぼ横ばいという経緯となっている。米中摩擦の覆いは晴れる見通しがすっきりとは依然定まらず、市場の推移には一層目が離せないところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
 
2016年 7月
 $27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月
 $28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月
 $29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月
 $30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月
 $31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月
 $31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
 
2017年 1月
 $30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月
 $30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月
 $30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月
 $31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月
 $31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月
 $32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月
 $33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月
 $34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月
 $35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月
 $37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月
 $37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月
 $37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
 
2018年 1月
 $37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月
 $36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月
 $37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月
 $37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月
 $38.72 B
21.0 %
3.0 %
2018年 6月
 $39.31 B
20.5 %
1.5 %
2018年 7月
 $39.49 B
17.4 %
0.4 %
2018年 8月
 $40.16 B
14.9 %
1.7 %
2018年 9月
 $40.91 B
13.8 %
2.0 %
2018年10月
 $41.81 B
12.7 %
1.0 %
2018年11月
 $41.37 B
9.8 %
-1.1 %
2018年12月
 $38.22 B
0.6 %
-7.0 %
$468.94 B
 
2019年 1月
 $35.47 B
-5.7 %
-7.2 %
2019年 2月
 $32.86 B
-10.6 %
-7.3 %
2019年 3月
 $32.28 B
-13.0 %
-1.8 %
2019年 4月
 $32.13 B
-14.6 %
-0.4 %
2019年 5月
 $33.06 B
-14.6 %
1.9 %
2019年 6月
 $32.72 B
-16.8 %
-0.9 %
2019年 7月
 $33.37 B
-15.5 %
1.7 %
2019年 8月
 $34.20 B
-15.9 %
2.5 %
2019年 9月
 $35.57 B
-14.6 %
3.4 %
2019年10月
 $36.59 B
-13.1 %
2.9 %
($36.75 B…今回の発表時点)
2019年11月
 $36.65 B
-10.8 %
-0.3 %

2020年の半導体業界はどうなるか。年末年始の記事より、まず中国のメモリメーカーの取り組みについてである。

◇Claims that China will begin 14nm production in 2020-Chinese chip firms expect to start 14nm production in 2020 (12月30日付け Electronics Weekly (UK))
→Yangtse MemoriesおよびChangXin Memory(前Innotron Memory)ともに、2020年にcapacityを拡大、より先端nodesに移行していく旨。

flying carsのキーワードが目に入ってくる。

◇2020 in foresight: Flying taxis, self-driving tech consolidation and other predictions (12月31日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→電子決済サービスPayPalを立ち上げ、Facebookを見つけ出し早くから投資をし、Yelp!など、次々と投資を 成功させる伝説のベンチャー・キャピタリストのPeter Thiel氏。2020年代は同氏がflying carsへの願いを果たす10年となるか?

中国の半導体製造装置への投資の読みである。

◇China to increase IC manufacturing equipment spend by $2bn in 2020 (1月2日付け Electronics Weekly (UK))
→SEMIの予測。中国メーカーの今年の半導体製造装置への投資が、昨年の$12.9 billionに対して今年は$14.9 billionに高まる見込みの旨。

TSMCが引き続きApple向け独占対応、今年は5-nm半導体で臨んでいく。

◇TSMC to start 5nm chip production for iPhone in 2Q20, says report-Report: TSMC starts 5nm chip production for the iPhone in Q2 (1月2日付け DIGITIMES)
→中国語・Commercial Times紙発。TSMCが、今年後半に披露予定のiPhoneモデル用microchipsの量産を同社の5-nanometer extreme ultraviolet(EUV)プロセスを用いて始める旨。TSMCは依然、AppleのiPhone半導体に向けた唯一のファウンドリー・パートナーである旨。

年明け初日の米国株式市場は、次の通りの活況、米国発&世界に波及の回復の期待である。

◇NYダウ、一時233ドル高、主要3指数が最高値上回る (1月3日付け 日経 電子版 05:24)
→2020年最初の取引となる2日の米株式相場は続伸している旨。15時現在、ダウ工業株30種平均は前営業日である2019年12月31日に比べ233ドル59セント高の2万8772ドル03セントで推移し、12月27日につけた過去最高値を上回っている旨。中国が1日に金融緩和策を発表、同国景気が持ち直し、世界的な景気回復につながるとの期待から買いが入っている旨。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数と多くの機関投資家が運用の3考指標に据えるS&P500種株価指数も過去最高値を上回っている旨。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

