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ギガビット伝送の時代が間近に迫ってきた

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「高精細なHDTVを見ると誰でもアナログテレビに戻れなくなる。同じことがインターネットのYouTubeでもいえる。みんなはもっと良い画質で見たいはずだ。従来の光ファイバネットワーク製品のプロトコルを使ったGbpsオーダーの電子機器が民生分野にも必ず降りてくる」。カナダのファブレス半導体メーカーGennum社社長兼CEOのFranz Fink氏はこう言い切る。Globalpress主催のeSummit08ではギガビット伝送のトレンドが見えた。

Gennum社CEOのF. Fink氏

Gennum社CEOのF. Fink氏


従来、ギガビット伝送は通信業者のバックボーンや主要ネットワークにしか使われないだろうと言われ、実際的にも光多重技術をはじめとしてギガビット伝送は通信・ネットワークインフラ向けの技術として見られていた。しかし、ビデオ映像を何人もの人が同時に見るような時代になってくると、ギガビット伝送はもっと身近になってくる。Gennum社のFink社長が主張することは、企業内あるいはデータベースを専門に扱うデータセンターなどの技術が民生分野にも広がってくるということを意味する。

1月のInternational CES(国際家電見本市)において、Gennum社は100mという長さの距離を銅線で10Gbpsのビデオ伝送規格HDMI1.3とDisplayPort規格を満たすActiveConnect技術を使った試作品を展示した(http://www.semiconportal.com/archive/editorial/technology/100m10gbpsactiv.html)。民生向けのミクストシグナル製品と光ファイバ製品を手掛ける同社は、2月に光ファイバ関連新製品を発売した。ROSA(Receive Optical Sub Assembly)とレーザードライバ、ビデオ光モジュールの3製品である。こういった光トランシーバ部品で10GbpsのEthernet、8.5GbpsのFibre Channelをすでに持っているが、今後は次世代およびそれ以降の製品として17Gbps、25Gbps、40Gbpsへと対応していくという。

同社はIPコアもビジネスとしている。まだ売り上げ比率は低いが、毎年25%成長しているという。10Gbpsのマルチスタンダードの物理層IPコアやDisplayPort向けのIPコアなどがある。同社のキーファウンドリは富士通である。


PCI Expressの拡がり
ギガビット伝送はもちろん、一気に民生までまだ広がってくるわけではなく、通信のバックボーンインフラ分野から徐々にネットワーク分野や小さな単位の無線インフラなどの分野にも広がりつつある。テレビ会議装置やWiMAX/LTEなどの無線インフラストラクチャ、ボードコンピュータといった用途でGbpsクラスのRapidIO規格を推進してきたカナダのTundra Semiconductor社は、シリアルRapidIOのチップやIPコアを今年から来年にかけて製品を出してくる計画である。

RapidIOは、プロセッサを通さずにさまざまな入力データをさまざまな出力に送るというスイッチの規格である。高速にデータを切り替えられるためにレイテンシが少なく、CPUに負荷をかけることなくリアルタイム伝送ができる。無線インフラやビデオ向けなどの組み込み系のボードにTexas Instruments社のDSPやFreescale Semiconductor社のPowerQUICCマイクロプロセッサなどと共にTundra社のスイッチLSIを搭載する。

しかし、インターフェースはこれだけではない。Tundra社が注力しているのはPCI ExpressとPCIあるいはPCI-Xとを結ぶPCI Express Bridgeだ。PCI Expressインターフェースは、高機能パソコンやサーバー内、シングルボードコンピュータ、ルーターやスイッチなどに使われる。特にパソコン周りではPCIが標準規格であるのに対し、さらに高速の規格としてのPCI Expressとを結ぶためのブリッジチップは欠かせない。PCI Expressの4レーンをPCI-Xと結び133MHzで動作させるTsi384や、PCI Expressの1レーンをPCIとを結び66MHzで動作させるTsi381/382などの製品がある。スーパーコンピュータに使われる規格、HyperTransportも手掛けるという。

PCI Expressを専門に手掛ける米PLX Technology社は、5GbpsとこれまでのPCI Express の2倍の速さの規格のGen2(第2世代)スイッチ製品を4月14日に発売した。PCIはパソコンを中心に発展してきたボード内バスの規格である。プロセッサやメモリーが高速になってきたため、PCI Expressという規格が生まれた。ただ、PCIはパラレルバスだが、PCI Expressはシリアルバスなので、高速を前提としている。第1世代のPCI Expressは2.5Gbpsである。

PCI Expressのシリアルバスの最少単位をレーンと呼び、1ポートに複数のレーンを束ねる構成が多い。たとえば昨年12月に発売された第2世代のGen2製品群、PEX8612は、3ポート/12レーン構成で、1ポート当たり4レーン束ねている。速度は2倍の5Gbpsと速い。同様にPEX8648は、12ポート、48レーンまで収容できる。今回Gen2の新製品、PEX8608、PEX8614、PEX8618はそれぞれ、8ポート/8レーン、12ポート/12レーン、16ポート/16レーンという構成である。最初のGen2製品と比べてポート数を増やしているためさまざまなデバイスとつなぐことができる。加えて、バーチャルチャンネルを2本持ち、拡がり拡散方式のクロックでEMIノイズを減らしている。

10GBASE-T Ethernetも登場
これらの高速シリアルインターフェースに注力しているメーカーは他にもある。PCI ExpressスイッチやシリアルRapidIOを手掛けている、米IDT社は最近、最大10.8Gbpsをサポートするビデオ伝送のDisplayPortチップを発表した。これを使えばDisplayPortレシーバ/イコライザでビデオデータを受け、LVDSなどに変換してディスプレイに映像を表示する。

こういった高速インターフェース規格とは少し違うが、サーバーやストレージなどとつないでネットワークシステムを構成するような応用でも高速化が進んでいる。最も一般的なイーサーネットは10Gbpsの時代にやってきた。米Solarflare Communications社は10Gビット/秒イーサーネット、すなわち10GBASE-T規格の物理層チップと10GbEコントローラチップを発表した。物理層チップ10Xpress SFT9001 PHYは100m伝送を可能にし、しかも消費電力は6W以下と小さい。コントローラチップSFC4000Eは10Gbps伝送時で2.2W以下。65nmプロセスで設計し、TSMCで製造している。

主な用途はデータセンター向けのシステム。高価な光ファイバシステムを銅線イーサーネットの置き換えを狙っている。こういったギガビットイーサーネットは、まずデータセンターでの応用だが、ここではバーチャルマシンによる仮想化技術を想定している。仮想化技術は1台のコンピュータで、いろいろなOS、ミドルウエアを搭載し、まるで複数台のコンピュータを動作させているかのようにみせる技術である。


1台のサーバーで複数のコンピュータを動かす仮想化技術

1台のサーバーで複数のコンピュータを動かす仮想化技術


この用途は最近のサーバーやスーパーコンピュータの応用にも表れてきており、仮想化技術をシリコンで実現するための変換チップTL1550を3Leaf Systems社が設計している。AMDの64ビットOpteronプロセッサを複数個使い、DDR2でメモリーとやり取りしたり、ギガビットイーサーネットでデータを出力する。Opteronプロセッサ同士、あるいはOpteronとTL1550間はHyperTransportバスでやり取りする。さらにサウスブリッジチップも搭載した、バーチャルI/OサーバーV-8000を3Leaf社はこのほど製品化している。

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