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多機能化、複合化進む測定器

測定器の世界でも半導体ICと同様、多機能化が進んでいる。オシロスコープとスペクトラムアナライザを搭載した測定器はこれまでもあるが、Tektronixはこれらに加えロジックアナライザと任意波形のファンクションジェネレータ、プロトコルアナライザ、DVM(デジタル電圧計)の機能を搭載した測定器MDO3000シリーズを発売した。Agilent Technologiesはジッター印加、ディエンファシス、妨害信号源、クロック逓倍器、CDR、イコライザなどを搭載したビット誤り率測定器M8000シリーズを発売した。

図1 1台に六つの機能を搭載するTektronixの測定器 

図1 1台に六つの機能を搭載するTektronixの測定器


Tektronixは、六つの機能を搭載したこの測定器(図1)を、ミックスド・ドメイン・オシロスコープと呼ぶ。開発した理由は二つの問題を解決するため。一つは、顧客が電子回路の出来具合をチェックするのにオシロやスペアナだけではなく、さまざまな測定器を使おうとすると実験室が測定器でいっぱいになってしまうこと。もう一つは、測定器ごとに使う方が違うためユーザーはそれぞれを習得しなければならないことだ。同社は、この新型オシロを世界標準の測定器にしたいともくろむ。

このMDO3000は、多機能をオールインワンで搭載しているからと言って、スペックが劣る訳ではない。周波数帯域は100MHz〜1GHz、最高サンプリングレートは5Gサンプル/秒、波形を取り込んで更新する速度は28万波形/秒と速い。また、発生頻度の多い波形を赤、少ない波形を青で表現するが、サージや過渡的なパルスなどの頻度の極めて少ない波形に対しても黄色で目立たせるような色使いをしている。負荷容量が3.9pFしかないプローブを使うことで、オーバーシュートやアンダーシュートの少ない波形を観察できる。

また、スペアナ機能では、周波数帯域を標準で9kHz〜100MHzあるいは9kHz〜200MHz、9kHz〜350MHz、9kHz〜500MHz、9kHz~1GHzの5種類用意している。さらにオプションで周波数帯域を3GHzまで広げることができるという。時間と共にスペクトラムの変化を可視化することもできる。帯域を広げることで、一度にスペクトラムを掃引するため波形を完全に補足できる。従来の10MHz帯域だと何回かに分けて取り込むため、時間的に取りこぼす可能性があった。今回のオプションなら2.4GHzのWi-FiやBluetoothなどの波形の様子もわかる。

ロジアナでは、16チャンネルのロジック波形を500Mサンプル/秒のレートで観察でき、アナログチャンネルとの時間相関も取れる。また、シリアルバスのトリガやデコード、サーチにより物理層のパケットデータとしても、またイベントテーブルとしても見ることができる。標準的なI2CやSPI、RS-232/422/485/UART、CAN、LIN、FlexRay、USB2.0などの規格にも対応している。

RF入力は1チャンネルだが、アナログ入力は最大4チャンネルまで用意している。この製品シリーズでは、オシロとスペアナは標準装備だが、ロジアナや任意波形ファンクションジェネレータはオプションで、それぞれのボードを取り付けてもらう(図2)。DVMと周波数カウンタはウェブ登録すると無料で追加できる。最もローエンドの製品は周波数帯域が最大100MHzであり、その価格は39万6000円。


図2 Tektronixが提供する各ボード

図2 Tektronixが提供する各ボード


Agilentは高周波に強い製品を持つ企業であるが、このほど発売した総合的なビット誤り率測定器(BERT:bit error rate)(図3)は、高速シリアルインターフェースのチェックに使う。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末ではMIPIインターフェース、テレビなどの民生機器ではHDMIやDisplayPortなどのインターフェース、コンピュータ機器ではPCI ExpressやUSB3.1、SATAなどのインターフェース、データセンターやクラウド機器では、Fibre ChannelやEthernetなどのインターフェースを使うが、いずれの分野でも高速化へと動いている。モバイルでも3Gbps、6/12Gbpsなど、PCIeでは5Gbpsから8/16Gbpsへ、Ethernetでは10Gbpsから100Gbpsへと向かっている。


図3 AgilentのM8000シリーズBERT

図3 AgilentのM8000シリーズBERT


こういった市場に対応するため、マルチレーンを採用したり、データレートを上げたりする。M8000シリーズでは最大32Gbpsまで対応可能で、最大4チャンネルのマルチレーン化にも対応する。


図4 信号にノイズや歪を与えてどこまで耐えられるかを調べるビット誤り率測定器 出典:Agilent Technologies

図4 信号にノイズや歪を与えてどこまで耐えられるかを調べるビット誤り率測定器 出典:Agilent Technologies


信号を送信する場合、パターンジェネレータでパルス列を送り出し、同軸ケーブルなどの伝送路を伝わり、被測定物(DUT: device under test)の受信回路に届く。その信号は送信回路を経て、BERTへ戻される。ここでエラーを検出し、そのエラー率を測定する。パルス列を送り出すパターンジェネレータでは、わざと波形をひずませるためのディエンファシス回路、位相ノイズの元になるジッターなどを重畳する。

M8000シリーズのBERTは、測定したいDUTがどこまで歪んだ波形に対応できるか、あるいはマルチレーンにおけるクロストークやクロックスキューなどを評価する。BERTの中には、8タップまでのディエンファシス機能、ジッターのついたクロック発生器、ノイズやクロストークをエミュレーションする干渉は印加機能(Diff. mode interfaceとCom. Mode interface)、CDR(Clock data recovery)などの回路を内蔵しているため、別の測定器を揃える必要はない。

BERTの信号を受ける側では、CTLE(continues time linear equalizer)によるアイパターンの補正を行い、CDRでクロックとデータを分離し、BERをカウントする。

(2014/03/06)

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