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イマジネーション、2〜3年後のスマートフォンの姿を描くIPを続々発表

「組み込みシステムを差別化できる技術は、CPUではなくグラフィックスになる」。このように言い切るのは、英国のIPベンダー、イマジネーションテクノロジーズの社長兼CEOであるホセイン・ヤサイ氏。システムを差別化する技術はCPUやOSではなく、周辺回路でありソフトウエアであることは間違いないが、ここまで言い切るには将来の機器のイメージを持っているからだ。

英イマジネーションテクノロジーズのホセイン・ヤサイCEO兼社長

英イマジネーションテクノロジーズのホセイン・ヤサイCEO兼社長


イマジネーション社は、携帯端末に搭載できるほど消費電力の低いグラフィックスIP(参考資料1)を開発してきたが、消費電力を維持したままIPの性能を上げていくことに注力し続けている。このため少ない消費電力できれいな画像を見せるグラフィックス回路IPは、どこにも負けない。mW当たりの性能とmm2当たりの面積で優れているという訳だ。

昨年リリースしたグラフィックスIPのPOWERVR SGX543MP2をルネサスエレクトロニクスがアプリケーションプロセッサに搭載し、このほどシリコンが動作し、描画速度が現在最高性能のスマートフォンに使われているグラフィックス回路の5倍の性能を示した。動作周波数200MHzにおいて従来は1.6GFLOPSの演算処理性能が12GFLOPSになったという。製品名のMPはマルチプロセッサコアを意味している。IPコアはシリコンに集積されて実際の性能を出すまでは、広い顧客に認めてもらえない。ルネサスのSoCに集積して性能を出したということは、他の顧客に対して強くアピールする説得材料を持つことになる。

イマジネーションは、さらに高性能のグラフィックスIPコア、POWERVR SGX554MPマルチコアも今回発表した。このコアは1コア当たり8段のパイプラインを持ち、2〜16コア、すなわち16段〜128段という並列処理が可能なアーキテクチャをもっている。しかもDirectX9をサポートするため、ゲームの開発が容易になる。開発したIPが意図する性能を発揮するかどうかの検証には260Mゲートという超大規模なハードウエアアクセラレータで行っているという。

新しいグラフィックスコアはパイプライン方式+マルチコアの並列処理技術を使っているが、イマジネーションはマルチスレッドプロセッサIPであるMETAプロセッサ(参考資料2)も持っている。同社は、アーム社やミップス社と競合するプロセッサだけでビジネスを行う気はない。むしろMETAプロセッサIPコアをグラフィックス以外の高速処理が必要なビデオ処理やオーディオストリーミング処理などの「周辺回路」に使うことで差別化回路を設計するためのプロセッサIPとして位置付けている。

今回、スマートフォンなどの携帯端末の基本プラットフォームとなるグーグルのアンドロイドをMETAのリナックス上で走るように移植した。META向けのアンドロイドなので、アンドロイドのバイナリのアプリケーションを走らせることができる。

METAにはプロセッサ命令とDSP命令の両方を処理する機能を持ち、1コアあたり4つのスレッドを持つ。さらに高性能が要求される場合には、マルチコアで使うことで処理性能を上げていく。もともとMETAはPOWERVRのビデオデコーダ、エンコーダ機能を処理するプロセッサとして、POWERVR VXDシリーズの中にも入っており、画像・映像処理機能や、デジタルオーディオのストリーミング処理機能、コントローラなどのソリューションとして市場へ出していく。

同社は、UCCP320という名の汎用のデジタル放送受信回路のIPも示した。これは携帯電話のデジタルテレビだけではなく、地デジ、デジタルラジオの世界中の規格をほぼすべてカバーしている。受信回路に加え、Wi-Fi回路も集積しているため、世界中のインターネットラジオ、インターネットテレビを見ることができる。2〜3年後には世界中のインターネットテレビ・ラジオを見ることのできるスマートフォンが出荷されているのに違いない。

参考資料
1. Atom時代の先をすでににらんだImaginationのグラフィックスIPコア (2008/5/21)
2. マルチコアよりマルチスレッドで性能を上げながらシリコン面積を削減 (2007/11/08)

(2010/12/09)

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