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GaNの歩留まり90%や、耐圧1200Vの縦型構造など新GaNパワーFET

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GaNの歩留まりを90%に上げられる可能性のある設計手法、GaNの耐圧を1200Vまで上げてもオン抵抗が1.8mΩcm2とSiC並みに近づけることのできるMOSFETなどが試作され、GaNデバイスの常識が変わりつつある。千葉県幕張メッセで開催されたテクノフロンティア2015では、新しいパワー半導体GaNに大きな進歩がみられた。

図1 6インチGaN-on-Siで作製したGaN SystemsのGaN FET

図1 6インチGaN-on-Siで作製したGaN SystemsのGaN FET


GaNの欠陥は、下がってきたとはいえ、まだ多い。転位密度で単位面積当たり10の6乗cm-2もあり、SiCと比べると3ケタ多いという。このためデバイスの歩留まりは低く、市場に出すためには価格が高止まりになっている。普及するためにはまだ時間がかかる。こういった欠点を解消するための技術開発が相次いでいる。

細かいセル方式で歩留まりを上げる
カナダのGaN Systems社が、6インチのSiウェーハ上に形成したGaNパワートランジスタの歩留まりを上げるためのユニークなデザイン手法は、「アイランド技術(Island Technology)」と呼ばれている。これは、GaNエンハンスメント型MOSパワートランジスタを小さな小信号トランジスタに分割し、それらをつなぎ合わせた構造を持つ。元々パワートランジスタの等価回路は、小信号トランジスタを多数並列接続したものとみなすことができる。

接続の仕方に工夫があり、図2のように小さなMOSトランジスタのソース電極を表に出したセル(緑色)と、ドレイン電極を表に出した青いセルを交互に並べ、櫛型構造でドレイン、ソース配線をつないでいく。ゲートは別の端子として表面から取り出すという。たとえ、セルの一つが故障しているとしてもドレインまたはソースの配線として接続されているため、電流が少し減少するだけで不良にはならない。このため、歩留まりが90%くらいになるという。従来のGaNトランジスタなら数%しか歩留まりはなく、高コストとなっている。


図2 アイランドのセルごとにドレインかソースの電極が表に出ており、それをつなげて配線電極とする 出典:GaN Systems

図2 アイランドのセルごとにドレインかソースの電極が表に出ており、それをつなげて配線電極とする 出典:GaN Systems


パッケージングもユニークで、ボンディングワイヤーを全く使わず、広い幅のドレイン、ソースの銅配線に直接熱圧着するため、寄生インダクタンスが小さく、高速応答が可能になるだけではなく、熱抵抗も小さくできる。ちなみにdV/dtは100V/nsと極めてシャープな立ち上がり特性を持つ。耐圧は100Vと650V、電流容量は8A~250Aまで揃えている。

豊田合成は縦型で1200V実現
GaNの結晶欠陥がSiCよりも多いことは事実だが、豊田合成によると、欠陥が多くてもSiCよりは動作しやすいという。豊田合成は、まだ2インチだがGaNを基板結晶とするMOSFETを試作した。ドレイン-ソース間に結晶欠陥が100個程度合ってもMOS動作を行うという。同社は、ゲート酸化膜としてALDなどの薄膜成長で作った縦型MOSFET(図3)で、耐圧1200Vを得ている。浅いトレンチだが、GaNのFETを従来の横型ではなく、SiCと同様、縦型に試作したため、耐圧を大きくとることができた。


図3 豊田合成が開発した縦型GaN MOSFET 浅いトレンチを利用 出典:豊田合成

図3 豊田合成が開発した縦型GaN MOSFET 浅いトレンチを利用 出典:豊田合成


これまで、SiCは 1200V以上、600VまではGaNという暗黙の区分けがあったが、従来のSiCは縦型、GaNは横型であったためにGaNにおいて十分な耐圧を確保しようとするとオン抵抗を犠牲にせざるを得なかった。今回、豊田合成は、GaNのバルク結晶を作り、その上に縦方向に電流を流す構造のトランジスタを作り込むことで、オン抵抗を下げた状態で耐圧を1200Vに上げることができるようになった。図4には1200Vを超える耐圧を示している。この時のオン抵抗は1.8mΩcm2とSiC並みの小ささである。目標は0.4mΩcm2。


図4 1200Vの耐圧でオン抵抗1.8mΩcm2と低い縦型GaN MOSFET 出典:豊田合成

図4 1200Vの耐圧でオン抵抗1.8mΩcm2と低い縦型GaN MOSFET 出典:豊田合成


GaN基板の結晶成長には、Na溶液中でGaN種結晶を元にGaNを成長させていく方法を採った。GaNはSiCよりもバンドギャップが広く、絶縁耐圧も原理的に大きい。このため理論的にはSiCの理論限界よりもGaNのそれの方がさらに限界が広い。

(2015/05/27)

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