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OLED/ウェアラブル市場に向けたフレキ基板のバリア層形成装置

Appleが将来のiPhoneで採用を表明した有機EL(OLED)ディスプレイ量産への期待は大きく、第26回ファインテックジャパンでは、OLED商用化のために必須のバリア膜形成装置が相次いでパネル展示された。プラスチック基板はフレキシブルエレクトロニクスにも使うため、出展社はビジネスの広がりに期待している。

図1 フレキシブル基板用のフィルムにバリア層を形成した神戸製鋼所のロール

図1 フレキシブル基板用のフィルムにバリア層を形成した神戸製鋼所のロール


有機ELディスプレイやフレキシブルエレクトロニクスの基板となる有機フィルムは、元々伸び縮み曲げなどに強い反面、水分を通しやすいという弱点がある。このため、有機材料よりももっと密度の高い材料をバリアに用いてカバーしようとしてきた。この材料としてSiO2やSiNなどが候補として上っていた。シリコン半導体でおなじみのSiO2やSiNは、カバー膜に十分適しているが、反面、有機フィルムと比べると固い。このため曲げ半径にはある程度限度がある。ただ、最近はガラスを薄く加工すると、ロールツーロール(R2R)方式で生産できるほど曲げられるガラスが登場している。

図1は、神戸製鋼所がある顧客の量産ラインに向け最近納入した、プラズマCVD搭載のR2R装置を使って、SiO2バリア層を形成したフィルムである。同社は幅1300mmと1600mmのフィルムに対応したR2R方式のバリア層形成用のロールコータ装置を製造している。プラズマCVD装置で堆積させたSiO2の厚さデータとして500µmをフィルムの幅の端から端まで均一に堆積できることをデータで示している(図2)。CVD装置のチャンバは数Paの真空度で堆積を行い、R2R装置の途中に真空チャンバを入れている。また、同社はスパッタ用のチャンバ装置もあり、こちらは透明電極ITOを形成するのに使い、その真空度はCVDよりも1桁高い。


図2 幅1300mmのフィルムに形成した厚さ500µmのバリア層は均一

図2 幅1300mmのフィルムに形成した厚さ500µmのバリア層は均一


今回の、東レエンジニアリングの産機事業部もR2Rの機械そのものではないが、R2Rのバリア膜用のCVD成膜装置をパネル展示した。ただし、バリア膜の形成には厚い均一な膜ではなく、薄い膜を積層した構成の成膜を狙っている。バリア膜とバッファ膜を交互に数層積み上げることで、曲げに強くすることが狙いだ。SiO2バリア層はCVD、バッファ層をスパッタ装置で堆積する。最大6層まで堆積するようになっている。成膜コストは1平方メートル当たり400円と見積もっている。曲率半径20mmまで曲げられるとしている。東レエンジニアリングは、東レの関連会社で産業機械を扱っている。こちらもスパッタ装置を持っている。

神鋼、東レ共、このR2Rバリア層成膜装置は、一部のユーザーに納入されているとしている。有機ELだけではなく、ウェアラブル端末などに向けたフレキシブルエレクトロニクスが立ち上がる日は近づいた。

(2016/04/12)

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