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メンター、Androidを携帯から組み込み機器へ展開し、ソフト開発を促進

「Androidの登場でアプリケーションソフト開発が楽になるはずだ」。こう見るのは米メンター・グラフィックス(Mentor Graphics)社Embedded Software Divisionのワールドワイドディレクタ、Daniel McGillivray氏。パソコンがMS-DOSからWindowsへ変わった時のようにLinux上にAndroidが載った今、Androidは携帯電話やスマートフォンだけではなく組み込み機器に載せるソフト開発の主役プラットフォームになるとみている。

We are Ready for the Next Wave of Innovation


Androidは検索サービスの最大手Googleが提案した、携帯電話向けのLinuxベースでミドルウェアも含むプラットフォームである。それをメンターは携帯電話用途だけにとどまらず、組み込みシステム全体に適用しようとする。このために携帯電話に最適化されたAndroidを、例えばもっと大きなスクリーンのデバイスにも使えるように組み込みシステムに最適化する。Androidに対する市場の需要が大きいことがわかったためだとしている。

EDA(electronic design automation)ツールベンダーのビッグスリーの一角、メンターがEDAだけではなく、組み込みソフト開発にも力を入れるのは、Androidをベースにした組み込みシステムだと、アプリケーションソフト開発が容易になり、強い需要に対応できるためだという。

ソフト開発を楽にすることはSoCの設計コストの低減につながる。「SoCに搭載する組み込みソフトは、ソフトウエアスタックも含み、年率2倍の勢いで増えている」(同氏)。その市場はEDA業界の成長率よりも高く、平均年率18%で成長しているという。SoCに搭載するソフトウエアの開発者数は今や、ハードウエア開発者の2倍という人数になっている。SoC設計コストのうちソフトウエアコストがハードウエアコストを2007年の時点ですでに超えている。このハードウエアコストにはEDAツールコストも含み、ソフトウエアコストにはソフトウエア設計ツールコストも含んでいる。2012年にはSoCの設計コストは1億ドルを超えるとITRSロードマップでは予測している。

メンターは、組み込み系のOS(operating system)として独自仕様のリアルタイムOSのNucleusを持っている。にもかかわらず、なぜLinuxが必要か。その答えが、マルチOSでありマルチコアである。すなわちシングルチップのSoC上にマルチコアを置き、CPUコアに各OSを割り当て、シングルチップの仮想化技術を作りたいという市場の要求があるからだとメンターは答えている。このような複雑な機器の開発にはシングルチップ、マルチOS、マルチコア、低消費電力チップを最小のリスクとコストで作らなければならない。Androidならソフト開発が楽になると最初に述べた背景はここにある。


Embedded Services


米テキサスインスツルメンツ社のOMAP35x製品ラインマネジャーのGerard Andrew氏は具体的に、「メンター・グラフィックスは、AndroidとLinuxを使ってOMAP35xプラットフォームを含む幅広いTIソリューション上で開発されているお客様にさらなる価値を提供してくれるでしょう」と語っている。

メンターはAndroidプラットフォームを手に入れるため、シリコンバレーでLinuxベースのプラットフォーム制作者であるエンベッデッドアレイ(Embedded Alley)社を買収した。Androidプラットフォームの大きなメリットは、3次元のタッチユーザーインターフェース、インターネット接続性の良さ、セキュリティの高さ、低消費電力、情報アクセスの素早さ、などだ。この特長を生かし、自動車に応用すれば例えばテレマティックスやカーナビのパネル設計に、家電なら例えば電子レンジの表示ディスプレイパネルに、使える。

Androidはいろいろなプロセッサコア上で動作するような開発をメンターは進めている。MIPS32プロセッサコアにも適用したのをはじめ、ARMコアやSHコア、PowerPCアーキテクチャへの移植も予定されている。

メンターはエンベッデッドアレイ社を手に入れることでマルチコア+マルチOSというシングルチップの仮想マシンを容易に設計できるようになる。これによって豊富なアプリケーションを開発でき、性能を改善でき、消費電力を低減でき、最終的にシステムコストを下げることができる。ユーザーインターフェースを3次元的に表現して簡単に楽しくし、ARMやイマジネーションテクノロジーズのグラフィックスコアMaliやPowerVR SGXなどをシングルチップに搭載すれば、これまで以上にビジュアルなグラフィックスを表示させることができる。ソフト開発にはコーディングを書かずにドラグアンドドロップのようにできるとしている。

(2009/09/15)

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