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GaN-on-Diamondウェーハをサンプル出荷

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英Element Six社がGaN-on-Diamondの4インチウェーハをサンプル出荷した。ダイアモンドの魅力は何といっても絶縁体ながら熱抵抗が極めて低いこと。このため、高周波パワートランジスタにはうってつけ(参考資料1)。熱伝導率が1600W/mKと高く、放熱性が優れているため、従来のSiCを基板とするGaNよりも性能が高い。

図1 Element Sixが発売した4インチのGaN-on-Diamondウェーハ

図1 Element Sixが発売した4インチのGaN-on-Diamondウェーハ


Element Sixは以前から、ダイアモンドウェーハを供給してきており(参考資料1)、現在4インチのダイアモンドウェーハを出荷しており、6インチも視野に入れている。今回のGaN-on-Diamondで用いたウェーハサイズは4インチ(100mm)(図1)。その製法について今回明らかにした。

GaN-on-Diamondウェーハを作製する場合、ダイアモンドの熱抵抗が低くても、GaNやそれらの界面にある層の熱抵抗が高ければあまり効果はない。通常は、ダイアモンド結晶の上にGaN層を直接成長することができない。格子定数が異なり、歪が入るからだ。このため遷移層を設ける。当初はダイアモンド-遷移層-AlGaN層-GaN層という構造だった。しかし、GaNアクティブ層からダイアモンドへ、できるだけ早く熱を逃がしたい。最近の同社はAlGaN層を取り外す構造を得ることに成功した。この結果、これまでよりもっとも低い熱抵抗を得られたという訳だ。

ダイアモンド膜は、メタルの基板上に熱やプラズマのCVD成長で作製する。この場合は多結晶になるが、実際のダイアモンドウェーハではグレインバウンダリが見えにくく良好な特性を示すようだ。例えば図1のウェーハは斜めにして目を凝らすとグレインバウンダリが見えるが、単に上から見ている限り、それは見えにくい。多結晶ではなく、単結晶を成長させる場合には、小さな種結晶を基板とするため、大口径は望めない。

ただ、GaN-on-Diamondの作製はそれほど簡単ではない。まず、GaN-on-Si基板を使い、GaN層を表面として、ガラスのついたシリコン基板をGaN層に接着する。この後、最初の基板のSiと、その上の遷移層(Si-GaN界面層)を除去したのち、GaN上の接着層を堆積する。その上にダイアンモンド層を成長させ、単なる支持層の役割を果たしてきた、2番目のガラス層-シリコン基板を削り落とす。この状態でダイアモンド-接着層-GaN層の構造ができる。実装するためにダイアモンド側をダイアモンドキャリアに搭載する。そのダイアモンドとダイアモンドキャリアの間にはセラミックの接着層を設けておく。ダイアモンド層とGaN層との間の接着層の厚さは35nmと薄い。

Element SixはCVD成長技術に20年以上の経験を持ち、この技術をライセンスするつもりはない。自社で生産してウェーハを提供する。ダイアモンドウェーハは現在600枚/月の生産量を誇るとしている。RFパワートランジスタのパッケージ材料には、熱抵抗の低さだけではなく、温度サイクルによる信頼性も確保する必要がある。このためダイアモンドとダイアモンドキャリアとの間の接着層のセラミックと、ダイアモンドとGaNの間の接着層の選択にノウハウがあるとしている。1000回以上の温度サイクル試験をクリアしているという。

参考資料
1. Element Six社、GaN-on-Diamondウェーハで熱抵抗を4割削減 (2014/06/18)

(2015/01/16)

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