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高まる九州シリコンアイランドの価値〜人材育成強化、国内生産43%シェア

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九州シリコンアイランドの始まりは、1967年7月の三菱電機による熊本新工場の稼働である。その後、世界一のDRAM工場となった九州日本電気の設立、これまた世界一のメモリ工場と言われた東芝大分工場の進出などが相次ぎ、九州エリアは半導体産業の集積を加速してきた。

ひと時代前は九州シリコンアイランドの国内生産に占めるシェアは約3分の1と言われた。しかしここに来て、この生産シェアは大きく引き上がっており、全国内生産の43%が九州に集中しているのである。半導体デバイスメーカーを含めて、装置産業、材料産業などを加えての半導体関連産業の集積は、1000社以上にもなっているのだ。

中でも突出して生産額が多いのが、熊本である。それは何と言ってもソニー半導体の本社工場が置かれる熊本TECの存在が大きい。また、三菱電機の一大量産工場であるパワーデバイス製作所熊本事業所の活躍もある。そしてかつての九州日本電気の後を引き継ぐルネサスセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本川尻工場も、車載向けマイコンの量産に勤しんでいる。

福岡県は、あまり半導体が集積していないと思っている人は多いが、それはとんでもない間違いだ。福岡県下には、世界トップレベル企業を含む半導体関連の400社が立地しており、半導体分野の研究開発支援施設も多い。こうした強みを活かして「福岡県グリーンデバイス・生産拠点協議会」が発足した。ソニーグループ、三菱電機をはじめとするデバイス産業と、九州大学などと連携し、技術開発や企業誘致、人材育成などに取り組むのだ。ここで重要なことは、半導体拠点化を加速する福岡が、カーボンニュートラル時代に対応したグリーンデバイスを掲げたことである。もちろんロボット世界一の安川電機などもこの運動論には協力する意向である。

大分県には、ソニー大分TEC、ジャパンセミコンダクター大分、大分デバイステクノロジー、アムコー・テクノロジー・ジャパンが頑張っている。長崎県は、ソニー長崎TECをはじめ、イサハヤ電子、メルコアドバンテストデバイスがある。佐賀県には、佐賀エレクトロニックスがあるが、これは新日本無線の子会社である。日清紡ホールディングスが2021年2月、グループのマイクロデバイス事業を担当する新日本無線とリコー電子デバイスを事業統合したことで、さらなる拡大が進んでいる。

鹿児島県には、ソニー鹿児島TECがあり、かつてのヤマハ鹿児島であったフェニテックセミコンダクター鹿児島工場がある。宮崎県には、かつて宮崎沖電気であったロームグループのラピスセミコンダクタがある。ロームは、福岡にもSiCを担当するロームアポロ筑後工場や、ロームアポロ行橋工場を持っている。宮崎においては、独自の存在感を持つ旭化成マイクロシステムや吉川アールエフセミコンもいるのだ。

そしてまた、装置産業においても、熊本には国内ナンバー1の半導体製造装置企業である東京エレクトロン、ナンバー2のSCREENが存在し、CMPで世界2位の荏原製作所、マスフロコントローラーで断トツの世界シェアを持つ堀場製作所も工場拡張の一途である。そしてまたここに来て、フォトレジストでトップクラスの東京応化工場も熊本の拡張を決めている。鹿児島には、真空装置で圧倒的に強いアルバックの工場群が林立している。

九州経済産業局は、台湾TSMCの熊本工場進出を機に、半導体関連の人材育成を目的とした産学官連携組織を近々に立ち上げるのだ。そしてまた、九州エリアの高専の全てに半導体の科目を設けるという動きも出ている。デバイスと装置、材料がクロスオーバーし、なおかつ九州北部に集結するトヨタ、日産、ホンダ、さらには広島マツダなどの自動車企業とも連携が取れる九州シリコンアイランドの付加価値は、いやが上にも高まっていくのであろう。

株式会社産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

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