「第1段階の合意」の近く署名が、米大統領補佐官から明らかにされている。

◇米高官「中国と近く署名」、貿易交渉の第1段階合意で (12月31日付け 日経 電子版 04:31)
→ナバロ米大統領補佐官(通商担当)は30日、中国との貿易交渉を巡る「第1段階の合意」について「おそらく来週までかその辺りで署名する」と述べ、両政府が近く文書に署名すると説明した旨。同氏はトランプ政権で対中強硬派の筆頭格として知られるが、中国の輸入拡大策などを盛り込んだ今回の合意内容を支持する姿勢を示した旨。

引き続き、Donald Trump大統領より1月15日にWhite Houseで署名式を開くと発表されている。続けて第2段階に向けて北京を訪れる、としている。

◇Trump says he will sign 'phase one' China trade deal on Jan. 15 at the White House-Trump: Initial US-Chinese trade deal to be signed Jan. 15 (12月31日付け CNBC)
→Donald Trump大統領が、米中"phase one"貿易合意の調印を1月15日にWhite Houseで行う旨。Trump大統領は、該合意の2番目の部分への取り組みでその後北京を訪れる旨。

◇Trump Says He Will Sign Phase-One Trade Deal With China on Jan. 15 -President adds he will travel to Beijing for talks on a broader pact‘at a later date’ (12月31日付け The Wall Street Journal)

◇Trump says US-China trade deal will be signed on January 15 (12月31日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇米中合意、15日に署名、トランプ氏が第2段階協議へ訪中 (12月31日付け 日経 電子版 23:46)
→トランプ米大統領は31日、中国との貿易交渉を巡る「第1段階の合意」について1月15日に米国で署名式を開くと発表、「後日に北京を訪れて第2段階の協議を始める」としている旨。合意文書に署名すれば世界経済の重荷となってきた米中貿易戦争はひとまず正式に休戦するが、構造問題を巡る今後の交渉は難航も予想される旨。

大統領選挙の年の2020年であり、世界情勢の推移を見遣りながら米中摩擦関連のトレースを行わざるを得ない新年早々の雰囲気がある。

【2019年の総括−続編】

前回に続きいろいろな切り口であるが、MEMSおよびセンサ業界での2019年におけるイベントである。

◇5 Defining Moments and Trends in Sensors in 2019 (12月29日付け EE Times)
→2019年のMEMSおよびセンサ業界の形を作り直し、2020年に向けた道しるべとして役立つ以下のイベント:
 1. AMS acquires 59% of Osram shares
 2. Neuromorphic sensing: A brainy direction
 3. Ex-InvenSense execs form UltraSense
 4. The influence of the piezo effect
 5. At the edge

JEDEC SmartBriefの2019年間ハイライト記事が挙げられている。本週報をまとめる目からもそれぞれに重きを感じるところである。

◇A note to our readers (12月31日付け JEDEC SmartBrief 0:59)
→2019年の締め、最も読まれた記事セレクション:
 *Huawei loses big suppliers after US blacklisting (5月20日付け)
 *Infineon to acquire Cypress Semi (6月3日付け)
 *HiSilicon president says chip firm was ready for US ban (5月17日付け)
 *Intel unveils new packaging tech, pairing EMIB with Foveros (7月10日付け)
 *GlobalFoundries targets TSMC, foundry's clients with lawsuits (8月27日付け)
 *IC Insights: Top 5 semi vendors held 47% of 2018 sales (1月15日付け)
 *Reverse-engineering chips without destroying them (10月8日付け)
 *First 1TB storage chip for smartphones coming from Samsung (1月30日付け)
 *Sony unveils an LPWAN that can transmit for 60+ miles (5月29日付け)
 *Unknown property found in the Hall effect (10月14日付け)
 *Arm, Micron, Xilinx CEOs expound on Moore's Law, chip future (7月19日付け)
 *Applied Materials exec discusses Moore's Law, process variation (2月4日付け)

中国のIC設計業界の昨年の伸びっぷりである。

◇China IC design industry output value set to surge-China's IC design output value rises 22.5% in 2019 to $43B (1月2日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Researchの評価。昨年の中国におけるIC設計業界のoutput valueが、22.5%増の$43.06 billion。

