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GlobalFoundriesが22nm FD-SOI技術を発表した理由

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GlobalFoundriesが16/14nm Fin FET技術と同等な性能を持つ22nm FD (Fully-Depleted)-SOI (Silicon on Insulator)技術をファウンドリとして提供することを発表した。これまでSamsungと一緒に14nm Fin FET技術を開発してきただけに、なぜ今この技術なのか、同社CMOS Platforms Business部門長でシニアVPのGregg Bartlett氏(図1)が電話インタビューで答えた。

図1 GlobalFoundries CMOS Platforms 事業部門長兼シニアVPのGregg Bartlett氏


図1 GlobalFoundries CMOS Platforms 事業部門長兼シニアVPのGregg Bartlett氏


GlobalFoundriesはこれまでスマホ(AppleのiPhoneやSamsungのGalaxy)向けにSamsungのセカンドソースとして、16/14nm Fin FET技術を開発してきた。しかも、米ニューヨーク州のマルタでこのFin FETプロセスの量産を立ち上げてきた。しかし、3次元FinFET構造は、デザインコストが従来の2次元MOSFETプロセスとは異なり、安くすることが難しかった。

だから「Fin FETを補完するためにFD-SOIを開発した」とGregg Bartlett氏は語る。性能は16/14nm Fin FET技術と同じだから、コストの安いアプリケーションでこれと同等の性能を求めたのであろう。アプリケーションとして、民生用のデジタルテレビやセットトップボックス、イメージセンサ、IoT端末、ウェアラブルなどを挙げた。FD-SOI技術はウェーハコストこそバルクCMOSウェーハより高いものの、従来の2次元MOSFET技術を使えるため、トランジスタモデルは変わらず、デザインコストも下げられる。この結果、マスク数も減らせるため、プロセスコストは下がると考えた。

FD-SOI技術は、すでにSTMicroelectronicsが先行して進めていたが(参考資料1)、幸い、IBMもSOIを開発しており、GFはIBMマイクロエレクトロニクス部門を買収したため、SOI技術が手に入った。

今回開発した22nm FD-SOIプロセスのプラットフォームは、従来の28nmプレーナプロセスと比べ、チップサイズは20%減り、マスク数は10%減少したという。ファウンドリが提供している3次元プロセスを使うFinFET技術と比べ、ArF液浸リソグラフィによるマスク数は半分で済むとしている。FD-SOIは上下のゲート電圧で空乏層によるチャンネルを閉じ込めるため、リーク電流が下がるという特長を持つが、0.4V動作が可能であるという。

今回、GlobalFoundriesが提供する22nm FD-SOIプラットフォームには4つのサービス製品シリーズがある;

1.22FD-ulpプロセス 超低消費電力(Ultra-Low Power)の特性を持つFin FET代替プロセスで、標準および低価格スマートフォン向け。0.9Vの28nm HKMG(ハイKメタルゲート)プロセスに比べ消費電力は70%に削減している。
2. 22FD-uhpプロセス 超高性能(Ultra-high Performance)な用途を目指すプロセスで、ネットワーク機器など向け
3. 22FD-ullプロセス 超低リーク電流(Ultra-low leakage)のプロセスで、IoT端末やウェアラブル向け。
4. 22FD-rfaプロセス 高周波アナログ(Radio frequency analog)プロセスはワイヤレス回路を使うLTE-Aモバイルのトランシーバや高次のMIMO(Multiple input multiple output)、Wi-Fiコンボチップ、ミリ波レーダなどに向ける。

GlobalFoundriesは、これまでキーカスタマやエコシステムのパートナーと一緒に設計手法を最適化し、基本手法と高集積なIPを実証してきた。デザインスターターキットとPDK(プロセス開発キット)の初期バージョンは入手可能で、2016年後半にリスク生産を始める予定だ。

FD-SOIやFin FETのプロセスには、トランジスタ性能は上がり消費電力が下がるという特長があるが、配線による性能はFinFETプロセスよりも高いという特長がある。これはFinFETの多くは、フィンの数によって大電流を流せるというメリットがあるものの、「配線では3次元化による寄生キャパシタンスが増えてしまう。この寄生容量を駆動するため、大電流を流す必要がある。しかし、FD-SOI技術だと、大電流によるドライブは必要なく、その分、消費電力を極めて低く抑えることができる」と同氏は述べる。

さらに微細化を進める場合にもFD-SOI技術は使えるだろうか。Bartlett氏によると、14nm、10nmも可能で、22nmのキーカスタマも更なる微細化に期待しているという。Fin FETは3方向からチャンネルを囲むが、FD-SOI技術は上下の2方向からはさむ構造になっている。それでも不十分な10nm未満の時代には、4方向からの空乏層によってチャンネル層を閉じ込めるシリコンナノワイヤーなどが提案されているが、FD-SOIとFinFETの両方を使えば、トリッキーなナノワイヤーを使わなくて済む。Bartlett氏は「IBMから研究開発に携わっていたエンジニアが多く、10nm以降でも使える技術になりうる」という。

参考資料
1. STマイクロがファブライト戦略を採りながらもIDMにこだわる狙いとは (2013/02/28)

(2015/07/15)

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