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Mentor Graphics、クルマ用パワー半導体の熱寿命試験装置を発売

Mentor Graphicsはパワー半導体の熱的信頼性を評価するテスターMicReD Power Tester 600A (図1) を発表した。従来のテスターは電気的特性を評価し、熱の特性はある時点での静的な特性しか測定できない。今回Mentorのテスターは熱による経時変化を評価する信頼性試験のテスターともいえる。

図1 パワー半導体の熱的信頼性を評価するテスター 出典:Mentor Graphics

図1 パワー半導体の熱的信頼性を評価するテスター 出典:Mentor Graphics


パワー半導体は、大電流を流すため発熱する。その熱管理は極めて重要である。それも、クルマに使う場合、オーバーヒート(過熱)すればリコールの対象になる。FordのハイブリッドカーやTeslaのModel Sなどで過熱によるリコールが発生したことがある。電気自動車やハイブリッド車などモータを駆動するためのパワー半導体としては、シリコンのIGBT(絶縁ゲートトランジスタ)が主力に使われるようになっている。IGBTのチップからパッケージ、放熱フィン、放熱方法に至る全ての熱を、定格の温度範囲に収める必要がある。

パワー半導体における熱の信頼性問題は、電流を流して熱せられ、電流を止めると常温に戻る。いわゆるオンとオフの繰り返しによって、過熱・冷却を繰り返す。この熱ストレス(応力)によって、半導体チップ上で、ボンディングワイヤーと電極との間が剥がれたり、応力のかかっているワイヤーにクラックが入ったりすることが多い。特に、電極とボンディングワイヤーの金属同士が異なれば、熱膨張係数の違いからはがれやすく劣化が進みやすい。クルマは寒冷地ではマイナス40℃になることもある。真夏のボンネットの下は70〜80℃にもなる。温度差が激しければ激しいほど劣化が進む。

パワー半導体の電力オンオフ試験では熱がチップから接着剤(ハンダなど)を通り銅基板に抜けるというシミュレーションモデルを使う。この熱流を熱容量と熱抵抗の分布定数回路で表現する(図2)。しかし、これまでの熱をシミュレーションするツールでは、誤差が20%程度もあり、信頼性寿命の評価でも大きくばらついた。


図2 熱シミュレーションでは熱容量と熱抵抗の分布定数回路で表現する 材料によって熱伝導が違う 出典:Mentor Graphics

図2 熱シミュレーションでは熱容量と熱抵抗の分布定数回路で表現する 材料によって熱伝導が違う 出典:Mentor Graphics


シリコンチップから熱が下の方へ流れる場合には、図2の下の図で表されるように、まずはシリコンの熱容量C0と熱抵抗R0を通り、しばらくすると熱はダイボンディング材料(熱容量C1と熱抵抗R1)に達する。さらにしばらくするとCu板に到達するとその熱容量C2が立ち上がり、熱抵抗R2が続くことになる。こういった階段状の熱特性から材料の特性を表すため、どこが故障原因となりうるかがわかる。

MicReD Power Tester 600Aでは、Mentorがこれまで開発・更新してきた3D熱解析シミュレータFloTHERM 11.1(最新版)を使って、部材特性の自動キャリブレーションができるようになっている。しかも計算時間を短縮するため、FloTHERMには1次元の熱解析モデルも入っている。自動キャリブレーションによってシミュレーション誤差は最大0.5%まで減らすことができた(図3)。


図3 シミュレーション特性を自動キャリブレーションできるので精度が上がる 出典:Mentor Graphics

図3 シミュレーション特性を自動キャリブレーションできるので精度が上がる 出典:Mentor Graphics


このMicRed Power Tester 600Aは、試験するデバイスの耐圧は48Vと低いが最大電流600Aまで流せるため、IGBTの熱信頼性を評価するのに向く。トランジスタをオンしている状態では電圧は低いため、この耐圧で十分といえる。最大16個のIGBTを直列に接続、熱特性を同時に測定できる。このテスター自身も拡張性があり、最大8台接続でき、最大128個のIGBTを同時に測定できる。

(2016/05/24)

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