【HuaweiのIC設計部門】

Huawei社内向けのIC設計部門として知られるHiSilicon Technologiesであるが、もはやそうではなく一般オープン市場に向けて4G通信用半導体を出していくとのこと。今後の動き、展開に注目である。

◇HiSilicon No Longer Huawei's Captive Chipmaker-HiSilicon looks beyond Huawei, sells chips externally (1月1日付け EE Times)
→1)HiSiliconが、オープン市場での4G通信用半導体を打ち上げ、Huawei社内のIC部門が業界に向けてたくさんの半導体を外部供給していくと公式にしている旨。
 2019年10月に開催された深センelectronics show、ELEXCON 2019にて、2019年4月に設立されたHuaweiの完全子会社、Shanghai HiSiliconがオープン市場での4G通信用半導体を打ち上げ、これがHiSiliconがもはやHuaweiのcaptive半導体メーカーでないことを示すHuaweiおよびHiSiliconの最初の事例の旨。
 2)Huawei TechnologiesのIC設計部門、HiSilicon Technologiesが、オープン市場での4G通信用半導体を提示、親会社への独占的サプライヤとしてのビジネスモデルを打破している旨。HiSiliconは製品portfolioを調整、5G, artificial intelligence(AI), およびinternet of things(IoT)の統合におけるopportunitiesに対応の旨。

【人工知能(AI)関連】

AI関連にはいっそう目を向けざるを得ないが、年末年始での2点である。進化の度合いの把握に目が離せないところである。

◇AIMotive Starts Shipments of aiWare3-Hardware neural network accelerator can be deployed in an SoC or standalone for automotive vision AI engines. (12月30日付け EE Times India)
→ソフトウェア&ハードウェア・ベースautomated運転技術開発のAImotive(ハンガリー)が、同社aiWare3 neural network(NN)ハードウェア推論エンジンintellectual property(IP)の同社の先導顧客向け出荷を開始の旨。

◇Googleの最新AI、読解力も人間超え、驚異の学習法−超人間・万能AI(上) (1月1日付け 日経 電子版 02:00)
→画像認識や音声認識などに続き、文章読解の分野でも人工知能(AI)が人間の平均レベルを超え始めた旨。米グーグルの新AI技術「BERT(バート:Bidirectional Encoder Representations from Transformers)」が壁を突き破った旨。検索や情報収集などの効率が飛躍的に高まる可能性が出てきた旨。

【ライセンス契約復活】

英国・Imagination Technologiesが、Appleとの新たなlicensing合意を発表している。画像処理プロセッサ(GPU)を長年iPhoneに提供していたImaginationであるが、Appleが一方的にライセンス契約の破棄を通知してきたのが2017年。それ以来の関係復活となる。

◇UK chip group Imagination Technologies strikes new Apple deal (1月2日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→英国半導体メーカー、Imagination Technologiesが、Appleと新たなlicensing取引に到達、両社の間の以前の合意を止めにする決定により活動できなくなってから約3年の旨。

◇Imagination and Apple sign new agreement-Apple inks new IP licensing deal with Imagination (1月2日付け New Electronics)
→Imagination Technologiesが、Appleとの新たなmulti-year licensing調印を発表、AppleがImaginationのIPへのアクセス継続が行なえる旨。

◇Imagination Reignites Relationship with Apple-Apple returns to Imagination Technologies for GPUs with a fresh multi-year license agreement. (1月3日付け EE Times India)

【Baiduの車載関連プラットフォーム】

中国・Baidu(百度)のValet Parking(ホテルやレストランの駐車サービス)自動化、および自動運転プラットフォームの取り組みで、XilinxのFPGAsが以下の通り取り入れられている。

◇Baidu Bets on FPGAs for Automated Valet Parking (1月2日付け EE Times)
→Baiduのautomated valet parking(AVP)に向けた車内computingプラットフォームがこのほどproduction-readyであり、GPUsではなくXilinxデバイスで構築の旨。同社のApollo Computing Unit(ACU)は、特にAVPに向けて設計されている旨。

