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三洋電機、開放電圧0.743V、変換効率22.8%の薄型結晶Si太陽電池セルを開発

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三洋電機の研究開発本部は、開放電圧が0.743Vと高く、光電変換効率が22.8%と高い結晶型シリコン太陽電池セルを開発した。N型シリコン基板の厚みは98μmと従来の半分程度に薄い。省資源で高い効率のセルを狙ったもの。

開発された厚さ98μm、電圧0.743Vの太陽電池セル(右)
開発された厚さ98μm、電圧0.743Vの太陽電池セル(右)


シリコン太陽電池はセルの開放電圧が0.6V程度しかなく、実際にパネルに組み立てるためにはセルを直列に数百個接続しなければならない。0.6Vなら100個つないでも60Vしかない。300Vまで上げるなら500個を直列接続する必要がある。500個並べる場合、1個でも電流が流れにくい、すなわち影になると、影になったところの電流で決まってしまう。このため、実際の発電効率はぐっと落ちてしまう。太陽電池はここが泣き所である。直列するセルはできるだけ少ない方が、太陽電池システムとしての発電効率の落ちる確率は減る。今回の太陽電池だと300Vに必要なセルの数は404個ですむ。

これまで同社が開発してきたHIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer Solar cell)構造のセルでは変換効率は23%あったが、シリコンの厚みは200μm以上で、開放電圧は0.729Vと比較的高かった。この構造では、n型シリコンの上にi層(不純物密度の少ない半導体)、さらにp層のアモーファスシリコン層を設け、n型シリコンの下にi層、n層を設けている。p/i層、i/n層の厚さはそれぞれ10nm、20nm程度である。

アモーファスシリコンは結晶シリコンよりも光学的バンドギャップが広いため、開放電圧を上げるのに適している。ただし、結晶性が悪いため欠陥が多く、キャリヤのライフタイムは短い。このため電極に到達する前に再結合して電流に寄与しなくなる。一般に結晶よりもアモーファスの方が太陽電池の変換効率が低いのはこのためだ。HIT構造では、pin接合の空乏層で光から生まれた少数キャリヤ(正孔)は結晶の中を長く生きn側の電極に到達するが、電子はp層を素早く突き抜けて電極へ到達するため、変換効率が高いという特長を持つ。

今回、三洋電機は省資源と、太陽電池システムの視点から、薄くてかつ開放電圧の高いセルを開発した。効率はほぼキープした。今回は、HIT構造をさらにリファインしたもの。具体的には、シリコン基板を薄くすると光の吸収量が落ちる傾向があり、さらには表面において光で発生したキャリヤが再結合することで開放電圧が下がるという傾向があったことに対して、表面の光の閉じ込め効果を改善し、さらに表面の再結合を促進する欠陥を減らした。この二つによって薄さと高い電圧を実現した。

表面の閉じ込め効果は、まず凹凸(微細なピラミッド)形状を最適化して光がシリコン内を斜めに長く走るようにし、その上の透明電極の透明度を上げたことで実現した。透明電極は光の吸収を減らすために結晶粒を大きくし移動度を上げたと、同社アドバンストエナジー研究所ソーラーエナジー研究部の丸山英治部長は述べた。透明導電膜については材料がITOかどうかさえ、明らかにしない。


三洋電機研究開発本部アドバンストエナジー研究所ソーラーエナジー研究部の丸山英治部長
三洋電機研究開発本部アドバンストエナジー研究所
ソーラーエナジー研究部の丸山英治部長


三洋の開発したセル構造
三洋の開発したセル構造


表面の欠陥を減らすと、光学的バンドギャップは広がる。通常、アモーファスシリコンでは水素を導入することで結合しない手(ダングリングボンド)をH原子で埋め、欠陥を抑制する方法が使われているが、アモーファス表面ではダングリングボンドが残ってしまいがち。これが表面欠陥となる。欠陥が多ければバンドギャップが抑えられるピンニング現象が起きやすい。今回は、欠陥を減らすためプラズマCVDによってアモーファスシリコンを形成するときのダメージを減らすことでバンドギャップのピンニングを抑えることができた。CVD条件などの詳細は明らかにしない。

セルの主な特性は次の通り。開放電圧0.743V、短絡電流3.896A(電流密度38.8mA/cm2)、フィルファクタ(曲線因子)79.1%、セル変換効率22.8%、セル面積100.3cm2、などである。これらの測定値は産業技術総合研究所で測定したもの。

シリコンの厚みは98μmとはいえ、シリコンインゴットから切り出す時のカーブロスはやはり100~200μmくらいあるため、実際の厚みが100μm以下ではあるが、シリコンのロスもまだ大きい。今後はこのカーブロスをできるだけ減らす技術開発が望まれる。

今回の太陽電池セルの商品化時期はまだ決まっていない。しかし、三洋電機はHIT太陽電池生産能力を、2008年の340MWから2010年には600MW規模へと拡大するための投資を継続していくとしている。

(2009/09/24)

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