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「2nmプロセスでも他社には負けない」―TSMC 社長がすべての質問に答えた

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先月(2023年10月)開催された台湾TSMC2023年第3四半期決算説明会で、CFO による同四半期の業績説明(参考資料1)に続いて、同社CEO兼社長の魏哲家(C.C. Wei)氏(図1)は、世界中の著名証券会社の10名の機関投資家の多種多様な質問に即答した。長時間に及ぶ会見のため、その様子はほとんど報道されていないが、TSMCの実像を知るためにとても興味深い内容が含まれているので、本欄で実況しよう。それにしても、TSMCのトップは、全社の状況をすべて把握しており、どんな質問にも即答したことに感心させられた。

TSMC CEO兼社長のC.C.Wei氏/TSMC

図1 TSMCの最高経営責任者(CEO)兼社長のC.C.Wei(魏哲家)氏 元Chartered Semiconductor VP, 米Yale 大学電気工学Ph.D 出典:TSMC経営陣紹介サイト


Q(機関投資家たち): 景気は底を打ったと見ているか?
A(C.C.Wei CEO): 今(2023年10月)が景気の底とは言い切れないが、現状から推測すると底に非常に近いと思う。スマートフォンやPCの在庫調整が終わる兆しがみられるものの、顧客の慎重な在庫管理や中国の需要低迷がみられるために、必ずしも力強く回復するとは言えないだろう。

Q: 米国政府は、先日、AIチップの台中輸出規制を強化したが、TSMCへの影響はどの程度あるか?
A: これまでのところ、TSMCへの影響は限定的であり、管理可能なレベルと判断している。短期的および長期的な影響については現在精査中である。

Q: TSMCは3カ月前に、2023年の売上高(ドルベース)が前年比10%減のガイダンスを発表したが、第4四半期の暗黙のガイダンスはやや改善されているように感ずる。その理由は?
A: N3(3nmプロセス)の需要が多く、それに応えるために増産したからである。この傾向は来年も続くだろう。


車載半導体は調整局面を経て2024年に再び成長

Q: 第3四半期に自動車向半導体の出荷額が減っているが、なぜか?
A: 自動車業界からの需要は、過去3年間にわたり非常に好調だった。そして今日では、自動車向け需要はすでに2023年後半に調整モードに入ったととらえている。EVは、ますます増加し、自動車はますます新たな機能が追加されるため、自動車需要は、2024年に再び増加すると予測している。

Q: 7nmデバイス需要が昨年比半減してしまったが、今後の見通しは?
A: 私たちの当初の予測を下回っているのは事実である。10年間でスマートフォンの需要が14億台から11億台に劇的に減少した。これがN7の利用率に影響し、大手顧客の1社が製品の導入を遅らせた。しかし、消費者向け、RF向けなどからの追加の特殊需要で7/6nmの生産能力を埋め戻すことに自信を持っている。今後数年で健全な利用レベルに戻るとみている。それは私たちが経験してきた状況と非常に似ているからだ。それは何かと言うと、2018/19年時点で、28nmプロセスはしばらく十分に活用されなかったが、その後28nm用にいくつかの特殊技術を開発し、それをさらに拡張することに成功したということである。


2nmでもTSMCはIntelには負けない

Q: Intelは2nm(Intel 20A)プロセスでTSMCに追い付き、追い越す計画を立てており、このままではTSMCは2nmのシェアをIntelに奪われてしまわないか?
A: そんなことはない。私は他社を過小評価や無視するわけではないが、当社の内部評価によると、当社のN3Pは、Intel 18A(=1.8nm)と同等のPPA (Power, Performance, Area=消費電力、性能、チップ面積) を実現している。成熟度でもN3PがIntel 18Aに勝っている。2025年に導入するN2は、当社のN3PやIntel 18Aよりも技術的に高度であり、業界最先端の技術である。

Q: データセンタ―向けAIチップの需要が成長してきたが、エッジデバイスにAI関連の需要の見通しは?
A: スマートフォンやPCなどのエンドデバイスへのAI機能を追加する顧客の活動ががいくつか見られる。TSMCはそれを下支えすることを望んでいる。これは今始まったばかりであり、今後ますます活用されると思われる。


TSMCはすべての顧客をサポートする

Q: 顧客がカスタムAIチップを独自開発しようとしているがTSMCビジネスへの影響は?
A: 顧客がAIアプリケーションのすべてのタイプのCPU、GPU、AIアクセラレータまたはASICの開発をするか否かとは無関係に、これらすべての大きなサイズのチップ(レット)と強力なファウンドリ設計エコシステムをサポートするため、そして安定した歩留りを実現するため、最先端のテクノロジが必要となる。これらすべてがTSMCの強みである。当社はすべての顧客をサポートし、市場の要求の大部分に対応でき、収益をあげられる。

Q: Appleやハイパースケーラーが社内に半導体設計者を抱えて、ASICサプライヤーを介さずに直接TSMCに製造依頼することをどのようにとらえているか?
A: 特定の顧客に関するコメントは控えるが、私たちはどのような顧客もサポートできる体制を整えている。


シリコンフォトニクスや先端パッケージングにも注力

Q: TSMCはシリコンフォトニクスについてどのようにとらえているか?
A: シリコンフォトニクスは、大量のデータを収集する必要がある分野で重要性が高まっている。エネルギー効率の高い方法で処理および転送される。シリコンフォトニクスはその役割に最も適している。TSMCが取り組んでいる最も重要なことは、複数の大手顧客と協力して、この分野のイノベーションをサポートしているということである。技術の開発と能力の構築にはまだ多くの時間を要する。需要は徐々に増加しているととらえている。


微細化と先端パッケージング両方で業界をリード

Q: 微細化にはコストがかかるので、先進パッケージングにもっと依存したほうが良いのではないか?
A: 先進パッケージの採用は、微細化にコストがかかるのを回避するためというわけではない。システムの性能を向上させ、消費電力を低減するためである。もちろんコストは考慮すべき点の一部ではあるけれども。TSMCは、最先端の微細化技術と高度なパッケージング技術の両方で業界をリードするソリューションを提供していく。

Q:  SoIC (System on Integrated Chips)の見通しは?
A:  SoICは、今年から収益を生み出し、今後数年間で急速に成長する高度なパッケージングソリューションの一つになる見込みで、注力している。

Q: CoWoSの生産能力増強の見通しは?
A: 私は3カ月前に、2024年末までにCoWoSの生産能力を2倍にすると言ったが、需要が急増しており、現在2倍以上に増やすために懸命に取り組んでいる。供給が需要に追い付いていないのが現状だ。2023年から2024年にかけて生産量は2倍以上になる見込みだが、この傾向は2025年も継続するだろう。

なお、同氏は、質疑応答に先立って、同社の世界進出戦略について(熊本への工場進出を含め)顧客のニーズと各国政府の補助金次第だと述べた。そして海外工場であっても、粗利益率53%以上の業績を上げ株主価値を最大にする目標達成は必達事項だとした。熊本では、すでに800人を現地採用し、装置搬入を始めており、予定通り2024年後半に量産開始すると述べた。

参考資料
1. 服部毅、「TSMCの2023年第3四半期売上高は前四半期比14%増、3nm需要がけん引」、マイナビニュースTECH+ (2023/10/20)

Hattori Consulting International/国際技術ジャーナリスト 服部 毅

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