◇Xilinx SoC FPGA Powers Baidu's Apollo Driverless Platform-Baidu's Apollo self-driving platform is based on Xilinx SoC-The Apollo self-driving platform leverages Xilinx’s Zynq FPGA system-on-chip for applications such as highway driving and valet parking. (1月2日付け Electronic Design)
→Baiduのopen-source self-drivingプラットフォームの最新版は、Xilinx Automotive Zynq UltraScale+ MPSoC field-programmable gate array(FPGA)を取り入れの旨。Armプロセッサが、advanced driver-assistance systems(ADAS)および自動運転車用にFPGA fabricに織り込まれている旨。


≪グローバル雑学王−600≫

米中の摩擦、対立、そして最終決戦の行き着くところは台湾になると、

『ファーウェイと米中5G戦争』
 (近藤 大介 著:講談社+α新書 711−2 C) …2019年7月18日第一刷発行

より2回にわたって台湾の生命線の重みに迫っていく2回目である。ファーウェイ、ホンハイときて、トライアングルのもう1角を占めるのが、台湾の半導体ファウンドリー最大手、TSMCという構図が示されていく。ファーウェイの任正非(Ren Zhengfei)CEOとホンハイの郭台銘(Terry Gou)会長は「老朋友」(旧い友人)の仲、そしてTSMCの張忠謀(Morris Chang)前CEOと郭台銘会長は台湾では「長年の盟友」、と「中華民族の隆盛」を願うことでは同じ志とうかがえるところである。ファーウェイも半導体製造をTSMCに委託、アップルを抜いて最大の顧客になりつつあるとのこと。台湾との「一国二制度による統一」を成し遂げたい習近平政権、一方、徹底的に中国の押さえ込みを図るトランプ政権、台湾の帰趨がまさに生命線という重みが伝わってくる。
米中摩擦は「第1段階の合意」署名を控え、今は緩和の空気が見られているが、今後の展望は依然予断を許さないところである。


第6章 米中の「最終決戦場」台湾 …2分の2

■ファーウェイ5G戦略の生命線
・中国にとって増したホンハイの重要性
 →ホンハイは、ファーウェイの製品に関しても主力工場
 →ホンハイは2019年に入って、経営の軸足をアップルからファーウェイに移し始めていた
・ファーウェイの5G戦略の「2つの生命線」
 →ホンハイの工場での製品の生産
 →TSMC(台湾積体電路製造)の工場での半導体チップの生産
・ファーウェイ製品の約半分は、子会社のハイシリコン(海思半導体)が、製品の心臓部となるコアチップを設計
 →TSMCが受託生産、最新型のチップは台湾の新竹、一世代前のチップは上海と南京工場で生産
 →半導体生産に関する先端技術は、TSMC以外には、世界のどこも持ち合わせていない
・「ファーウェイ製品」とは、実際には「ファーウェイ+ホンハイ+TSMC」の合作と言っても過言ではない
 →もしくは、「中国+台湾」の合作と言っても
 →ファーウェイにとって、もちろんアメリカや日本企業も重要だが、製造面において生命線となっているのは、ホンハイとTSMC
・2019年上半期、TSMCのウェーハ投入枚数は、ファーウェイがアップルを逆転した
 →最大の顧客はアップルからファーウェイに変わりつつある
・5月16日にアメリカから「エンティティ・ショック」
 →だがTSMCは「ファーウェイとの取引を停止しない」と宣言、ファーウェイおよび中国政府が安堵

