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大学発ベンチャーのイニシアム、分子間力や微量な質量の小型測定器を開発

アルバックの100%子会社であるイニシアムは、たんぱく質や微粒子などの質量や分子間相互作用などをリアルタイムに測定できる小型の装置AFFINIX Q8を発売した。ノートパソコンとイーサーネットケーブルでつなぎ、測定結果を表示する。

図1 微量の物質の分子間力や質量を測定する小型器 出典:アルバック

図1 微量の物質の分子間力や質量を測定する小型器 出典:アルバック


この装置は、無機物・有機物を問わず、微量の物質を同定する。水晶振動子をセンサとして使う。振動子に金蒸着させたセンサに物質が吸着すると、水晶振動子の発振周波数が変わることを利用する。吸着前と吸着後の周波数の違いを検出する。

たんぱく質同士の分子間相互作用の力も測定できる。この場合は、一つのたんぱく質を吸着させた後に周波数を測り、別のたんぱく質を吸着させることで周波数が変化するため、それらの差から検出する。たんぱく質の質量がわかるが、この装置はセンサを8個搭載しているため、8チャンネルごとに濃度をパラメータとして変えることで分子量や力を計算する。1チャンネルだけの装置だと、ある濃度の質量しかわからない。このため通常は、数チャンネル構成にして力を算出する。

サンプルを吸着させるセンサは、使い捨てることになる。測定前に別のサンプルが残っていると、精度が落ちるためだ。


図2 8チャンネルのセンサ(左)と、水晶振動子にメタルを形成したセンサ部分(右) 出典:アルバック

図2 8チャンネルのセンサ(左)と、水晶振動子にメタルを形成したセンサ部分(右) 出典:アルバック


これまで8チャンネルの装置は大きくかさばったが、この新製品は小さいながらも感度の高い水晶振動子を利用しているため、小さな装置に収めることができた。測定に必要なサンプルの量は、1チャンネル当り80〜120μl(マイクロリットル)だという。2008年に発売したAFFINIXQNは1チャンネルしか測定できない装置で、必要なサンプルの量は8mlもあった。サンプルに使う量を減らせば、高価なサンプルを測定することが多いバイオ関連の研究のランニングコストを減らすことができる。

基本周波数27MHzの水晶振動子を使い、10Hzの変化を測定するのだという。分解能として1Hz以下はノイズレベルになるとする。ちなみに1Hzは30pg(ピコグラム)と極めて微量だ。測定データをパソコンに取り込み、データ処理したり操作したりするためのソフトウエアも標準装備され、標準モデルの価格は700万円だという。

イニシアムは東京工業大学の岡畑恵雄教授の研究を事業化する目的で1999年に設立された。アルバックとの合意の下で事業を引き継ぐと共に拡大していけることから2005年にアルバックの100%子会社になった。

(2012/10/12)

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