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新しい形のコラボレーションを模索するアルバニーのナノテクセンター

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米国ニューヨーク市から300kmほど離れた北部の町、ニューヨーク州アルバニーにあるニューヨーク州立大学ナノテクセンターCNSEの実態が明らかになった。これは、東京新宿で開催された、国際半導体生産技術シンポジウムISSM(International Symposium on Semiconductor Manufacturing)2010の中で、同大の平山誠教授が基調講演で述べたもの。

アルバニーナノテクセンターの外観

図1 アルバニーナノテクセンターの外観


ニューヨーク州立大学アルバニー校が半導体分野で有名なのはCNSE (College of Nanoscale Science & Engineering)と呼ばれる学部である。ここが半導体産業の世界中の企業やコンソシアムと共同研究している。かつては半導体産業をマイクロエレクトロニクスと呼んだが、微細化寸法がナノメーターレベルにまで縮小してきたためナノエレクトロニクスという言い方をしている。ナノエレクトロニクス業界とは半導体業界のことを指す。CNSEでは、半導体業界と協力し技術的にも経済的にも競争力のある環境を作ろうというミッションを持つ。

かつては、研究→開発→生産、という図式の中で企業は大学にとって資金を提供してくれる顧客であった。今はこの図式を止め、企業をパートナーとして見、長期的な研究、中期的な開発、短期的な生産立ち上げ、というすべてのフェーズに渡って大学が企業と協力するという、いわばR&Dのパラダイムシフトが起きていると考えている。


研究開発のパラダイムシフト

図2 研究開発のパラダイムシフト


ニューヨーク州はもちろん資金を提供するが、その狙いは自治体としての競争に勝ち、雇用を創出することであるという。産学協同の例としては、2005年9月にアプライドマテリアルズ(AMAT)とIBM、CNSEとの共同センターに3億ドル、INVENT(海外の企業や大学との共同のナノリソグラフィコンソーシアム)に7年間で6億ドル、R&Dと製造に15億ドルのパッケージなど、産業界を中心とした資金獲得に加え、SEMATECHやビステック社の誘致にも成功した。


2005年からこれまでの主なプロジェクト

図3 2005年からこれまでの主なプロジェクト


CNSEは特にIBMと共同でいろいろなプロジェクトを持っているが、共通することは300mmウェーハの統合プロセスの研究開発である。例えば、CNSEとSEMATECHプロジェクトには、IBMのほかインテル、UMC、サムスン、グローバルファウンドリーズも加わり、CNSEとIBMのプログラムにはグローバルファウンドリーズ、東芝、チャータード、サムスン、ルネサス、フリースケールが参加している。CNSE装置プログラムは、AMAT、東京エレクトロン、ASML、ラムリサーチ、KLA、ビステック、ノベラス、日立ハイテク、荏原製作所、大日本スクリーン製造からなる。

300mmウェーハプロセスラインでは、最新の装置が150台以上設置されている。しかし、2011年には工場をもう一棟建築する予定になっており、拡張すると後工程の開発ラインを含め、250台以上の規模になる計画である。現在のウェーハプロセスラインの生産能力は、25統合WSD(wafers starts per day)であり、現実には22WSDだとしている。この25統合WSDとは、155工程17枚マスクの標準プロセスのウェーハを1日25枚投入し25枚出力するという処理能力を表す指数である。平山教授は、日本的な言い方では2000〜3000枚/月程度に相当するのではないかと述べている。

このラインでは90nmから22nmまでサポートできるとしている。リソグラフィ装置は、ASMLの1200から1700i、1950iと、線幅/線間隔(L/S) 80nm、50nm、35nmの装置を揃えている。これらのArFリソグラフィ装置に加え、さらに微細加工が可能なEUV装置(L/S=28nm)、電子ビーム露光機(L/S=10nm)も持つため、最先端の半導体開発が可能である。

これまでの公表できない半導体産業のパートナーを含め、250社・研究機関を超すパートナーと協力関係にある。さらに大学間での共同プログラムも進めている。例えば、INDEX (Institute for Nanoelectronics Discovery and Exploration)プログラムには、カリフォルニア工科大学、コロンビア大学、ハーバード大学、MIT、パデュー大学など全10校と協力している。

(2010/10/29)

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