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QuickLogicがカスタマイズ領域だけをプログラムするCSSPで携帯用途に戦略転換

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アンチヒューズ方式のFPGAを売り物にしていた米QuickLogicが製品戦略の方針を変えた。狙う市場は携帯電話やPDA、PND(パーソナルナビゲーションデバイス)などの携帯機器。このため汎用のインターフェースを揃えながら、しかもユーザーごとにカスタマイズするプログラマブルな部分も残す。こういった方式をCSSP(customer specific standard products)と呼び、かつてのコア技術を生かしながら、今のユーザー仕様を満たしていくという、新戦略に打って出た。

かつて、QuickLogicはビアリンク(ViaLink)技術と呼ぶ、ハードワイヤードなFPGAを手掛けていた。これは、多層配線メタルの例えば5層目と4層目の間に絶縁膜としてのアモーファスSi膜を形成しておき、それらの配線をマトリクス状にクロスしておく構造を利用する。配線間に電圧をかけなければ電流は流れないが、高い電圧をかけるとアモーファスSiがショートし電流が流れる。電流の流れる、流れないを「0」、「1」に対応させる。家庭の電気ヒューズだと大電流が流れると切れてオープンになってしまうが、ビアリンク技術だとショートになるため、アンチ(反)ヒューズと呼んでいる。


QuickLogicのAndrew Pease社長
QuickLogicのAndrew Pease社長


この方式は、SRAMをプログラム素子に使う従来のFPGAに対して、セキュリティは高いが1回しか書き込めないという欠点がある。しかしながら、「この欠点は一つしかないが、1回きりという欠点が大きすぎた」と同社社長のAndrew J. Pease氏は述懐する。プログラムのやり直しがきかないため広い用途には使えない。このため軍用、ハイエンドの計測器などの市場に限られていた。もちろん、メリットはFPGAよりもあった。例えば、ローとカラムのラインが短いためSRAMベースよりも高速である、0.18μmで作るチップとFPGAの65nmプロセスチップとはほぼ同じ面積、プログラム個所がトランジスタではないためリーク電流が低く低消費電力、セキュリティが高い、などのメリットがある。

「昔のQuickLogicは利益を出していたが、市場が小さいため売り上げも小さかった。XilinxやAlteraに比べると売り上げはかなり下だった。ウォール街ではいくら利益率が高くても売り上げが小さすぎると歓迎されない」とPease氏は述べる。ビアリンク技術は低消費電力だから、市場の大きなモバイル市場に向くかもしれない。このように考えたPease 社長は、BluetoothやWi-Fi、ブロードバンド通信などが得意なBroadcom社出身だ。「アプリケーションプロセッサのコンパニオンチップという用途を狙えば、1チップのプログラマブルデバイスではなく、CSSPとして汎用性のあるカスタムチップにできる」と同氏は考えた。

このCSSPは、全面プログラム方式ではなく、半分程度プログラム方式にして残りは標準のインターフェース回路を多数搭載する。プログラム部分をカスタマイズするのだ。「BroadcomやQualcomm、Intelといった半導体メーカーはI/Oインターフェースの設計製造に2年くらいかかる。これではUSB1.0の設計が終わると時代はUSB2.0に変わってしまっているようなもの。Bluetoothも1.0から2.0に変わる。UARTも同じ」(Pease氏)。だから、CSSPという標準品を作り、ユーザーが欲しいところだけカスタマイズすれば時代の変化にもついていける。インターフェースなど標準的な回路を同社はPSB(Proven System Blocks)と呼んでいる。


Customer Specific Standard Products(CSSPs)


このほど発表した新製品シリーズには、第2世代のVEE(visual enhancement engine)機能であるVEE2.0を標準仕様とするディスプレイインターフェースを設けた製品群がある。VX4ファミリーはQualcommが使っているVESA準拠のMDDI(mobile data display interface)を備えた製品。これまではMIPI(Mobile Industry Processor Interface)DSI(Display Serial Interfaces)を備えたVX3ファミリーとRGB/EBIのVX2が第2世代製品としてあった。QualcommのMDDI以外の規格は標準化されたもの。

VEE技術はQuickLogicが開発した、暗い映像でも明るく見せる技術。特に青空をバックにした逆光のように暗くなってしまう映像に威力を発揮する。コントラストの可変範囲に渡って画素ごとにコントラスト比をダイナミックに変えることで明るくする。バックライトを調整しないため消費電力が増えるわけではない。


(2009/04/21 セミコンポータル編集室)

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