■台湾を制する者がハイテク戦争を制する
・ファーウェイとともに5Gを発展させたい中国;ファーウェイを潰して中国の野望を打ち砕きたいトランプ政権
 →ともに、ホンハイとTSMCが、決定的に重要
 →米中ハイテク覇権戦争は、「台湾を制する者が制する」
・TSMCは「半導体の父」と呼ばれる張忠謀(Morris Chang)が1987年に創業した世界最大のファウンドリー
 →1931年に浙江省寧波で生まれた張忠謀
 →18才で訪米、フォード自動車、テキサス・インスツルメンツなどを経て、1985年に台湾工業技術研究院長に就任
 →1987年、台湾工業技術研究院とオランダのフィリップス社が提携して創業したのが、TSMC
 →足かけ32年にわたってTSMCに君臨し、同社を世界一のファウンドリーに
・TSMCの2018年の連結売上高は、1兆314億台湾ドル(約3.6兆円)、従業員数は約4万8000人
 →世界全体の約半分の半導体を受託生産
 →台湾は日本と並んで「スマートフォン業界の負け組」と言われるが、内部の半導体に関しては、完全に勝ち組
・郭台銘会長と張忠謀会長
 →まさに性格も経営手法も対照的、台湾では「長年の盟友」
 →年齢差19才の両者は、互いに敬意を抱きながら、台湾のIT産業を発展させてきた
・海を挟んだ深センの任正非ファーウェイCEOを加えた「3巨頭」は互いに盟友関係にあり、一蓮托生の関係に
 →「中華民族の隆盛」という愛国的観点からも、同じ志
・トランプ政権は2018年11月1日、そんな「中台連合」を粉砕すべく、楔を打ち込み
 →米半導体メーカー、マイクロン・テクノロジーから企業秘密を盗んだとして、中国の国有企業、JHICC(福建省晋華集成電路)と、台湾・UMC(聯華電子)、および台湾人3人を産業スパイ容疑で起訴
 →JHICCは、2016年2月に、習近平主席のかつてのお膝元、福建省に設立、DRAMなどを自前で生産するための国有企業
・2015年5月に中国政府が制定した「中国製造2025」
 →ICチップなどの「革新的基礎材料」の国産化率を、2025年までに70%に引き上げ
 →SEMI(国際半導体製造装置材料協会)によれば、2017年の中国のICチップの国産比率は14.0%に過ぎない
 →この点が、中国の5G戦略のアキレス腱になってくると見て、アメリカは急所を突いた
 →UMCはJHICCとの提携を縮小、アメリカの「中台分断戦略」は、成功を収めたことに

■ハイテク覇権と台湾統一
・習近平政権としては、ホンハイとTSMCを味方につけることによって、台湾を取り込みたい
 →そのための最善策は、習近平主席の「悲願」である台湾統一を早めること
 →ホンハイもTSMCも北京の意のままに
・習近平が共産党総書記になったのは2012年11月、国家主席に就いたのは2013年3月
 →それ以後、一貫しているのは、台湾統一に懸ける熱意
・2019年1月2日には年明け早々、人民大会堂にて「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念式典を行い、熱の入った演説
 →改めて台湾に対して「一国二制度による統一」を強く促した
 →資本主義の制度を50年間維持するという条件で、統一を果たそうというもの
・1972年に、アメリカと中国は国交正常化交渉に入ったが、実際に国交正常化を果たしたのは、1979年の元日
 →台湾の扱いについて、米中が折り合わなかったから
・2018年3月の全国人民代表大会で、習近平主席は、自らの国家主席の任期を撤廃する憲法改正を行った
 →私(著者)の直感:習主席は、どうしても自分の手で台湾統一を成し遂げたいのだということ
・2015年11月、当時の馬英九台湾総統と、シンガポールで電撃的に中台トップ会談
 →ひとえに国民党の候補を、台湾総統選挙で勝たせるため
 →だがあろうことか、記録的大差で民進党の蔡英文候補に敗れてしまった
・郭会長の持論は、「台湾をAIの島にする」こと
 →台北=5G都市
  南投=自動運転車都市
  台東=遠隔教育・医療都市
  新竹=研究開発センター都市
  台中=ロボット都市
  高雄=クラウド都市
・郭会長は常々、強い「中台統一」への思い
 →5月6日の記者会見でも、意味深な発言
  …「自由と民主は前へ進んだが、経済がついて行かず、後れを取っている。だからいまこそ経済を前へ動かす人間が必要なのだ」
 →台湾を「政治体」ではなくて「経済体」に変えるとも捉えられる
 →香港と同様の「一国二制度」による統一
・仮の話:もしも習近平主席と次期台湾総統が、電光石火で「統一合意書」にサインしてしまえば、一人の血も流さずに即日、台湾統一が成し遂げられる
 →中国が秘かに目論む「クリミア方式」の「無血統一」
・中国が台湾を統一した瞬間に、米中ハイテク覇権戦争は中国側が勝利する
 →21世紀の世界の覇権が、アメリカから中国へと移行していくことを意味
・だが「一国二制度」の「先輩格」、香港は2019年夏、反中感情を爆発させた
・トランプ政権の「軍事強硬派」は、徹底的に中国を押さえ込みにかかろうとしており、その「発現」がファーウェイ潰しとも言える

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