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メモリ不況期に入った、Micron・Samsungが厳しい見通し示す

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なぜか新聞では報道されなかったが、Micron Technologyの2022年度第4半期(6月2日〜9月1日期)の決算では前年同期比23%減の売上額になり、次の四半期見通しでは同45%減の42.5億ドルと大きく下がる見通しとなった(図1)。メモリ不況に入ったといえそうだ。Samsungは不況期でも投資すると語り、投資意欲はそれほど下がっていない。日立ハイテクは韓国・台湾威に拠点を設ける投資を行う。

図1 Micron Technologyが発表した2022年度第4四半期(6/2〜9/1期)の見通しと実績次の半期はもっと落ちそうだ 比較の対象にファウンドリ2社は30%以上の成長で好調 出典:各社の決算発表をセミコンポータルがまとめた

図1 Micron Technologyが発表した2022年度第4四半期(6/2〜9/1期)の見通しと実績次の半期はもっと落ちそうだ 比較の対象にファウンドリ2社は30%以上の成長で好調 出典:各社の決算発表をセミコンポータルがまとめた


Micron Technologyは9月29日、22年度4Qの売上額が前年同期比23%減の66.4億ドルだったと発表した。ちょうど3カ月前に、同社のこの四半期見通しが同13%減72±4億ドルと発表しており、今回の実績では見通しを逸脱するほど低い結果になった。Micronはさらに次の四半期見通しでも前期比で36%減となり、前年同期比では半減近くになる。Micronは、DRAMビジネスが全体売上額の72%、NANDフラッシュは同25%という構成のメモリメーカー。しかもSamsungやSK Hynixと違い、次の四半期の売上額の見通しを常に発表している。このため、これらの企業がどの程度の業績見通しなのか、はっきりしていないが、Samsungも「足元で半導体市況は悪化している」という認識を示している(9月28日の日経産業新聞)。メモリ不況は間違いなさそうだ。

Samsungは、「今年の4~5月に急激に半導体市況が変わった。下半期も良くない、来年も良くなるモメンタム(勢い)は見えない」と述べたコメントを日経産業は掲載している。しかし、長期的に半導体は成長産業であり、「市況と関係なく一貫して投資を継続する」と9月28日の日経産業で述べている。ソウル近郊の平沢事業場で、総面積約300万平方メートルに6棟の巨大な製造棟を建てる計画で、3カ所目の製造棟の稼働を発表し、4棟目の建設工事も始まったとしている。

メモリを大量に消費する応用はパソコンとスマートフォンであり、この2大民生機器は出荷台数が落ち続けている。このためメモリは間違いなく景気後退期に入る。しかし、半導体全体が不況下といえばそうではない。メモリの使用数が増えているデータセンター需要も落ちているとはいえ、まだプラス成長で推移しているようだ。図1で示した数字は、ファウンドリ大手TSMCとUMCが毎月発表している売上額の数字をMicronの四半期に併せて計算し直したものである。これによるとMicronが6~8月期に前年同期比23%もマイナスだったのに対してファウンドリは共に大きくプラス成長している。それぞれ同41%増と同38%増であり、ファウンドリにはまだ影響は大きく出ていない。

これまでも例えば、2017年、18年のメモリバブルの後の2019年のメモリ不況でも、メモリは40%~60%という大きな成長と大きな衰退を表したが、ファウンドリの落ち込みはそれほどでもなかった。また、民生と産業用でも大きく異なる。例えばルネサスエレクトロニクスは、次の四半期(10月末頃発表される22年の第3四半期)は成長すると見ており、景気後退期に気を引き締めると述べているものの、メモリほどの落ち込みはなさそうだ。

半導体産業は長期的には成長産業であり、山谷を繰り返すが、底に来た年の産業規模でさえも、その前のピークよりも次の底の方が必ず高い、という特長がある。山が高ければ谷も深いと思われがちだが、前の山よりも次の底の方がむしろ高いのは成長産業だからである。この特徴を掴んでいない企業が結局、半導体は衰退すると間違った思い込みをしてしまったのである。

現在は、長期的に成長産業であることを誰も疑わないため、来日中のハリス副大統領は、日本の半導体製造装置や材料メーカーの幹部と会合を持ち、米国への投資を呼びかけたと29日の日経は報じている。また、28日の日経は、Intelの副社長とのインタビュー記事を載せ、Tower Semiconductorとの合併作業が終わると、日本にもファウンドリ製造工場を持つようになると述べている。また日本との提携の機会を模索しているとも語っている。

日立ハイテクは、顧客の多い台湾と韓国に半導体製造に使う測長SEMやFIB(集束イオンビーム)、エッチャーなどの装置を生産しているため、次の技術開発を進める「協創拠点」を2つの地域に設立する。2拠点で合計200億円を投資、2024年の開設を目指す。日立ハイテクは米国のオレゴン州にも同様の拠点を9月に竣工した。

またモールド樹脂大手の住友ベークライトは、中国江蘇省にエポキシ樹脂封止材工場を建設、現地の生産能力を3割に増強すると発表した。報じた日刊工業新聞によると、土地を含む投資額は66億円で、2024年度はじめに生産を開始する予定である。

(2022/10/03)

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