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ルネサスがノキアのモデム部門を買収、グローバル化に向け大きく前進

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先週のビッグニュースは、ルネサスエレクトロニクスがノキアのワイヤレスモデム部門を買収するという発表モノだった。日本経済新聞の7月7日朝刊には赤尾社長とのインタビュー記事も掲載された。なぜ記者会見を開かなかったのか。そのインパクトの大きさを会社(あるいは広報部門)が認識していなかったのかもしれない。

このニュースは、携帯電話機世界最大のフィンランドノキアが持つワイヤレスモデム事業をルネサスに売却するというもの。半導体業界では国内はもとより海外でもこのニュースは注目された。

同社のプレスリリースによると、この「事業譲渡によりルネサスはGSMからLTE(long term evolution)という広範囲な通信規格に対応し、かつ高度なマルチメディア処理が可能なワンストップ型モバイルプラットフォームが提供可能となり、3G/LTE市場で有数の世界的半導体メーカーとしての地位を確立します」としている。ノキアの買収金額は2億ドル、買収には1100名の従業員も含まれる。世界標準の携帯電話の規格であるGSMから3G、さらにHSPA(high speed packet access)、そしてLTEまでカバーしているなら、ルネサスは今後、世界の携帯電話機メーカーに向けて半導体チップを売ることができる。グローバルに進出できる大きな足掛かりとなる。もちろん、ルネサスのグローバルなプレゼンスは大きく上がる。

ルネサスが狙うのは、ノキアのHSPA+/LTEモデム技術に加え、自社の持つマルチメディア技術とRF技術を組み合わせることで、強力なアプリケーションプロセッサとモデム、RFチップを3つあるいは2つのチップセットとして海外へ売ることだ。ガラパゴス化から脱却できる。さらに、発展途上国向けには低価格を徹底させるならGSM携帯電話機メーカーへも納めることができる。いずれも顧客へのメニューを増やすことで顧客の満足度を上げることができる。この買収ニュースはルネサスが大きく成長できる仕掛けになっているから、インパクトは極めて大きい。

今後の世界の携帯電話市場において、3Gの高速版であるHSPA+技術、さらにはCDMAから脱却するOFDM(orthogonal frequency division multiplex)技術をベースとするLTE、さらにその先のLTE-Advanced(日本では4Gと称している)とモデム技術は進展していくが、日本の仕様と海外の仕様とは微妙に違うらしい。携帯電話機の相互運用性(インターオペラビリティ:interoperability)に関しては日本では通信キャリヤが行ってきたが、SIMロック解除に向けどのメーカーが作った携帯電話でも相互につながるような相互運用性試験は今後マストだが、携帯各社あるいは半導体メーカーが行うようになるかもしれない。海外の携帯電話仕様の技術を押さえておけば、海外の巨大なマーケットに食い込みやすくなる。

実は、ルネサス・ノキアとの提携話は、以前ノキアとSTマイクロエレクトロニクスとの提携話と似ているように見える。2007年11月に、ノキアは自社のIC部門をSTに売却することで提携した。この提携により、3G HSPAモデム技術からRF技術、エネルギーマネジメントをSTが設計・製造できるようになり、製造したチップセットソリューションをノキアおよびそれ以外の携帯電話機メーカーにも売れるようになった。すなわち、この提携ではSTのチップのユーザーの一人がノキアであり、それを囲い込んだものでもあった。

ノキアは有力筋によると、HSPA+やLTEなどの技術を社内のプロジェクト部隊で競争させているという。このため、モデム技術を一つくらい外へ出してもノキアからモデム技術が失われるわけではない。ノキアは年間4億3000万台も生産している巨大電話機メーカー。単純に年間300日の稼働日数と仮定して300で割ると1日に144万台も生産していることになる。

ノキアは日本にも拠点を持ち10年以上活動してきたが、その主な業務は電話機をNTTドコモやKDDIなどの日本のキャリヤに売るのではなく、日本で入手できる高度な部品を調達することだった。ところが、ノキアにとって日本製部品はもはや興味が薄れてきた。日本製部品の優位性が失われ、日本に拠点を持つメリットが薄れてきたためだ。昨年、日本ノキアにおいて220名が退職したという。今や中国や韓国が部品調達の拠点になりつつある。このことは、日本の部品業界の優位性が失われつつあることを示している。このような中でルネサスが世界に販売できる商品を持つということは大いに期待できる。

(2010/07/12)

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