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3nmプロセスノードでTSMCとSamsungが激しく競い合う

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3nmプロセスを巡ってTSMCとSamsungが技術を競っている。TSMCは、6月に米国で開いたTechnology Symposiumで3nmプロセスノードのN3およびN3EのFinFET技術と、2nmノードのN2プロセスを発表した。SamsungはGAA(ゲートオールアラウンド)構造の3nmプロセスノードでチップ生産を始めたと発表した。

図1 Samsungが3nmノードの量産を始めたと発表 出典:Samsung Electronics

図1 Samsungが3nmノードの量産を始めたと発表 出典:Samsung Electronics


TSMCは北米で開催されたTSMC Technology SymposiumでN3とN2の先端技術を発表したが、北米には顧客が多いため世界に先駆けて発表する技術が多かった。「コンピューテイング性能と電力効率の向上がかつてないほど急速に進展している」TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は 述べており、微細プロセスノードの開発に勢いが増している。

3nmノード技術ではFin FETトランジスタのFinの数を変えることで、トランジスタ性能を変えられるように設計した。これをFin FLEX技術と呼んでいる。例えば、3本のFinと2本のFinを交互に配置した3-2Fin構成は性能優先のトランジスタ、2本のFinと1本のFinを交互に並べた2-1Fin構成は消費電力の削減を最優先したトランジスタ、そして2-2Fin構成のトランジスタはその中間の性能・消費電力を持つトランジスタ、という3種類のFinFETを揃えた。Finの数は、プレーナのMOSFETで表現するW/L(ゲート幅/ゲート長)のWに相当する。つまり電流駆動能力を高めたい、すなわちWを大きくしたい場合はFinの数が多いということになる。

これらFinの数を顧客の要求に応じて変えられるためFin FLEX技術と呼んでいる。基本的なFin FET構造を変えずにFinの数だけを変えられるようにしているため、トランジスタ特性を柔軟に変えることができる。極めて柔軟なシステマティックなトランジスタ構成といえる。

このFin FLEX技術によって、5nmノードであるN5プロセスと比べ、ロジック密度は60%、性能(速度)は18%、消費電力は34%低減するという。また整然としたトランジスタ設計技術によって、23%の面積削減ができるとしている。N3技術は2022年後半から量産に入る予定だ。

さらに進んだ2nmプロセスノードの技術N2ではFinFETではなく、ナノシート構造のトランジスタ(実質的にGAA構造)を使う。N3プロセスと比べ、性能は10~15%向上し、消費電力は25~30%削減される見込み。N2プロセスは2025年に生産を始める予定である。

TSMCはチップレットのような3D-ICにも言及しており、SoICチップスタッキング技術として2種類を紹介した。一つは、ウェーハ上のチップ実装(CoW: Chip on Wafer)を使ったSoICベースのCPU技術で、レベル3キャッシュメモリとしSRAMをスタックする。もう一つはウェーハ上に別のウェーハを重ねる実装(WoW: Wafer on Wafer)を使った深いトレンチキャパシタチップ上にインテリジェントなプロセッサを搭載する技術である。

Samsung、3nmでGAA採用

一方Samsungの3nmプロセスは量産に入ったと発表しており、GAA構造を使っているが、従来のGAA構造でみられるようなナノワイヤーではなく、2次元的に広げたナノシート構造のGAAとなっており、プレーナMOSFETのWを伸ばすために複数のナノシートを、絶縁膜を挟んで重ねている。その構造を、同社はMBCFET(Multi-Bridge-Channel FET)と呼んでいる。

MBCFETを使った3nmプロセスノードは、5nmプロセスと比べ、消費電力は最大45%削減し、性能は23%向上、面積は16%低減できるという。今回の3nmプロセスを進化させる第2世代の3nmノードでは消費電力は50%削減し、性能は30%向上、面積は35%減少するという。

Samsungは、2021年第3四半期から始めた、設計インフラの仕組みSAFE(Samsung Advanced Foundry Ecosystem)と呼ぶパートナープログラムを開始、Ansys、Cadense、Siemens、Synopsysらのパートナーの設計・検証ツールを使えるようにしている。

Samsungが提供する3nmプロセスノードの量産では、どのメーカーとファウンドリ契約したのか、さまざまなうわさが飛んでいる。そのような折、IBMが次世代Power 10プロセッサを開発、それを搭載したミッドレンジサーバーを発表(参考資料3)、前世代のPower 10プロセッサのシステムと比べ、コア数とメモリバンド幅は2倍になったと述べている。さらに、各Power10プロセッサコアにはAIモデルの性能を改善するための行列演算アクセラレータが4個集積されている。IBMの第1世代のPower10プロセッサはSamsungの7nmプロセスで製造されていたが、この第2世代のPower10プロセッサは3nmで製造されたのかどうか、明らかではないが、少なくともファウンドリはSamsungである可能性は否定できない。Samsungの製造パートナーの内の1社だからである。

参考資料
1. "TSMC FINFLEX™, N2 Process Innovations Debut at 2022 North American Technology Symposium", TSMC (2022/06/17)
2. "Samsung Begins Chip Production Using 3nm Process Technology with GAA Architecture", Samsung (2022/06/30)
3. "Announcing IBM Power10 Scale-Out and Midrange Servers", IBM (2022/07/12)

(2022/07/13)

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