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ユーザーの使いやすさを求めて企業・製品の統合が相次ぐEDAの世界

EDAの動向が統合化に向かっている。LSI検証ツールを扱っている米Calypto社は、LSIを馴染みやすいC言語で設計するツールであるCatapult C Synthesisを米Mentor Graphics社から買収、C言語設計と検証工程をつなげるようにした。Mentor GraphicsはリアルタイムOSに消費電力削減機能を搭載しながらもコード効率を高めた新OSのNucleusを発表した。米National Instrumentsに買収されたRFシミュレータ米AWRはLabVIEWとのリンクをスムースに進めている。いずれもユーザーにとって使いやすくする。

図1 CalyptoがCatapultを買収したことでC言語から低消費電力RTLまでの時間が短縮できた 出典:Calypto

図1 CalyptoがCatapultを買収したことでC言語から低消費電力RTLまでの時間が短縮できた 出典:Calypto


CalyptoがCatapultを買収したのは2011年4月26日だったが、完全な統合のメリットについて同社のCEOであるDoug Aitelli氏が最近語った。最大のメリットはC言語設計からRTLを出力するだけではなく、消費電力の最適化も含めたRTLを出力できることである(図1)。この結果、消費電力、タイミング、チップ面積というQoR(quality of result;設計の品質)を改善できる。この統合プロセスにフォーマルベリフィケーションも統合しているため、設計から検証までの時間が短くなる。

図1のようなシステム設計から最適な消費電力のRTL出力まで統合したことにより、ハードウエアとソフトウエアをうまく分割することができ、RTL検証の重複作業を減らすことができる。ハードとソフトの切り分けができるとすぐにC言語設計ESLを実行する。図1にあるようにCalyptoがもともと持っていた検証ツールSLECと消費電力の最適化ツールのPowerProに加え、ESLツールのCatapultを統合できたことで、ESLのリファレンスモデルから低消費電力のRTL出力まで完成した。SLECはC言語からRTL変換の等価性をチェックする。

この統合ツールを使った結果、顧客にとっては低消費電力設計の時間が短縮すると同時に、消費電力が11〜61%の範囲で削減できる。ちなみに設計したチップはグラフィックス、マルチメディア、ワイヤレス、プロセッサ、ネットワーク制御などである。


MentorのRTOSは電力管理機能も提供
MentorのRTOSは、三つの特長を持つ。まず、消費電力を管理するパワーマネジメント機能を搭載しており、バッテリ動作をメインにする携帯機器に適している。二つ目として、携帯機器に必須のコネクティビティ機能も持っており、IPv6対応のネットワーキングスタックやセキュリティプロトコル、さらにワイヤレス通信機能(Wi-FiやBluetooth、ZigBeeなど)も組み込まれている。三番目の特長は携帯機器にふさわしいようなコード効率が高いことだ。RTOSは、コンピュータ用のOSに比べてコードが半分程度しかないが、Nucleusはさらにその6~7割しかない。このためOSに要するメモリが少なくて済み、ワークメモリ領域を広げることができる。


図2 5段階のパワーレベルを設定 出典:Mentor Graphics

図2 5段階のパワーレベルを設定 出典:Mentor Graphics


こういった携帯機器向けの特長は、いろいろなCPUコアにも対応し、ARM、MIPS、PowerPC、SuperH等をサポートする。加えて、コード効率の高さ(プログラム行数が少ない)からマイコンベースの設計にも最適であり、Texas InstrumentsはARMのCortex-Mコアを用いたマイコンSellarisにこのRTOSを使っている。

パワーマネジメント機能では例えば、LCDとUSBポートの電源電圧を管理する場合、1) LCDがオン、USBもオン、400MHz動作、2) LCD調光、USBオン、3) LCDオフ、USBオン、4) LCDオフ、USBオフ、5) 共にオフで133MHz動作、という5段階のパワーを管理できる(図2)。


RFシミュレータとLabVIEWを統合
AWRはこれまで使いやすいRFシミュレータメーカーとしてユーザーインターフェースにも力を入れてきた。AWRのマーケティング担当バイスプレジデントのSherry Hess氏によると、これまでフトウエア形式は顧客に合わせてカスタマイズしてきたが、今はLabVIEWとの接続に力を注いでおり、来年には全てのソフトをLabVIEWとつなげるだろうと期待している。


図3 AWRの得意なRFとNIのLabVIEW製品との一体化の検証 出典:AWR

図3 AWRの得意なRFとNIのLabVIEW製品との一体化の検証 出典:AWR


AWRはRF信号のモデル化を得意として、シミュレータを作り込み、RF設計に生かしてきた。RFから受信信号を周波数変換してベースバンドで復調する以降の回路を解析して見せることはNIのLabVIEWが得意である。AWRのRFシミュレータとNIのLabVIEW製品との接続の例(図3)をシミュレーションと実験値との比較によって示している。

LTEのベースバンドでのデジタル変調とその後のパワーアンプを使ってRF送信を行い、受信してからベースバンドでデジタル復調する様子をLabVIEWで見せた。パワーアンプは実験で作ると同時に、Infineonの協力を得てそのシミュレーションモデルを作った。図4のパワーアンプ回路でLTEの変調信号を増幅・送信する。送信した信号を図4の右の回路ブロック(LabVIEW)で受け、復調したQAMコードが右側の青い部分とオレンジ部分である。


図4 AWRのシミュレータとNIとの接続 出典:AWR

図4 AWRのシミュレータとNIとの接続 出典:AWR


実験(パワーアンプを通ったもの)の結果は青い部分のデータ、シミュレーション(図4の下のシミュレーションによる回路ブロック)によるQAMコードは右側のオレンジ色の部分である。シミュレーション結果と実験値とを比較すると、デジタル変調のQAMコードは実測値とシミュレータ値がよく一致していることがわかる。

(2011/12/19)

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