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ラピダス、国内初の大型ファンドリ工場!〜建築面積が東京ドーム1.15倍〜

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ニッポン半導体の国家戦略カンパニーともいうべきラピダスは、いよいよ本格的にテイクオフの時を迎えた。北海道千歳市の用地100万m2に建設される新工場は、1棟目IIM-1の建築面積は5万4000m2であり、東京ドーム1.15倍の広さに匹敵するのだ。2025年の試作ライン稼働に向け、工場建設は急ピッチで進められる見通しだ。

泉谷渉の視点

ラピダスは、言うところの日の丸半導体の復活を目指したものではない。その背景には、これまで16兆円を投入し、半導体王国を目指している中国の存在がある。仮に中国が台湾に侵攻すれば、世界最先端のプロセスを持つTSMCの主力工場やUMC、Powerchip、Winbondなどの台湾半導体産業が根こそぎ中国の管理下に置かれてしまう。こうなれば、どうしてもTSMCを上回る世界の超最先端工場を日本国内に設ける必要があるのである。

日本と同盟を組んでいる米国のバイデン政権がラピダスに多大なる関心を持ち、支援しているのはそのためなのだ。実際のところ、ラピダスが目指している2nm以下のプロセスは、米国IBMの技術を導入し、「GAA(Gate All Around)」という画期的な立体構造のトランジスタで、ナノシート構造を採用している。一方、ベルギーの最先端技術研究機関「imec」とも協力覚書調印を行っている。このことで、EUV露光技術の開発にも道が開けている。つまりは、日米欧の共同で立ち上げるのがラピダスの巨大工場なのである。

第1期目ともいうべきIIM-1は4階建て、高さ31m、延床面積15万9000m2と大型スケールになる。周辺には変電施設、水処理施設、ポンプやガス供給を行う施設も併設されるのだ。2nmレベルの最先端半導体の量産は27年に開始される予定であり、事業が軌道に乗れば、当然のことながら2棟目以降の建設も視野に入っている。ちなみに、工事を請け負うゼネコンは鹿島建設であり、TSMC熊本新工場もまた鹿島なのである。

ラピダスの投資額については、明らかにはされていない。しかし最低でも5兆円、最大で10兆円という話も出てきている。そして重要なことは、ラピダスというカンパニーは、国内初の大型シリコンファンドリ工場を想定していることだ。生産品目は、いわゆる専用IC(ASIC)であり、AI、自動車などに使われる最先端デバイスを想定しているようだ。多品種少量で徹底的にカスタマイズされた最先端半導体で抜け出すという作戦であり、いわゆる汎用量産は一切考えていない(編集注1)。言い方を変えれば、現在の半導体の主要アプリであるスマホ、パソコン、液晶テレビなどはまったく眼中にないのだ。

ラピダスを率いるトップである東哲郎会長は感慨を込めて以下のように語っている。「ラピダスは世界最強のニッポン自動車産業の進展に貢献する半導体を多く作っていきたい。そしてまた、生成AIに代表される人工知能向けの半導体もウォッチしていく。後工程の3Dパッケージングにも注力していく」。

ラピダスの新工場は、設計開発支援棟、前工程棟、後工程棟をすべて備えており、文字通りの完全一貫生産という意味では、世界初の事例となるのである。もちろん、この成功を危ぶむ声も多い。しかし世界における日本の半導体シェアが8%(編集注2)まで後退している現状にあっては、伸るか反るかの勝負に出るしかない。東氏は、将来的には株式上場、つまりはIPOや第三者割当増資による資金調達も十分に考えられると見通している。ニッポン半導体の夢を乗せたラピダスのテイクオフを心から祈ろうではないか。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉


編集注
1. ファウンドリビジネスは、TSMCにせよUMCにせよ、顧客(ファブレス設計やシステム業者)からの注文でチップを製造するため、汎用品というよりもともと専用品に近い。汎用品のメモリはいまだにIDMが製造している。QualcommやAppleのAPUチップはやはり専用品だが、数量の出るスマホ専用製品といえる。
2. 米半導体工業会(SIA)が発行している最新のSIA Factbook 2023によれば、世界半導体市場における日本企業(日本に本社を置く企業)のシェアは、2021年の10%から2022年は9%に落ちた。8%までは落ちていない。21年の1ドル109.75円から22年には131.50円と急速に円安になったことが大きい。ドルで表示される国際競争力から見ると円安は極めて不利である。ちなみに日本の半導体メーカーが初めて世界のトップに立った1985年はプラザ合意の直後に円高が急激に進んだことと深く関係している。

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